土蜘蛛 (3)
この時代は基本戦らしい戦はなかったゆえに、想定されるのは都を守る防衛戦になる。都を守る戦ではまず弓を射かけることから始まるため、防衛する兵にとって弓の扱いは必須だった。だからか、剣の鍛錬の場は弓よりは狭く作られていた。
練習の場ゆえに、鍛錬場の壁際、掛けられた様々な武器はすべて刃を潰してある。
直刀と剣、最近出始めた
御大将は鳴神の予想通りに槍を取る。
天子のいる
「いいのか、お前の得意は大太刀だろう」
「大太刀は使い慣れている。最近直刀は触っていない」
「ハハッ、俺相手に練習する気か。 いいだろう、来い」
ギラっと目が光った御大将の気配がすっかり
二人全身汗だくで大きく息をつくと、ほぼ同時に構えを解く。
御大将が呼んだ
御大将は上半身
「……はあ、お前相手はやはり疲れるな。そこに間食と煎った茎茶を用意してある。話がてら休憩はどうだ?」
「する」
鳴神は片手で綿布を握ったまま、縁側の一部に腰を掛け、遠慮なく間食に手を伸ばした。
今日は蒸したコメにゆでた青豆を混ぜ込み塩を利かせた握り飯で、なかなかにうまい。
冷めた茶で流し込みながら、同じように間食を平らげて語りだす御大将の声を聞く。
「今回はご苦労だった。またいくつか褒美が寄越されると思うが、何か欲しいものはあるか」
「……ならば、太刀の良いものを。重すぎず軽すぎずのが一本欲しい。前の前に出された戦で折れた」
「相分かった。 ほかは?」
「ない」
言い切って、また握り飯に齧り付く鳴神を一目見て、御大将が一つ息をつく。
「お前も
「わかった」
言いながらもう一つ握り飯を口に含むと、近くの宮女に練習用の直刀と綿布を返した。
「もう行くか。 たまには俺の家で酒はどうだ?」
「……いや、いい。 帰って寝る」
「そうだな、お前はそういうやつだ。悪かった、よく休め」
頷いて、すたすたと鍛錬場を出、鳴神は去っていく。
その背を遠目に眺めて、御大将はまた一つため息をついた。
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