病院

 芽依は、オレが一緒に病院に行っていいかって聞くと、はてな顔をしたんだけど…

 

 

 数秒後に、ハッとした顔をして

「病院…行くよ‼︎うん、一緒に行こう‼︎」

 と、オレの手を握りしめた。

 

 芽依…

 

 やっぱりそうだったのか。

 

 ずっと一人で辛かっただろうに。

 

 芽依がそんなに心細いおもいをしているって知っていれば…そしたら、ずっと一人で抱え込まなくて済んだんだ。

 

 オレは、もっと早くに気づいてあげるべきだったと深く反省した。

 

 

 もうすぐアパートなんだけど、オレたちはギュッと恋人繋ぎをして、しっかりと握りしめて部屋へと帰った。

 

 

 芽依、もう大丈夫だから。絶対この手を離さないからね。と、心の中で囁いた。

 

 

 その日は、もう芽依がそばにいてくれるだけで、とにかく安心した。

 

 昼間は、ほんとうに胸が引きちぎられそうなくらいだったからさ。

 

「芽依が隣にいると安心する」

「えっ、どうした?…ま、でも安心してね。わたしどこにも行かないからね?」

「ほんと?」

「うん、ほんとに」

 

 

 オレはその日、芽依にたくさんのキスをした。

 

 

 

 それから数日後、芽依が病院に行っている様子がないのだが?

 

 

 この間は、頻繁に行ってたような…

 

 いつ一緒に行けるのだろうか?

 

 しばらく様子を見ていたけど、やっぱり一向に病院の話をしてこないので思い切って聞いてみることにした。

 

 

「「病院…」」

 

 ⁉︎

 

 びっくりだ。

 

 

 思わず病院被りするとは…

 

 

「あ、病院ね…。芽依今度いつ?」

 

 慌てて質問したよね。

 

 

 そしたら、

「そっちの都合のいい日で大丈夫だよ。合わせるから」

 なんて言われたよね。

 

 

 そうか…

 

 それなら…いつがいいかな…?

 

 

「金曜日…とかどう?」

 オレの提案に芽依が

「うん、いいよ。そうしよう!」

 と、快く受け入れてくれた。

 

 

 

 金曜日なら、次の日休みだし病気について今後話し合ったりもできそうだ。

 

 

 金曜日か…。

 

 

 大丈夫かな…オレ。

 

 自分から一緒に行きたいって提案しておいて、不安になってきてしまった。

 

 

 もし…

 

 もしも病院の先生から、きちんと芽依のことを聞かされたら…

 

 オレはちゃんと真実を受け止められるのだろうか…

 

 

 芽依は、すでに余命を過ぎているわけで…

 

 

 そして、金曜日があっという間にやってきてしまった。

 

 

 朝からお互いソワソワしているのがわかる。

 

 ソワソワしながらウォーキングをして、朝ごはんをいただいた。

 

 …

 

 せっせと家事を分担して、ついに…

 

 

 病院

 

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 オレの言葉に芽依も頷いた。 

 

 

 しっかり恋人繋ぎして、いざ出発です‼︎

 

 

 …

 

 病院…

 

 

「そうだ…、病院聞いてなかった。芽依は、どこの病院通ってるの?」

 

「あー、わたしはあんまり病院行かないからなぁ」

 

 

 ⁈

 

 え…

 

 

 まさか…ここまできてやっぱり病院拒否⁉︎

 

 

 ⁉︎

 

 でもまぁ…

 

 無理矢理一緒に行くのもね…

 

 

「さとる、もしかしてまだ病院決めてなかったりする?」

 

 

 …はい?

 

 あれ?

 

 病院って…

 

 オレが決める…んだっけ?

 

 かかりつけの…病院が…あるんじゃ…

 

 ⁇

 

 

 えっ⁇

 

 どういうこと⁈

 

 やばい…

 

 オレ病院なんて予約してない…

 

 

 ってか、そもそも芽依の病名聞かないと探しようがない…

 

 …

 

 いまさら間に合うのか⁉︎

 

 続く。

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