暗中模索

@PokiNyan

闇を歩く人

この道を歩いて行って本当にいいのだろうか...


いや、この道を歩こうがどの道を歩こうが結果は変わらないだろう

どうせたどり着く場所は決まっているのだから...



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学校を卒業し、普通の人たちは就職して、恋をして、結婚をして、そして自分の思う幸せの形の人生を歩んでいくのだろう

だけど、私はそういう道を歩むことはできなかった


『双極性感情障害です。』


この一言と私の歩んできた人生はそうなる答えだったのだろう

いつの間にか外に出ることも、人と話すことも普通にできなくなった


「いらっしゃいませ!」

「〇〇点で、〇〇円になります」

「こちらのお品物だと、〇〇円になりますが、よろしいですか?」


「〇〇番の対処受けます」

「〇〇出勤しました。本日もよろしくお願いします」


こうして転々と働く場所を変えては自分の思う仕事ができずに就職しては辞めを繰り返していた


そうして学生生活も終え、大人になった

変わったことといえば特に何も変わらずに

ただ年齢を重ね、いつ役に立つのかわからない知識だけが増えていった


そして働く気力も体力も薄れ家に籠る日々が続いた


「この病気について親に伝えてみたらいいんじゃない?」

この一言が私の一押しになって親に伝えた

『それはどういった病気なの?』『気持ちの問題じゃない?外にでも出て関われる人と関わったら治るんじゃないの?』

そう放たれた言葉はわかっていた


親に自分の言葉では伝えきれないか...病院に付き添いで来てもらってちゃんと教えてもらおう


私は予想してたとことがまるでわかっていたかのように次の歩みを進めた


『家でゴロゴロ引き籠ってるだけだと、怠けてるようにしか見えないよ?少しは家族のために動いてみようよ』

『私からしたらその病気を盾に怠けるだけじゃん、そうしか見えない』


でも、現実は自分の思ってるよりもはるかに残酷で...助けなどないって思い知らされた

いや、今までの自分がしていたことから相応の報いなのだろう...


「料理はできるからできる時に作っておくね」


そう親に伝えた翌日、そこから毎日のように料理をするようになった

どんなに体が重くても、精神が壊れていようがそれを隠してただひたすら与えられた仕事をこなすそんな日常になった


精神安定剤なんてただの飾りなのではないか...と思いながら夕食が終われば飲みつづけ好きだったお酒も飲む頻度を最小限までに抑えるようになった


そうしている日々に自分にとって少しの逃げ道といえば逃げ道なのだがこれを使っていると心が落ち着く


-タバコに手を付けた-


元々肺が人並み健康ではなく、肺炎。喘息を患った自分

本当は吸ってはいけないと教え込まれたものに手を付けた

最初はやっぱり体に合わないと思いすぐにやめた

しかし、タバコの依存性には勝てず今は一日に一箱までとはいかないが一箱の半分を吸うようになっていた

もちろんのことだが親には伝えずに隠れて吸っている。ごみの処理も自分でしている


そんなある日、「今度カラオケに行かない?」

友達からの一通のlineが届いた、最初は行く気などなかったが次いつ会えるかわからないと思うと行ったほうがいいのではないかと思い「いいよ」と答えた


当日朝から夜までのカラオケを楽しんでいた、学生時代から仲がいい友達だからこそ相談もしたりゲームをしたりしている仲だ

「ちょっとタバコ吸ってくるわ」

「お前、タバコ吸わないんじゃなかったのか?」

「そう思ってたけど、最近吸い始めたんだよね~、一本吸ってみる?」

「俺は吸わないよ、なら行ってこ~い」

軽い冗談を交わしつつ笑いながら個室をでて喫煙所に向かった


「だいぶ歌ったな...久しぶりでのどが痛い」


そう思いながらタバコを一本、また一本と吸っていた

そうしている時に...

「お兄さんは何を歌ってるんですか?」

隣で吸っていたお姉さんが聞いてきた

私はびっくりして体がびくっとはねたような気がした

それでも普段の落ち着けを装い

「そうですね、流行りの歌とか、アニソンとか、ボーカロイドとか色々歌ってますよ」

と返した

「そうなんですね、私も同じようなジャンルを歌ってるんですよ」

「話は変わるんですけど、電子なんですね。」

タバコについての話に切り替わった。ちょっと話したくはないがただのそこで会った偶然の他人だ、話しても問題ないだろうと思い返答をした

「そうですね、以前は紙タバコを吸ってたんですけどさすがに実家に帰ってからは匂いでバレたら大変なので電子に切り替えました」

「え!それだと肩身狭くないですか?」

「めっちゃ肩身狭いですよ」

そうお互い笑ったりして少しの時間だが喫煙所での話を楽しんだ


『こういう道を歩んで行ってもいいんだろうな』


私はカラオケを終え、帰り道にそう思いながら足を歩ませた


家につき、いつものようにお風呂などを済ませ素早く自室に籠った

親といる空間はいつの間にか、『楽しい、安心する』から『息苦しい、早く離れて一人になりたい』という気持ちへと変わっていったからだ


そうして自室に戻り、パソコンを立ち上げゲームを始めた

最近、といっても一年は経つがそこで仲良くなった人たちとの交流が楽しく入り浸るように遊んでいる

ここは居心地がいいのだろう、心の底からそう思える

顔は見えないが声やしぐさで色々な会話ができるこの場所ではお互い日々の疲れや愚痴、その時のゲームを楽しむと様々な人たちと会える


そこで出会った同じような人たちと話をしているある日

「本当にこのままでいいのかな...」

そう呟いてしまった

はっと目の前に人がいることに我に返り「冗談だよ、今楽しいから」とかき消そうとした。すると

「別にいいんじゃない?」

と返答がかえってきてそのまま

「親にも伝えてやる事できて今を過ごせてるならいいんじゃない?私はそう思うよ?今まで色々と耐えてきたんでしょ?」

そう言われ、まるで自分の心が見透かされているかのようで少し驚いたがまったくもってその通りだ

小さい頃から親のいいつけを完璧に守り、約束事は必ずこなしていた

自分のやりたいことを抑えてでも親の言うことを守ってきた


「私は色々と反抗して喧嘩とかめっちゃしてきたけど、君の今に置かれている状況でこう過ごしたいって思ってるならそれに正直なってもいいんじゃない?例え親に伝えなくても自分が認めてたらそれ貫いてみようよ!」

ずっと闇の中を歩いている自分に一筋の光が見えたかのように心から温められた気がした

「俺もそう思う」「うんうん、私もいいと思うよ?」

色々な人が自分を肯定してくれる環境に少し涙を浮かべた


そうしていく日々もいいんだろうと自分の中でも思えた


そうしていくある日自分の中で一つ目標ができた

ゲームの中ではあるが自分の一つ他人からしたら小さいかもしれないが一つ目標ができた


【カメラマンになりたい】


こう思った日から自分の中の何かが吹っ切れたかのように動く日々が増えた

自分を撮る、その場所の風景を撮る、他人を撮る

その繰り返しの中で自分の納得いく写真が増えた。


そしてその感覚は少しながら鍛えられていった。

そんなある日とあるネットの友達から

『俺たちの専属でカメラマンやってくれない?』

唐突に伝えられ、すこし考え込んだ

それでも自分の力が誰かの必要となるものになるのなら惜しまずにはいられず

「いいですよ、私で良ければいくらでも撮ります」

そういって私自身のカメラマン活動が本格的に始まった


どんなに暗い道を歩こうが、見えない道を歩もうが

それが行きつく先が決まっていたとしてもそのことから目を離さずに一歩でも半歩でも歩みを進めて自分の中で納得いく人生、道が形成され、その道を歩もうとした自分自身は大きなことを成し遂げたのではないのではないか


他人からは滑稽だと思われようが、自分を貫くことで誰かが感化されて誰かの励みに変わったことがあるとするのならば...それは大きな自分の中での成果ではないか!


そう思いを発信したいと思い小説も書き始め、楽曲作成にも手を付け初心者ながらの力でこの思いを文字にメロディに乗せようと思った


それが私の生き方なのだろう。いや、それが私が思っている生き方だ






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時は進み、今現在自分自身を支えるので精一杯の日々が続いている

しかし、それが時に苦しくてもこの気持ちだけは決して失くさないようにと心に秘め今の現状と戦っている

時には逃げて、時には向き合う

そんな中で自分を形成されているのならこの道を自分なりに進むのも悪くない

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