第42話 編成替え

「英軍の戦艦は有効的に空母から援護されていませんでした。今回の戦いでは戦艦は適切な航空援護下ではないと有効に活用できないただの的だということがわかったと思います。ただしダイドー型などの防空巡洋艦は陸攻隊に対して大きな損害を与えていたようです。龍驤は条約中のトップヘビーな艦でしたが、この前の調査で被弾箇所が発電機や送電版の近くでありそれによって消火装置や非常用設備が使用不能になったことが沈没の原因だと予想されています。空母護衛の最上型や長門型には電探が搭載されていたのですが各艦の連携が不十分だったのと最上型の速射砲が期待外れだったのが改善点でしょうか。戦艦には電探が搭載されていましたが開戦時の前線の空母は電探が搭載されていませんでしたから、いちいち戦闘中に電信を送り合って把握しなければなりませんでしたし、敵味方が近距離で航空戦をしていると識別が難しくなるのに加えて遠距離の探知に目が回らなくなります。」


「それについては小沢中将と前もって検討した結果、軍令部にも資料を配布しておきましたので宝龍型と雲龍型には対空電探が艦橋上部に搭載されていますが今後既存空母のカタパルト搭載の改装に合わせて電探を搭載するよう艦政本部に要望しておきましょう」


井上の指示で副官とGF荘の事務職員がその資料を配布した。まあ、井上、こういうの苦手なんで、わりと副官と参謀や小沢に任せっきりだったが。


「と、いうわけですがこの辺で戦術面での話はそろそろ終わりにした方がいいのでは」


福留が少しずつ話題がそれていた会議を戻そうと言ったあと、ここで小沢ら艦隊長官には本会議の本当の議題を伝えていなかったことを思い出し、山本に見られたのを見て少し、しゅんっとなってうなだれた。


「各将官の言ってくれた戦術的及び兵站的教訓と反省は今後に活かしていくためにも今後何回か再会議をするだろう、よろしく頼む。」


山本はそこで言葉を区切った。


「参謀たちには伝えていたが、本会議では第一段階作戦の反省もそうだが戦略的な第二段階作戦の詳細を詰めることにもある。軍令部は米豪遮断作戦を進める方針で計画しているそうだ。新造艦も加わったことなのででそれに合わせて編成をこちらの方で調整した。」


そう言うとまた編成替えの詳細の資料が配布された。


「第一航空艦隊は宝龍型4隻と蒼龍、飛龍の6隻で、第二航空艦隊は雲龍型6隻、第三航空艦隊は祥鳳型3隻と赤城、隼鷹型2隻、練習空母の鳳翔、第四航空艦隊は十勝型6隻です。付属の駆逐隊については後ほどお知らせします。」


渡辺が説明する。


「南雲中将、君、やっぱり空母扱うの苦手だよね。」


山本が単刀直入に言う。


「はい。努力はしていますが、小官は山口中将や小沢中将には及びません。加賀の損失も小官の認識不足が大きいと思います。」


南雲は山本にそう答えた。


「南雲中将は新編の第三航空艦隊司令官に転属、小沢中将は南遣艦隊の司令官から第一航空艦隊に転属、第二航空艦隊は山口中将に、第四航空艦隊は井上中将がそのまま引き継いでもらう。第四航空艦隊は今後の準備や整備のためにも第三航空艦隊と入れ替えでトラックから内地に帰還することになるだろう。現在第一航空艦隊の蒼龍と飛龍のカタパルト搭載改装は完了し、雲龍型4隻も順次搭載される予定だ。第三航空艦隊の空母3隻はおそらく最後になるだろうが異論はないな。それと工作艦の門倉と野母崎はドイツからの航路が封鎖されたせいで完成は難しそうだ。それについて清水中将から具申があったので発言を許そう。」


清水光美は潜水艦で構成される第六艦隊の司令官であり、南雲の同期の海兵36期卒である。


「ドイツとの技術交換についてですが、大島駐独大使の交渉の結果から、双方から潜水艦を派遣、それによって設計図や貴重品を運搬する方式になりました。乙型巡潜の内3~4隻をこちらからも酸素魚雷や空母の設計図といったものを載せて送り出すのですが、出航は今月末、帰還については8月頃を予定しております。」            

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