学校一の女神様が実は歌神である俺の超大ファンでした!!??
カイイロ
第一章
第1話
この学校には、女神様が居る。……いや、本物の神様ではないが、慈愛に溢れ同級生を超え先輩や後輩からも崇拝されるような奴が居るのだ。
名を
まず目につくのはその容姿だろう。まるで妖精の国で生まれたのかと思うほど整った容姿、絹のように艶やかでなめらかな髪。そして、制服で包まれている華奢ながら出るとこはしっかり強調している体つき。
この時点で男子の心は十分に奪いされるのだが、彼女はそれだけでは止まらない。
一言で表すなら、十全十美、だ。テストは常に最上位。帰宅部でありながら陸上部顔負けの脚力に、あらゆるスポーツをこなせる器用さ。それだけでは飽き足らず、性格すらも完璧なのだ。
常に笑顔を崩さず、あらゆる人物にも天使の手を差し伸べる。それが女神、清水桜だ。
創造神話という物語に登場する慈愛の神『ルナ』と同じくらい慈愛に満ちているから女神様と称されるようになったのだとか。
「分かったか?これが女神様なんだよ」
と、熱烈な説明を締めくくる男が一人、俺の目の前に座っていた。
コイツの名は、
気持ち悪いと思ってしまうほど女神様ヲタクであり、俺の数少ない友人だ。
「そうか」
彼の演説は素晴らしいものだったが、生憎と俺は女神様とやらに興味が無いため、こういった薄い反応しかできない。
「はぁ〜……お前、ほんとに男かよ」
誠吾はジトっとした目で睨んでくる。そんな疑いをされても俺は正真正銘の男だ。
「なんなら見せてやろうか?」
「やめろ気持ち悪い」
多様性が認められ、男である証明が難しくなってしまった今の世の中で真実だと認めさせるには、自信を持って相棒を見せることではないだろうか。
犯罪になってしまうのでやりませんけど。
「なんでお前は女神様に興味ねえの?」
と質問を投げつけられるのだが、その疑問は困ってしまう。これといって明確な理由は無いのだ。興味が無いのは、興味が無いから。それ以外に説明ができない。
しかし、強いて理由を上げるとするなら、
「なんか怖ぇじゃん。あの人」
という感じになるだろう。
「女神様が怖い?……目ぇ節穴かお前は」
人間の心を読むという力は無いのだが、今のコイツの心情はハッキリと読み取れる。それくらい分かりやすいほどに「信じられない」という顔をしているのだ。
「や、ちがうんだよ」
彼女が如何に慈悲深いのかは知っているつもりだ。なんたって目の前に女神様ヲタクが居るのだから。
「なんつーかな。得体の知れない怖さっていうのかな。そういうのに近いんだよ」
生物は、初めて見る現象や、謎の存在を恐れる傾向にある。俺が彼女に抱いているのは、その類の恐怖だ。
大半は目の前のヲタクのように違和感を抱かないらしいが、俺は違った。彼女の笑顔が偽りの笑顔で、何かを裏に隠しているような感じがする。だからこそ、得体が知れなくて、怖い。
「やっぱお前ちょっとおかしいよな〜」
これは果たして俺がおかしいのだろうか。
まあ、気にしたところで無駄だろう。と俺は考えて、一度女神様に視線を移動させる。
今は昼放課──愛知県では昼休みのことを昼放課という──であるため、彼女は多くの生徒に囲まれながら昼食を摂っている。
楽しそうな笑顔だが、やはり俺には嘘の笑みを貼り付けているようにしか見えない。
「お近ずきになりたいなぁ。そうだ、今度遊びにでも誘おうぜ」
「却下。誘うなら一人で誘え。俺は行かんぞ」
「ケチだな。お前も仲良くなりたいだろ?」
残念ながら、俺は彼女と仲良くなりたいとは思わない。理由は先程まで語っていた恐怖がひとつ。そしてもう一つ違う理由があるのだが、これはまあ言う必要もないだろう。
「彼女は個々人の遊びには絶対に行かない、と俺に伝えてきたのはお前だろう」
「それはそうなんだけどさぁ……」
諦めの悪い誠吾を放っておいて、俺は朝コンビニに寄って買ったメロンパンにかぶりつくのだった。
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