幼馴染と刻む恋愛記録

@terepasu

プロローグ

夜の闇が晴れて朝日が登り始める。


「……ん」


河原侑はベランダに止まっている小鳥の鳴き声で目が覚める。


「いい天気」


締め切っているカーテンを開けると、ここ数日は天気が悪かったけど、今日は湿度は高そうだけど、雲の間からお日様が顔を見せている。


(起きたかな?)


同じタイミングで隣の部屋のカーテンが開き、私は窓を開けてベランダに出る。


「おはよ。希ちゃん」

「……おはよ」


腰まで伸びた亜麻色の髪は寝起きで乱れており、起きたばかりなのか眠そうな目がとろんとしている。


「また夜更かし?」

「うん」


私と話している女の子の名前は牧田希。幼稚園からの付き合いで、通っている学校も一緒。


「居眠りしても、侑がノート取ってくれるから」

「私を頼られても困るなぁ……」


希ちゃんはマイペースな性格で、周りにあわせることはなく、自分の好きな道で生きている女の子。


「寝癖凄いよ」

「……ん」


希ちゃんは私に直してほしいと頭を預け、仕方がないなぁと思いながら乱れている部分を直す。


「おーい! 直してる時に寝ないでよ!」

「寝てない」


希ちゃんは寝癖を治している時、うとうとしはじめる。


「居眠り現行犯で逮捕します」

「刑事さん。これはわたしが悪いわけじゃない。暖かい春が悪い」

「似たようなことを冬にも聞いたなぁ……」


希ちゃんによると、春は暖かくで眠い。冬は寒くてコタツがあるから眠いとのことです。


「一年中、春のように暖かくなれば侑にも気持ちがわかるはず」

「わかりたくないよ……」


花粉症で春先はシンドイのに、一年中、春とか地獄でしかない。


「はい。いいよ」

「……ん。ありがと」

「どういたしまして。話は変わるけどさ、最近、うちのクラスでも恋バナする子が増えたよね」

「好きな人でもできたの?」


希ちゃんは閉じていた目を開きながら、私に問いかける。


「できてないけどさ。いつも話を聞く側だから青春っていいなぁって」


うちの学校は在籍中に同じクラスからカップルがよく出来るといわれているみたいで、昼休みや放課後には恋愛話をする事が多い。


「……侑に彼氏? 想像できない」

「異性で話せるのうちのお父さんか、希ちゃんのお父さんくらいだしねぇ……」


中学の頃、同年代の男子と同じ部活に在籍してた頃も、同級生の男子って印象で、遊びに行く事はなかったし、別々の高校に進んだ。


(友達として見ちゃうんだよね。それ以上の関係を望まないって感じで)


一緒にいると楽しいと思う相手も将来的に一緒にいたいと聞かれたら私は首を横に降るだろう。


「下に弟がいたら理解できたのかなぁ……」

「弟がいたら甘やかすよね」

「近くに妹みたいな子がいるからね」

「……誰のこと?」


私の隣で首を傾げている女の子です。


「幼馴染って男女になる事が多いよね。私たちは同性だけど」

「ん。普通に喧嘩する」


漫画やアニメの世界では幼馴染は子供の頃から一緒にいることで、強い絆で結ばれている。


(私たちは普通に喧嘩するし、考えが合わないこともある)


私たちは家が隣だし、親同士の仲もいい。


「私は隣にいてくれる人がいいな」

「彼氏に求める事?」

「うん。優れてなくてもいいし、私の隣にいてくれる人」


付き合うとしたら、特別な才能や周囲からの人望が高いよりも、私の隣にいてくれる人。


「……好きな人がいたら付き合うの?」

「希ちゃんは?」

「……質問を質問で返さないで」


マイペースで縛られない自由な生き方を好んでいる男子がいると聞いた時に聞いてみようと思っていた。


「わたしはもう好きな人がいるから」

「……初耳。私の知っている人?」

「うん」


希ちゃんが好きな人ってどんな人だろ……? 男子と一緒にいる所はあまり見ないから想像出来ない。


「……今は想いを伝える練習が必要」


幼稚園からずっと一緒にいたけど、お互いに好きな人がいれば、隣を歩く人はその人に変わる。子供の頃から自分の居場所だと思っていた場所が他の人に変わるのは寂しい。


(聞かない方がいいか)


気になるけど、希ちゃんはいわないだろうし、聞かない方がいいよね。


「お弁当、わたしの好きな物がいい」

「わかった。人参多めね」

「……意地悪」

「高校生なんだから好き嫌いを減さないと」


希ちゃんは頬を軽く含ませ、私は笑いながら指で額をデコピンする。

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