半魔のフェンネル

ひのーね

第1話 私はみんなとは違う

第1話 私はみんなとは違う


ここは魔法が栄える町、チッタ・マジカ。周りを草原に囲まれていて、洋風な家が立ち並んでいる。小さな町だが、大きな魔法学校があり、魔法書目当てに訪れる人も多い。


その町に、一軒だけ、集落から離れた薄汚い小屋があった。その小屋には一人の少女が住んでいた。彼女の名はフェンネル。父親はおらず、母親は幼い頃に病気で亡くした。今は一人で暮らしている。


彼女は半魔だった。


ボロボロの服を着て、決して十分とは言えない食事を食らう毎日。当然魔法学校にも通えず、家の窓から学生を見ては羨む日々。


だが彼女にも楽しみはあった。魔術の練習だ。魔術とは人間の使う『魔法』とは違い、主に魔物が使う術だ。彼女は魔法が使えない代わりに魔術を使うことが出来た。




「おはよう」

声に出したところで応えてくれる者はいない。外に出て魔術の練習を…


変だ。

いつも朝から賑わっている町が異常に静かだ。


私は急いで町に向かった。


誰も外に居ない。皆家の中にいるようだ。


!?


強い魔力反応!魔法学校の方からだ。

そこには大破し、原型を留めていない校舎と…おそらくこの学校の教師だろう。魔物と戦っている。


「君!早く逃げろ!!なぜ外にいる!」


皆家にいたのはこいつのせいか…


「ぐはっ!」

魔物の触手が教師の体を貫いた。


「大丈夫か!?」


「逃げ…ろ」

逃げていいのか!?駄目だろ!戦え!


いつもの練習を思い出すんだ。


「魔術 血花」


辺りに無数の花が咲く。と同時に爆ぜた。


「グアァァァ!?」

魔物が消滅していく。


倒…した?私が?倒せた…のか?


「君、あの小屋の半魔か…」

「そうだが、」


「今まですまなかった!」

「半魔だからといって悪い者だと決めつけていた。反省してる!」


「大声出すな!傷が深い、休んでろ!」

「どっちにしろ私の息は持って数分だ。学校長に話をつけてくる。」

「何の話だよ?」

「君、魔法学校に入れ。君の才能は必ず必要とされる。」


「半魔の私が認められるかよ。」

「少なくとも私は認めている。最初は皆も馴染めないだろうが、そのうち認めてくれるさ。」


「西の国に住む魔王のことを知っているか?魔物のほとんどが魔王を慕っていて、全て魔王の命令の下動いている。」

「つまり魔王を倒せば災いは起きなくなるのだ。君なら魔王を倒せる。」


「魔王を倒せば皆認めてくれるだろう。」

そう言って教師は去っていった。


魔物は倒した。なのにまだ辺りは静かだ。


私はみんなとは違う。

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