復讐の仮面

@hayama_25

第1話:裏切りの夜

お父さんが死んだ。


私が小学1年生の頃の話だ。


あの日の夜は、静寂を破るように、家の中は騒がしかったことを覚えている。


私は、何も知らずにその騒ぎを聞いていた。


お父さんが突然部屋に入ってきて、私に尋ねた。


「伊織、数字を数えられるか?」


驚きながらも、私は元気よく答えた。


「うん!学校で習ったから100まで数えられるよ!」


お父さんは少し微笑んでから、私を押し入れに閉じ込めた。


私は少し不安になりながらも、お父さんを信じて従った。


「それじゃあ、100を数えるまでここから出てくるんじゃないぞ」


私は何も疑わずに、1、2、3と数を数え始めた。


しかし、家の中の騒ぎはますます大きくなっていった。


心臓がドキドキと早くなり、数を数える声が震え始めた。


ドアの向こうからは、怒号や物が壊れる音が聞こえてきた。


恐怖が胸を締め付ける。


「お父さん、誰か来たの?」


私は押し入れの中で小さな声で尋ねた。


扉を開けようとしたその瞬間、お父さんの声が聞こえた。


「まだ100まで数えていないだろ」


「でも、」

私は不安と恐怖で声が震えた。


「伊織。どんな時でも、最後まで諦めるんじゃないぞ」


お父さんの声は優しくも、決意に満ちていた。


その時は、お父さんがどうしてそんなことを言うのか、よく分からなかった。


だけど、それが…お父さんの最後の言葉だった。


私は急いで100まで数えようとしたが、間に合わなかった。


涙が頬を伝い、数を数える声が途切れた。


部屋に誰かが入ってきて、


バン…!


とピストルの音が響いた。


恐怖と悲しみが胸を締め付ける。


お父さんは何者かに殺された。


小さいながらもその事は理解していた。


次は、きっと私の番だ。



押し入れの中で震えながら、私は耳を澄ませた。


足音が近づいてくる。


心臓が早鐘のように打ち鳴らされた。


ドアが開く音がして、誰かが部屋に入ってきた。


「終わったか?」


「はい、ボス」


その声は私の聞き覚えのある声で、何かの間違いだと思いたかった。


混乱と恐怖が頭を駆け巡った。


「よくやった。これで俺たちの計画は順調に進む。あいつの娘はどこだ」


「しかしボス…伊織は何も知りません。事を大きくするのは避けるべきかと」


その言葉に一瞬の安堵を感じたが、すぐに恐怖が戻ってきた。


「お前が心配することではない。しばらくは様子を見て、必要なら処分する」


冷たい声が部屋に響いた。


私は押し入れの中で、涙をこらえながら怯えることしか出来なかった。



心の中でお父さんの言葉を繰り返しながら、恐怖と悲しみが交錯する中、ただ震えていた。

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