小5探偵 藤堂桜花の事件簿

青猫あずき

新世界ぴのこ殺人事件(上)

「キャハハ♡  先生の推理おもしろ~い♡  でもザンネーン♡  先生の推理はぜんぜん的外れの無駄撃ち推理♡  真相はも~っと別のところにあるんだなぁ。犯人のレッドヘリングにまんまと引っかかった雑魚推理♡  無意味な知的労働ごくろぉさまッ♡  代わりに私がほんとぉの真相教えちゃいまーす♡」


 殺人事件の現場には似つかわしくない女児の甲高い声が響き、警官と第一発見者の小学校教師が声のほうを振り返る。

 声の主は藤堂とうどう桜花おうか、小学5年生。


「こら、子供が事件現場に入ってくるんじゃあない」


 桜花の担任教師である新戸にいとが怒るが、当の桜花は気にしたそぶりも見せない。


「そんなこと言って~♡ また前みたいに警察の人たちは間違った容疑者さんを逮捕しようとしてるんだけど、私の話ほんとうに聞かなくていいのかなあ?」


「…………ッ!」


 仮に、仮にだが桜花の言うことが本当だったとして無辜の市民を捕まえて真犯人を野放しにするのはマズい。


 どうせ聞くだけならタダだ。

 桜花の言っていることが間違っていそうなら取り合わなければいいだけのこと。

 もし万が一、当たっていたら。

 ちっぽけなプライドと引き換えに冤罪を防ぐことができる。


 溜息をついて、新戸は覚悟を決めた。


「いいだろう。聞いてやる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る