夜を駆ける

@kawakawatoshitoshi

第1話

 夜の川沿いの土手。

 滲むライトの光。街路灯のライト。車のライト。


 僕は自転車に乗っている。

 行き先は何処でもない。

 ただ持て余す時間と感情を

 押さえきれず、外に飛び出したのだ。


 遠くに大きな煙突が見える。

 とりあえず、そこを目指して自転車を漕ぐ。

 あてもなく。


 夜風が気持ちいい。


 橋を越え、川を渡る。

 暗い道に入る。

 誰にも会わないように。

 誰にも見つからないように。


 そのまま本当は消えてしまいたかった。

 夜の闇に溶けて。


 しかし、背後から来たタクシーのライトに照らされてしまう。


 僕という存在が顕在化する。


 あまりにもいびつで、

 あまりにも無惨な。


 しかし、もうすぐあの煙突の下に着くのだ。


 それが重要だ。













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