三色団子

@zo_sui

第1話 桜

時は平安時代。この物語とある小さな町での出来事である。


ー温もりに 春の訪れ 感じけりー

私、あんは小さな町に住んでいるごく普通の少女だ。暇な時は俳句を詠み、季節を心と体で感じている。

私はもともと生まれつきの病気で体が弱く外に出ることができなかった。当初はとても嫌がっていたらしいが母上に俳句を教えてもらってからは毎日一日一句は詠むようになっていた。

だが、そんな私も13になって体の調子もだいぶ良くなり、最近は近くのお団子屋さんに週一で通うようになっていた。

もっともそこのお団子が美味しいからという理由もあるが実はもう一つ理由がある。

実は最近、そのお団子屋さんで運命的な再会をしてしまった。一つ年上のじんさんだ。彼は背が高く鋭い目つきをしていて近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、根はとても優しく頼りになる人だ。ここだけの話、尋さんは怖いものが苦手だ。

私が尋さんと出会ったのは12のときだ。私の家は代々神社を守る守護家として尋さんのお父さんが神主の麗華うらか神社に仕えていた。ある日、私の病気が突然再発し私は家の縁側で倒れてしまっていた。不運なことにその日は両親共々おらず家に1人の状況だった。このまま死んでしまうのかと覚悟を決めかけたが、尋さんが駆けつけてくれ一命を取り留めた。後になって聞いてみると私が倒れた音に気づきすぐに駆けつけてくれたそうだ。

その日から私と尋さんの関係は深まっていった。今思うと助けてもらった時から私は一目惚れをしていたのかもしれない。

だが時間が経つににつれて尋さんと一緒にいたいと言う夢が叶わないものだと言うことを知ってしまった。

彼には婚約者がいたのだ。彼と同い年でこの街の次期神宮姫じんぐうきである天姫あまのひめである。

代々、力のある一族は別の力のある一族としか結ばれてはいけないと言う風習がある。それは上血一族を下血一族と結ばせてその血を汚させないという上人たちの計らいであった。

私はそれを知った時、絶望した。自分が結ばれたいと思った相手と結ばれることすらできないというこの国に絶望した。

だが同時に尋さんには幸せになってほしいとも感じた。矛盾している。

2年前。桜の花が開き始める頃、私は尋さんに婚約者の天姫を紹介された。天姫は私と同じでもともと体が弱かったらしい。すぐにお互いに打ち解け合い仲良くなった。

私の体が弱かったから2人とは家の中で話したり遊んだりした。天姫はこの街の外の景色や動植物についてたくさん教えてくれた。この時だけは身分の差を感じることがなかったため気が楽だった。

だが3人の別れは1年前の春。突然ときた。天姫の母上が急病によって亡くなってしまった。そのことにより天姫は幼くも神宮姫へとなった。


   それと同時に尋さんも神宮主じんぐうしゅとして天姫と結ばれた。


その時私は失恋したのだと理解した。その日は桜の花と暖かい風に春を感じる日だった。

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