えと…
もう…ここまできたら聞いてもいいよね?
病名
とりあえず、行くあてが見つかっていないので、公園のベンチにオレたちは腰をかけた。
一旦公園の風景を見渡して、深呼吸したのちにオレはおもむろに口を開いた。
「あのさ、芽依…病名って…その、無理にとは言わないけど、教えてもらえたりする?」
芽依の表情を伺いながら質問した。
すると芽依は、目を見開いたかと思うと
「えっ⁉︎病名⁉︎……それは…わたしが判断するのもどうかと思うんだけど…たぶん心の病気なんじゃないかなと思うよ?」
って、真剣にオレをみた。
えっ⁈心の病気⁉︎
ってか、たぶんとは⁇
待って‼︎
…
…
え、え?
えっ⁉︎
芽依は…心の病気なの?
「あの…芽依…、心の病気って…えっと…てか…たぶんってどういう意味なんだろう?」
と、脳内で溺れながらも質問させてもらった。
すると芽依は淡々と
「さとる最近涙もろいし、情緒不安定でしょ?だから、たぶんそうなんじゃないかなってね?」
なんて言ったんですよね。
ん?
オレ⁈
あら?
オレが心の病気って感じ⁇
人の心の中にずけずけ入ってくる、ふとときもの的な?
ズボラ野郎的な⁇
…
「あの…やっぱり病名なんて聞くの失礼だったよね。ごめんね…なんかあんまり言いたくないだろうにオレってば、ずけずけとさ…」
「あー、こちらこそ…よく知識もないのに、勝手に心の病気なんて言ってごめんなさい」
って謝られた。
これは…もう深入りしない方がいいのかな…
「あの…今日の病院のことなんだけど…」
「うん、予約してなかったんだよね?たぶん予約制だからまた今度行こう!わたし、付き合うよ。わたしの時だってあんなに一生懸命付き合ってくれたんだもん」
と、芽依は真っ直ぐオレをみた。
あ…
これはオレの心療内科のお話…だよね?
オレはてっきり芽依の病院に付き添うってつもりで、この前話したんだけどな。
そもそも芽依は…末期なんだから完治しているわけがない…。だから余命が過ぎても病院に通うはずだけど…
余命宣告の日を更新できたからもう満足なのだろうか…
そもそもこの話は、自分の病気のことを一生懸命はぐらかしているのだろうか…。
やっぱりいざとなると言えないってやつなのかな…。
このままオレも心の病気ってことにして、お互い病気だけど乗り切ろうってことにすれば芽依も少し気が楽になるかもしれないな。
「芽依…今日はせっかく有給つかってくれたのに、なんかごめんね。お礼にとびきり美味しいご飯奢るよ!病院は、とりあえず一人で行ってみる。それでいい?」
と、芽依の顔を覗き込んだ。
そしたら、芽依は
「そっか。ならなにかあったらいつでも言ってよね?わたしは、さとるの味方だから!」
って抱きしめられた。
「ちょっ、ここ公園だから…」
「ふふ、さとるだってこの前、外でわたしを抱きしめた。」
…
ああ、芽依が音信不通になったときか。
「たしかにそうだね。じゃあ、ここでキスもしちゃうか」
「それは、ダーメ!さ、行こう‼︎美味しいのご馳走してもらうんだから」
芽依に手を引かれ、ベンチから立ち上がって仲良く手を繋ぐオレたち。
オレたちは、普通のカップルに見えるんだろうな。
…
その日は、美味しいものを食べてショッピングして普通の休日みたいに過ごした。
そして明日も休みだけど、健康のためにとさっさと布団に入った。
芽依は、オレの腕枕が大好きだ。
芽依からいつもシャンプーのいい匂いがして、オレも癒されつつある。
電気を真っ暗にして、少しおしゃべりをしてからオレたちは、就寝するのが日課だ。
「今日は、ごめんね。芽依のせっかくの有給無駄にしちゃってさ。」
「ううん、そんなことないよ。わたし、さとるのことしっかりこれからは、サポートするから!健康診断では、あんなにお世話になったんだから。」
「あー、……うん?健康診断?」
「そうだよ?」
…
え?
オレ…健康診断で、なにかお役に立ちました⁉︎
続く。
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