400文字ストーリー

永遠在生人

第1話 勇者と魔王

 勇者は告げた。

「遅かった。俺ら以外皆、死んでしまった」

 今にもこぼれそうな涙をこらえ、勇者は天を仰いだ。

「僧侶も戦士も盗賊も剣士も皆いなくなった」

 相対する魔王は

「…………」

 何も言わなかった。勇者はこう言った。

「全ては王族貴族の策略だった。魔族が侵攻してきたから、と俺らに助力を求めた。『早くあの恐ろしき魔族どもを蹴散らし、平和をもたらしてくれ』と。そして、俺らを捨て駒にした」

 勇者は剣を投げ捨てて、魔王に近寄った。

「どうすれば良かった? 戦うことが悪だったのか? 俺らが戦う最中に、上空から破滅の魔法を撃たれ、俺と魔王以外は皆死んだ。なあ、魔王よ。それでも俺らは戦うのか?」

 問われた魔王は

「我らには奪うしかしか知らなかった。だから、奪われるとはこんなにも痛いものなのだな」

 勇者に手を差し伸べた。

「戦うべき相手は人間でも魔族でもない。『悪意』だ。勇者よ。共に戦わないか? この世にある『悪意』という概念と?」

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