その8:同じ穴ブラザーズ
先生を呼びに行くと出ていった
「……
1人の男子生徒が声を上げた。保健委員の
マジか、どうしたらこうなんの、やべーやべーよおい、テーピングとかした方がよくね、バカ下手に触るな、と
階段を降り、当たり前のように1階に着くと、
「失礼します。えっと、急患です」
「あら、
白衣を着た人の良さそうなおばちゃん、そうとしか表現しようのない人物像。
「はい、えぇと、3年2組で、彩湖蓮さんと、十字河さんが大怪我を…… 腕とか足とか、折れてるかも。担架や救急車が要るんじゃないかと思います。えぇと、とにかく、ちょっと見に来てください!」
「折れた? それは……大変ねぇ。階段から転んで落ちたりしたの?」
「あ、だから。3年2組です。あの、教室の中で」
「教室の中で? あらあら、何が起きたの? ドアに挟んだ? 机が倒れたとか?」
「えっと…… なんか、ケンカ、みたいな?」
「えっ、十字河さんって、あの柔道部の十字河さんよね? 十字河さんが彩湖蓮さんの腕を折っちゃったの?」
「あっ、
「えぇっ!? 彩湖蓮さんが十字河さんの腕を折っちゃったの!?」
「ち、違います! 彩湖蓮さんも折られたんです。えっと、折ったのは
「四方木くん!? 四方木くんが女の子の腕を折っちゃったの!? なんでそんなことに?」
「えっと、四方木が、ストーカーしてて! それで、捕まえようとした彩湖蓮さんたちに、暴力を振るって!」
「誰がストーカーだ」
「だから、よも……」
状況が理解できなかったからだ。
「俺がストーカーだってのか?
目の前にいるのは保健の先生ではなく、白衣を羽織った四方木礼祀だったのだから。
「あ…… え? な、なんで、ここに。先生は?」
混乱する以外、何もできない。
血のように赤い夕焼け色の日差しをバックに、逆光に染まった四方木礼祀の鬼神のような形相が見えた。
「俺はストーカーなんぞしたことねーんだが。人を変態呼ばわりしやがって、納得いくだけの説明はしてもらえるんだろうなぁ!?」
「えっ、だ、だって、彩湖蓮さんたちが……言ってて……」
「はぁ!? なんだそりゃ。
「な、何言ってんの!? そんなの、誰が信じるの!?」
「俺は信じるぜ」
「君が1人で勝手なこと言ったって……」
「なんだ、1人じゃなきゃいいのか? じゃあ、俺も信じるぜ」
唐突に、ベッドの間仕切りの向こうから声がした。
「俺も信じる」
「俺も俺も」
「俺だって信じるぜ」
「俺もずっと信じてた」
出てくる。四方木礼祀が。
四方木礼祀の顔をした連中が。次々と。ぞろぞろと。
「ひいっ!?」
思わず
「この人殺し」
「ひでーことするよな」
「なんで殺した?」
「被害者に悪いと思わないのか」
「謝れよ」
「謝ったって許されねーけどな」
四方木礼祀に囲まれる。
何これ? 変装? 悪ふざけ?
こいつ、こんなに友達いたの? どこの誰? 保健の先生までグル?
「黙ってんじゃねーぞコラッ!」
髪を掴まれた。
「痛っ!? や、やめてよ!」
「黙れ人殺し! 被害者と遺族の痛みはこんなもんじゃねーぞ!」
被害者って誰、と思う
ろくに受け身を知らない
ヤバい、次、踏まれる。
あれ、なんで分かった?
そうだ、これ、さっき……
「反省しろ!」
腹に容赦ない
踏みつけられた。上履きのままで。
「謝れ!」
「償え!」
「悔い改めろ!」
「生まれてすみませんと言え!」
踏まれる、蹴られる。寄って
苦痛と恐怖。
「ごっ、ごめんなさい、四方木くん!
必死に叫ぶと、暴行の嵐がピタリ、と
良かった。助かった。
と、思ったのも束の間、
「ぶはっ!」
「ぎゃはははは!」
「ゲラゲラゲラゲラ!」
「ニャガニャガ!」
「ハタハッハ!」
礼祀たちが一斉に笑い始める。奇怪で、不愉快な、悪意に満ちた嘲笑。
「謝った! コイツ、謝っちゃったよ!」
「おいおい! 正義の人じゃなかったの? 悪に屈しちゃっていいの?」
「ストーカーは証拠も無しに責めるけど、暴行傷害の現行犯にはペコペコすんのな!」
「それって、ただの弱いものイジメって言うんじゃないのぉ~?」
「クズじゃん」
「サイテー」
そして再び始まる暴虐。
殴られ、蹴られ、罵られ、
何これ、何で、
人殺しって、なんなの。意味分かんない。
なんで、
大勢で
暴力と、数の暴力と、言葉の暴力に晒されて。
そんな
※※※※※※
「こーよいこなたの にーばんくびは
ふたつふしょうの せっけんがかり
むじなのむれに くびつかまれて
ふへいふまんを いいながら
ふくろだたきの たこなぐり
くびふたつーめは たーこなーぐりー」
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