女の子同士だし恋人未満だからこれは浮気じゃないんです

@mirror12

第1話 ついに告白したんです

「一ノ瀬莉々さん!わ、私と…付き合ってください!」


言った。

言ってしまった。

痛いくらい心臓が跳ね回るせいで、少し声が震えてしまった。

北風がセーターを貫くほどの寒気運んでくるのに、顔が発火しているみたいに熱い。


ずっと前から決心して、何回も何回も練習した。

私なんかじゃ駄目で元々、玉砕覚悟で想いを伝えるんだ!って息巻いていたのに。

ビシッと決めるどころか、情けなく裏返った声しか出なかったし、一生懸命考えた台詞もほとんど飛んでしまったし。


ああ、私はなんて大それたことを…無理に決まっているのに。これでフラれて、クラスで噂されて、残り一年半の高校生活を日陰でひっそり生きていくしか無いんだ…。

木枯らしが私の癖っ毛を軽く撫でる。


一ノ瀬さんからの返事はまだない。

もうダメだ。生きるのが辛い。早く断ってほしい。

いまこの瞬間の絶望感から一刻も早く開放されたい。

で、でも、いや逆に、この長い”間”は、もしかして…?

だってキラキラ女子の一ノ瀬さんなら、こういうのも慣れてそうだし、断る時はあっけらかんと斬って捨てそうだし…。

万が一、いや億が一、ワンチャン、あったりするのかな…?

ど、どうなんでしょうか?もうわかんないです。もう無理です。


「あ、あの…………。ど、どうでしょうかっ?」


恐る恐る、顔を上げてみる。

一ノ瀬さんは、天使のごとく愛らしく微笑んで。


「あの…。どちら様でしたっけ?」



斬り捨てられるまでもなかった。

藤野侑、十六歳。

私の初恋は。

並木の紅葉とともに、木枯らしに散っていったのだった。

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