37.
今朝方の残りのクッキーを入れたバスケットごと抱えて、頬張っていた。
「どうしてこの部屋に⋯⋯?」
膝を着いて、訊ねる。
それよりもクッキーを食べていることに突っ込んだ方がいいのだろうか。とはいえども、これは推察であるが、姫宮が食事した後に彼女らも食事をするのであろうから、こんなところで隠れて食べなくともと思ったが、先ほどの会話から、小口はつまみ食いをしたかったのかもしれない。
「サボりですよ、サボり」
また一枚口に入れながら、サラッと言った。
「この部屋ならば、自分の部屋よりも見つかる可能性が低い!と思っただけ」
悪びれることもなく彼女はそう言った。
小口は姫宮とさほど変わらない年齢であるらしいが、非常にマイペースで、仕事しているように見せかけて、してないことが多いようだ。それでも、しているように見せるのだから、ある種の天才なのかもしれない。
それ以前に、何故このような仕事をしているのかが疑問であるが。
「それよりも、チョコチップクッキー食べます?」
「私、は──んぐ」
有無を言わさず、口に入れられた。
そのまま咀嚼し、喉に通す。
「内緒ですよ?」
悪戯な笑みを見せた時、これは仕事をサボっている上に、隠れて食べていたことを言わずにいてくれという、いわゆる共犯者になってくれということだろう。
断る理由がなく、何よりも可愛らしい内緒と思い、頷いて了承した。
「ところで、姫宮さまー。悲しいことでもあったんです?」
なんてことのないように言う小口に、ついさっき泣いていたことを思い出してしまう。
「⋯⋯いえ、悲しいことではないのです。ただ、皆さん、御月堂様を困らせてしまって⋯⋯」
「んっ? 御月堂さまが来ているんですか」
「? ええ、はい」
姫宮が朝食を終えた直後は小口もダイニングにいたはずと、記憶の糸を手繰り寄せる。
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