その7:くびづかかぞえうた
一方、
「じゃ、後は勝手にしろ。俺はもう知らん」
はぁ?
二度寝すんの? この状況で?
どういう神経してんだ。
呆然とするクラスメイト達の中、礼祀の眼光から解放された
「あっ…… だ、大丈夫?
役得とばかりに近くの男子が駆け寄る。
普段なら
「おいコラ! なに寝たフリしてんだ!」
「無視してんじゃねぇ! ストーカー野郎!」
「意味分かんねーこと言ってんじゃねーよ!」
クラスメイトたちが口々に騒ぎ立てる。
礼祀は無反応だ。それでも、みんな遠巻きに騒ぐだけで、近づこうとする者はいなかった。彩湖蓮や十字河と同じ目に合わされるのは困る。
それでも、
「四方木、いい加減にしなよ! アンタ、先生が来てもそんな態度とれるの!? これ以上暴力なんか振るったら、どうなるか分かってんでしょーね!」
1人の女子が礼祀に向かって足を踏み出した。
礼祀を揺すって起こそうと、肩に手を伸ばす。遠巻きにしているクラスメイトたちがゴクリと唾を飲み込む。
触れた瞬間に、天野の手が
1秒、2秒、3秒。
4秒、5秒、6秒、7秒……
天野は動かない。不自然な
「……
違和感を覚えたクラスメイトが声を掛ける。
天野は、礼祀から手を離すと、すぅっと
「よーみのすそのの くびづかの
こよいのまつりの いちばんくびは
どなたにござる どなたにごーざる」
歌い始めた。
「てま……ちゃん?」
天野手鞠はハンドボール部だ。歌と言えば手鞠の出番、なんてキャラじゃない。
そんな彼女が、ミュージカルのように突然歌い出す。聴いたことも無い歌を。朗々と、玲々と。
「こーよいこなたの いちばんくびは
ひとつひれつな つかいっぱしり
ひめはたすけて おとこはみすて
にかいのおじょうに くびつかまれて
ひどいひどいと なきながら
ひがないちにち さかおとし
くびひとつーめは さーかおーとしー」
凄く楽しそうに、とても無邪気な笑顔で、天野は歌った。
透き通るような声の、物寂しい残響が消える。
「……え? な、なに? 何の歌?」
「ないしょ」
天野手鞠は、そう言って、自らの唇の前に指を1本立てると、童女のように笑った。
どうツッコめと?
予想と理解を越えた事態の数々に、中学生達の対応力は限界を迎えつつあった。
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