異能力を使えるのが残り約1年らしいので、最強を目指そうと思います

第1話 覚醒

人間離れした、非現実的な力…異能力。

この世界は、そんな異能力が

当たり前となった世界である。

これは、最強を諦めた少年、一ノ瀬 氷華いちのせ ひょうか

再度、最強を目指す物語。




「おい!早く病院に!」

「誰か治癒系の異能力者は!」

「どうすんだよこれ!」

「そんなこと知らねぇよ!」

(頭が……痛ぇ、体が動かねぇ……。)

周りの慌ただしい声だけが聞こえる、

俺は直前まで、何をしてた……?

(死ぬのかなぁ……俺。)

薄れゆく意識の中で、そんなことを

考えるのであった。




「一ノ瀬さん!聞こえますかー?」

(……?)

俺は、今どこにいるんだ……?

(……病院?)

少しずつ彩られていく視界の中で、

俺が居る場所は病院であると分かったが

そもそも何故俺はここに居る?

(……!そうだ!街を歩いてたら急に……)

「一ノ瀬さん!」

「あっはい……大丈夫……?です」

正直、大丈夫な訳はないのだが

咄嗟に大丈夫、という言葉が零れてしまった。

「今は混乱していると思うので、あとで親御さんと一緒に……医院長から少し、話があるそうです」

「はい、わかりました。」

(別に大丈夫だと思うんだけど……)

俺が楽観的過ぎるのかもしれないが、

特に外傷がある、といわけでも無さそうだし

それに、今の医学は異能力で発展し過ぎている、

ある程度の怪我なら一瞬で治せるし……。

まぁ、少し違和感はあるか?

でも逆に力が溢れてる感じだしなぁ……。

(てか、なんでやられた?)

自慢でも、慢心していたつもりでもないけど

俺は異能力者の中でも上位の方だ。

結構な有名人……とまではいかなくても

知っている人は多い…ぐらいの異能力者なんだが。

(分かんねぇ……。)

俺を狙ってきた動機、俺を狙う利点、

様々な要素において疑問が多過ぎる

煮え切らないな……こっからどうしt(((

「氷華!大丈夫なの!?」

「母さん、仮にも病人をそんな強く

抱き締めないでくれ、普通に苦しいから」

(来るの早過ぎないか……?)

目の前に立っているのは、一ノ瀬 優衣いちのせ ゆい

俺の母親である。

「お父さんも直ぐ来るから!」

「……仕事を放ったらかしで?」

「そんなの当たり前じゃない!息子優先よ!」

「……、ありがとう」

(社長が仕事を放ったらかしにするのは……)

まぁ、正直宜しくない……が、

息子からしたら嬉しいものである。

「母さん、ありがとね」

「……どうしたの〜?急に」

「別に、特に意味なんて無いよ。」

(……ここ家族にお前も居て欲しかったなぁ)

消えかけていた火が、燃え上がっていくのを

感じる。病院に搬送されたというのに

不思議と悪くない気持ちだった。


この瞬間までは……



「え?」

……俺達は、父さんとも合流して

今は医院長と話しているのだが、

「今……、なんと?」

「ご冗談は……」

「受け止められないものだと思いますが……」

深刻そうに、目の前の医者は

口を開いてその……覆しようがない事実を……

「一ノ瀬 氷華さんの異能力は、

約1年で消失してしまいます。」

残酷に、冷酷に、俺に告げるのだった。

(何言ってんだ……?異能力が、消失する?)

そんなの、聞いたことが無い……。

そんなの、前例がないだろう?

(そんな訳が……無いだろう?)

「今の氷華さんの異能力は、異常です……

通常の異能力を1とするならば、

氷華さんの異能力は10倍近くの出力です。」

「この出力のままだと……負荷がかかり過ぎる」

(なんで……?なんでそんなことになってる?)

「私の異能力で見た範囲だと……約1年で……」

「そんな筈ないだろう!?」

そう言って、俺の父さんは声を荒らげる。

(そうだよ……、おかしいよ、そんな筈ないんだ)

「前例が無いので、あくまでも私の仮説です。

ですが……体が耐えられるとは……」

(絶対おかしい……おかしいんだけど)

自分の体が言ってくるようだった

"おかしくないよ?"

(分かってんだよ……)

分かっていたのかもしれない

医院長が異能力が消失すると言っていた時から

出力が強過ぎると言われた時から……

いや、違和感を感じたときから予兆はあったか?

(こりゃ、おかしいわ)

いつもと今とでは感覚が違い過ぎる……

明らかに、俺の異能力がおかしくなっている。

「……1年は保つんですよね?」

「氷華!?何を言ってる!?」

「氷華!?何を言ってるの!?」

「保つんですよね?」

両親の声を無視し、医院長に問い掛ける。

「……えぇ、1年は、ですが……」

(なら、まだどうにかなるかなぁ……?)

「アイツとの約束、まだ果たせるかなぁ……。」

「氷華……、貴方まさか」

「こんなんになっても、諦められない」

ダッセェな俺、今まで逃げてばっかだったのに

今になって、こんな状態で目指すなんて……。

でも、年齢的には出れるように、ようやくなった

1年あれば、不可能じゃない。

「そうか、頑張れよ」

「……!?お父さん?何言ってるの!?」

涙を流しながら、母さんは俺と向かい合う。

「なんで……2人はそんな冷静なの……?

もう、良いんじゃないの……?

これは貴方の、貴方だけの人生なのよ!?」

「母さん……」

(ごめん、親不孝の息子で……)

でも、それでも、俺は……!

「"異能力がなくなっても"、俺達の息子だ。

その事実は何があっても変わらん!」

「もう……本当に馬鹿ね……

だけど、私達にあれだけ言ったなら

約束、ちゃんと果たさなきゃね?」

「ありがとう……母さん、父さん」

(やっべぇ、泣きそう……)

「待ってろよ、最強の座」

今日は、最悪のカタチで異能力が覚醒した日で、

再度、約束を果たすと、最強に成ると

誓った日である。











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