碧の街

モンスターラボ

第1話夢の扉

あおまち


白鳥しらとりカイト「また、碧い扉の夢を見た。」

鈴鹿綾瀬すずかあやせ「カイトの夢は何?」

白鳥カイト「、、、無いな。大学行ってる間に、小金こがねを稼ぐ手段を考える。」

鈴鹿綾瀬「そう。でも、人生思い通りに行くことの方が少ないからね。」

白鳥カイト「それは、半端な考えで行動するからじゃないか?」

鈴鹿綾瀬「クスクス(笑)」

白鳥カイト「何だよ」

鈴鹿綾瀬「いや、カイトらしいなと思ってさ。まぁ、稼ぐことがあったら、私にも分けてよね、金は天下の周りものって言うし。」

白鳥カイト「余るほど稼げたらな。」

鈴鹿綾瀬「約束だよ!」


ーーこれが「彼女と交わした最後の言葉だった。鈴鹿綾瀬すずかあやせとは中学の文化祭での演劇練習中に仲良くなった、黒髪の女の子で、時々かけるメガネ姿がとても可愛かった。


そして国立大学の試験が終わり、不合格通知が届いた3月8日。地獄のような気持ちで長尾山ながおやまを散歩していると、妹から『綾瀬あやせが自殺した』との知らせが入った。お通夜で見た綾瀬の姿を前にし、ここに綾瀬はいないんだと実感し、胸がざわざわした。


そして鬱屈した時が流れ4月8日予備校の授業が始まった。



現代文教師の前田大成まえだたいせいは、基本的なことを繰り返し教えるまともな教師だった。「分からない単語は辞書で調べなさい」とか、「答えは傍線の前後にあることが多い」など、あたりまえのことばかりだ。ネットで聞いていた噂とは違い、意外とまともな教師が多かった。しかし、日本史の吉田先生だけがスピリチュアルな教え方を混ぜる例外だった。


その日は午後8時に授業が終わり、満員電車で1時間かけて帰るのが憂鬱だった。だが、それも自分の「みそぎ」の一環いっかんだと思い、覚悟を決めていた。


宝塚たからづか駅で乗り換えの途中。――


白鳥カイト「あの、定期券落としましたよ。」


花澤澪はなざわみお「あ、あ、あ、ありがとうございます、すみません、わざわざ、何とお礼を言ったらいいか、すいません、ありがとうございます。」


見た目は身長150センチぐらいの可愛い茶髪ツインテールで、塾の帰りなのか制服を着ていた。そして、コミュニケーションにはあまり慣れていない感じの印象だ。


花澤澪「あの、前のほうが」


白鳥カイト「前?、、、、うわあああ、ごめん!」


カイトは予備校の帰り際にトイレへ行った際チャックを閉め忘れていたらしい。15分も社会の窓を開けていたと思うと恥ずかしすぎて、この世から消えたかった。


花澤澪「クスクスクス、あの、私たち何だか似てますね」

白鳥カイト「いやあ、似てないよ。チャックと、定期じゃあ、全然違う。」

花澤澪「そんなことないですよ、私定期落としたの5回目ですから。」

白鳥カイト「それは、君の方が凄いね。」

花澤澪「ひどい(笑)。今ちょっとだけ引きました?」

白鳥カイト「ちょっとだけ」


カイトはなんだか、みお綾瀬あやせに似ている感じがした。普段はシャイだが、話始めると饒舌じょうぜつになり、男友達っぽい話し方になるところや、抜けている感じがとても似ていた。もっとこの女の子のことを知りたいと思い、勇気を出して聞いてみた。


白鳥カイト「あのさ、よかったらLINE交換しない?」

花澤澪「ええええええ!?」


澪の目は分かりやすく、泳ぎ始めた。さっきまで、あんな軽快なトークを一緒に交わしていたのに、一歩踏み込むと慌てる感じがとても可愛かった。


花澤澪「じゃあ、少しだけなら、、、」

白鳥カイト「少しだけって(笑)」


その後、彼らはLINEを交換し家に帰った後。そして、寝る前に澪からLINEが来た。


花澤澪「すみません、夜遅くに。今日は、ありがとうございました。」


すると変な顔の枝豆が土下座しているスタンプが送られてきた。


白鳥カイト「わざわざありがとう。変わったスタンプだね(笑)」

花澤澪「このスタンプは友達からのお下がりなんです。」

白鳥カイト「こんな変なスタンプ見たことないよ」

花澤澪「そうですよね、変わった友達なんです、ついこないだ亡くなったんですけどね。」

白鳥カイト「そう、、、なんかごめん。」

花澤澪「いえいえ、気にしないでください。」


カイトは少し気まずく感じたが、その後、澪から驚きの誘いが。


花澤澪「よかったら、来週の土曜日空いてますか?映画のチケットが余ってまして。」


白鳥カイト「レイトショーでも、大丈夫なら」


花澤澪「あ、大丈夫です、じゃあ、来週の土曜日梅田のビッグマン待ち合わせで」


白鳥カイト「うん」


その夜、勉強の疲れもありぐっすり眠りに落ちた。






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