土蜘蛛 (2)
先日の大江山の件を改めて
鳴神の
「……どういう気で首を取って来いと言ったのかは知らんが、血抜きし塩を大量に入れてある。どうやってもヒトに見えるようにはしておいた。何か聞かれたら、腐らぬよう塩を詰めただけであとは知らぬと言っておけ。……それを見て喜ぶようなら、もうあやつの後は少ないと見ろ」
合議制が詳しくはどんなものかはよくわからんが、権力ある貴族と先の天皇たちがそれぞれ寄り合って決めるものだ、と鳴神の主は言っていたからそういうものなのだろう。鳴神の主は既に今の天子の在位が残り少ないと読んでいる。
正直、鳴神には天子がどう入れ替わろうが興味もないが。
ドスドスと歩いていた廊下の先、
「ご苦労。 ……その手の物が例の鬼か」
いつもなら御大将の声がするところ、今日は御簾越しに直接か細い声が聞こえ、鳴神は思わず伏せていた面を少し上げた。
御簾越しの声が笑う。
「
「……はっ」
ただ最初の一声が御大将の声でなくて驚いただけだが、どこか満足げに聞こえて鳴神は黙っていることにした。
「その形の箱ということは首だな。退治したのか」
「は、鬼どもは何人かおりましたがすべて斬り倒し、今はあの山には鬼はおりませぬ。主上より証拠をとのことでしたので、
「ふむ、よくやった。 ……首をこちらへ」
ひそと
「………ハハッ、確かに首だな、間違いない。ようやった。お前の次の仕事は陸奥守に伝えているゆえ、そちらから聞くがよい。褒美は後でとらす」
「……はっ」
首を受け取り嬉しげな声を上げた主上が、鳴神にはすっかり興味をなくしたようなので、安心して昼の御座から下がる。廊下には先ほど「陸奥守」と呼ばれていた御大将が少し疲労が滲んだ顔をして待ち受けていた。
「鳴神よ、ご苦労だった。 次の命について聞いておるか?」
「……御大将から伺えとの命でしたが……」
「うむ。ここで立ち話もなんだ、
普通の貴族や
つまりは二人とも脳にも筋肉が詰まっている。
嬉々として、鳴神は御大将の後について鍛錬場へと向かった。
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