第3話 ホープ

「さて…とりあえずタバコを買いに行くか…」

エンジは煙草屋に向かいタバコを買いあさる事にした。


「戦闘中以外はポケットにタバコは出ないのか…なるほどな」

とりあえずボヤボヤとしながらスマホで何も起きてないか確かめて煙草屋へ向かう。

煙草屋のおばちゃんは昨日殺されてしまった…。ただただ不安なものの煙草屋へ向かう。


「いらっしゃいませ!エンジさん!」

「あ、ああ…どうもハイライトカートンあるだけ下さい」

「えーっと…ちょっと倉庫見てきますね」

エンジは覚悟していたもののキツかった。全くの別人が店番をしていた。

だが書いてあった通り歴史が書き換わっているため、普通の対応を心がける。


「カートンは4つありました!」

「ああ、どうもありがとう。じゃあこれお金…」

「はい!毎度ありがとうございます!」

エンジはタバコをその場で吸ってボヤボヤと過ごす事にした。

何も考えずスマホで適当にSNSを見ていると電話が鳴った。


タイムサービス


「もしもし!」

「エンジ様サービスのご利用はどうでしょうか?」

「もう解約したい!金はいらないから返品させてくれ!」

「よろしいのですか?」

「で、できるなら今すぐにでも!」

「注意として聞いていただきたいのですが、能力を返品できてもサービス自体は無料オプションで解除できません。それでもよろしいでしょうか?」

「なっ!?そんなん実質的に強制じゃないか!」

「ですがこれはチャンスです。貴方の運命は大きく変わるでしょう」

「頼む!サービスも解約させてくれ!」

「申し訳ございませんが…」

そこから長々と「無理だ」と言われ続け俺は気が遠くなる思いだった。


「エンジ様?」

「あっ…ああ、すまない」

「お分かりになりましたか?能力の返品は可能ですが」

「もういい!失礼する!」

「それでは今後m」


ツーツーツー


「はぁ…俺はどうすれば…まあいいか飯でも食いに行こう」

俺は行きつけの喫茶店へ足を運びタバコを吸いながら時間を過ごす事にした。

何でもないこの時間を大切にしたかった。


「お!エンジさんじゃん!」

「あぁ…ノゾミちゃんか」

彼女はココによく来るパチンコを好むが余り借金をしてしまった色々素晴らしい人物だ。いつもは出会い頭に昨日の勝ち額を自慢してくるが今日はいつもと違う様だ。


「昨日は負けたのかい?」

「ふふふ…借金が一気に無くなって昨日馬鹿勝ちして夢のノー借金生活なの!」

「…?一体どういう事?」

「信じられないかもしれないけど…あー言っても意味ないしいいか」

「気になるじゃん!言ってよ」

「んー。ここ奢ってくれたらいいよ!」

「分かった。じゃあ奥の席で話そうぜ」

俺は何の気無しに奥へ行き借金返済とやらの話を聞く事にした。


「なんかね?電話で資産の半分をくれたら」

「待て!お前それタイムサービスだよな!?」

「あれ?何で知ってんの?」

「いいか…?落ち着いてよく聞け。お前は最悪の決断をした」

「え?な、何言ってんの?借金減って凄い事もできるようになったんだよ?」

「…不味いな」

「ちょ、ちょっと!不安にさせないでよ!」

「いいか?スマホを見てみろ」

「?…あれ?なんか知らないアプリがあるんだけど」

「落ち着いて声に出さずよく読みこめ」

ノゾミちゃんは読んでいく毎に顔が真っ青になっていった。

流石にこの子でも意味は分かったようだった。

自分がどんな状況に置かれているかという事が…。


「ね、ねえ…私死んじゃうって事!?」

「こ、声が大きい!他に能力者がいるかもしれないだろ!」

「あ…え…どうしよう。死にたくないよ…」

「俺は昨日殺されかけた。もう意味は分かるな?これは完全に殺し合いだ」

「…うん」

「なあ、協力しないか?」

「え、でもマッチングしたら戦うんじゃないの?他の人には攻撃できないし…」

「考えろ。お前の能力は分からんがとにかくどっちかが盾役になって守るんだ」

「そ、そっか…でも喧嘩した時もないよ私」

「いいんだ。能力に任せるんだ。俺達はマッチングを使わず一緒に行動する。どちらかがマッチングしたら常にお互いで連携して敵を倒す。それだけだ」

「ひ、人なんて殺したら…」

「ノゾミちゃん…もう殺すか殺されるかなんだよ。俺もやりたくないけどやった以上仕方ない」

「う、うん。お願いだから私の事殺さないで…」

「大丈夫だから。落ち着いて」

「私は何をすれば…」

「いいかい?俺の能力はタバコを使う能力だ…」

エンジは能力の説明を行い人にバレないように小さいながらも実演してみせた。

これは敵意は無いという事を分からせるための物だ。

そして話しながら参加条件は現状の資産の半分という意味は借金ですら半分持っていくという事が分かった。

恐らくノゾミちゃんは、証拠を見せられる際にパチンコから一杯玉を出すという事を見せられて納得したんだろう。


「どうかな?俺の能力で判明しているのはこんなものだ」

「わ、私の能力はパチンコ玉を自由自在に操れる能力っぽいの…」

「そうか…とりあえず実験はしたかい?」

「うん。パチンコ台の玉が自由に動かせて一杯入って勝てたって感じなの」

「検証もまだまだか…じゃあ家で色々確認しようか。パチンコ玉をありったけ今俺の家に送るように購入したから」

「わ、分かったよ。お願いだから離れないでね」

「大丈夫だって。とりあえずタバコでも吸いなよ」

「う、うん」

ノゾミちゃんはタバコを吸って精神統一でもしているのかリラックスしている。

少しは落ち着いてくれたようだが周りをきょろきょろ見まわたしている。


「で…どうする?今後俺と一緒に行動するけど俺の部屋に住むかい?」

「う、うん!とにかくこれが終わるまでいさせて…フリーターだから家賃はそんな払えないけど」

「大丈夫だって。気にしないで」

「あ、ありがとう」

「後バイト辞めてもらっていいかな?もうこんな状況だし俺は金ならあるからさ」

「うん。ありがとう」

俺達は喫茶店でご飯を食べて家に一緒に向かう事にした。

帰る道中もノゾミちゃんはスマホを見たり周りを見たりと挙動不審だった。


「お邪魔します」

「家だと思ってくつろいでね」

家の中をひとしきり教えて俺は今後について話していく事にした。


「どっちが襲われるか分からない。その事からとりあえず俺らは一緒に居よう。これがどれだけ続くかも分からないけど金はあるから」

「うん…。私何もできないから助けてね」

「いやいや。どんな事ができるかとりあえず調べてからだよ」

「わ、分かった」

「まず能力を使ってみよう」

「回れ」

ノゾミちゃんがポケットから1つのパチンコ玉を取り出して宙に浮かせる。

ふわふわと浮いており試しに指先で触れたが何もないようだ。


「じゃあとりあえず動かせる事は分かったから…とりあえずあの塀に向かって全力で打ちこんでみて」

「わ、分かった!よーし!…えい!」

塀の上部に当たったようでコンクリートが粉々になっている。

破壊力は抜群だろう。


「それを戻す事はできるのかな?」

「うん!…ゆっくり戻って!」

パチンコ玉はふわふわ戻ってきてノゾミちゃんの手のひらに乗った。

移動などを100回連続でさせてみたが、恐らく上限はないようだ。


「俺と違って上限が無いんだね…これは強力だよ」

「で、でも防御できないよ!」

「複数個動かせる事も分かったし靴にパチンコ玉を埋め込んでバッグの中に大量の玉を入れて移動すればいいんじゃない?」

「うわ!凄い強そう!」

「やってみよう!」

靴の裏をライターで炙りドロドロにしてパチンコ玉を埋め込み試してみる事に。


「とりあえず横に移動できる?」

「うん!なんか少し浮かして地面に触れなければ幾らでも動かせるよ!」

「じゃあどこまで上にいけるかな?」

「こ、これが限界かな?」

「限界があるのか?恐らく上方向に持ち上げる事はそこまで得意じゃないのか?」

エンジは昨日の戦いから能力にはそれぞれ長所と短所がある事に気づいた。

昨日の口紅は固さや使いやすさはあるが、近距離向けなのだろう。

伸びた長さは大体電柱の半分程度の長さだったことからアレが限界なんだろう。

俺の能力は使い勝手はいいが、持続できないという弱点がある。

ノゾミちゃんは重量を上げる事はできないが汎用性が高く戦闘向きだ。

ガードさせるにしてもパチンコ玉は金属のため期待していいだろう。

だが、現状の能力全ては自律制御は出来ないという共通点はある。

全て使い方次第なのだろう。


「良し。じゃあ最後の実験だ。球を破裂させられるかやってみよう」

「えぇ…家壊しちゃうよ…」

「大丈夫大丈夫。持ち家だから」

「じゃあ…廊下でやる?」

「うんやってみよう」

一応電球などをフライパンでカバーして実験を行う。

能力者はマッチング以外で攻撃はできないため、俺には当たらないはずだが怖いので煙で30枚ほど防御を張り見守る事に。


「行くよ!」

「うん!」

パァン!球が弾けてアチコチに痕をつける。

鉄製の玄関のドアにさえめり込んでいる。

煙の防御は10枚ほど破れており、破壊力と数も申し分ないようだ。


「こりゃ凄いな…攻撃も防御もできるし当たりの能力だよ」

「あ、ありがとう!」

「ハハハ。まあ戻ろうか」

部屋に戻り2人でタバコを吸ってリラックスをする。


「じゃあまとめようか…ノゾミちゃんの能力は…」


・パチンコ玉が無ければ使えない

・1玉を全力でコンクリートにぶつけたら破壊できるほどの威力

・現在30玉ほどしかないが全て制御できる

・上方向に重さがティッシュ箱程度を持ち上げる場合は問題無いが、人の重さであれば10㎝程度が限度


「うん。私も少しは戦えるかも」

「…余り油断しないでね?殺す覚悟が無いとキツイからね」

「う、うん…」

「俺も最初は何とかなるかと思ったけど結果的に殺すしかなくなったんだ…もしノゾミちゃんがマッチしたらその時は自分でトドメを刺さなきゃならないんだ」

「わ、分かった…」

「頑張って生き残ろう」

「ちなみにもし願いが叶うなら何をするの?」

「能力とマッチング機能をこの世から消す事だね」

「わ、私も!もうこんな事嫌!」

その後タバコを吸いながら2人で連携などを考える事に。


「あ、そうだスマホ見なきゃ」

「あ!確かに!」

「俺は大丈夫」

「わ、私…マッチングしてる…1分前に…」

「なっ!?」





















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