第17話 魔法ギルド③
そして、カウレスから金を受け取ると、カウレスはギルド長室に戻っていった。
「さて、地下に行きますよ。」
「いきなりだな。まあ、やることも終えたし、行くとするか。」
そして、地下へ続く階段を降りて、向かった。そこは、まさしく研究所と言える様相だった。白い研究服を着た男女、何かの液体を入れた試験管、魔法陣や魔術式、色々な魔獣の素材など色々とあった。感慨深く思っていると、どこからか爆発音が聞こえた。
「うわ、何か暴走でもしたのか?」
「あー、またあの子ですか。この前来た時も爆発を起こしていましたからねぇ。」
彼女は原因について心当たりがあるようだ。誰かはわからないが、どういうことかと問おうとした時、黒焦げになった女の子が現れた。
「なんで爆発したんだぁ、理論上はあれで完璧だったのにぃ」
「完璧だと思っても、実際はそうじゃないことが多いですが、いくらなんでも騒ぎをおこしすぎです。今年でもう何回目ですか、ピッケル?」
すると、ピッケルと呼ばれた少女は体についた煤を払いながら弁明するように答えた。
「違うんです、セシリアさん。今回こそは完璧に作れたと思ったんです。必要な魔力量も完全に守りましたし。それに、騒ぎを起こしたといっても、爆発騒ぎは今年で20回目です。実験に失敗はつきものじゃないですか。」
「起こし過ぎです。ここの責任者を出してください。彼に注意と、実験室の使用禁止令を出してください。」
「ええ、そんなぁ。ちょっと爆発しただけじゃないですか。こんなの、魔術や魔法の研究では日常茶飯事じゃないですか。」
「それはそうですが、今の爆発でかなりの備品が壊れたんじゃないですか?」
「ほっほっほ。大丈夫ですよセシリア様。此奴が騒ぎを起こすのには慣れています。大体の備品にはしっかりと防御結界を張っておりますので。」
声のする方を向くと、長い髭のあるじいさんが現れた。髭が気に入っているのか、手で擦りながら歩いてきた。
「ハングドマン、それならいいですが、一度はきっちりとわからせたほうがいいのでは?」
「それをしても無駄だというのはあなたもわかっているでしょう?」
そして、二人は互いにため息をついた。どうやら、このピッケルというものはなかなかどうしてこのギルドのトラブルメイカーらしい。
「そこのお兄さん?なんか僕に失礼なことを考えていませんか?」
「なにも。見たまんまの事実を考えていただけだ。心配するな。」
爆発騒ぎが収まったころ、セシリアはピッケルに事のあらましを詰問していた。
「結局、あなたは何を作ろうとしていたのですか?」
「広範囲に雨を降らす術式。僕の故郷は降雨量が少なく、食べ物が少なかったから。」
「それで、なんで爆発したのですか?」
「調べたところ、術式の構成に多少の綻びが生じた結果、火の雨を降らす術式になっていたようです。」
「それはそれですごいと思うんですけど。一応、そのデータも次に活かせられるよう、保管しておきなさい。ただし、厳重に。帝国や他の国に知られたら、それを奪おうとするでしょうから。」
そのとき、彼女は一瞬物憂げな顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「それはそうと、あなたは?セシリア様とご一緒にいらっしゃるようですが。」
「深淵の大魔女セシリアの助手の、ヴィレ・アズマだ。よろしく。」
「これは親切にどうも。」
そして、私はハングドマンと呼ばれるこの魔法ギルド研究所の責任者と握手をした。
「腕のガッチリとした感じ、身のこなしから見て、武術の心得もあるようだな?」
「おや、わかりますか。あなたもそうみたいですね。」
ここは定番のお互いに握力を図るために、強く握手をしようとしたが、その前にセシリアが私を呼んだ。
「ギル・・・、いえ、ヴィレさん。本来の目的を達成しに行きますよ。」
「ああ。ではここらで失礼する。まあ、あなたとはいつか手合わせをしたいものだが。」
「これは老骨に響きますな。その時はお手柔らかに。奥にご案内します。」
そして、研究所を抜けてさらに下に向かった。
「ハングドマンは一応ここの責任者で本業は魔術なんで乱暴にしてはいけませんよ。」
「わかっているさ。ちなみに、ピッケル君かな?彼はその、男なのか?」
「神眼で把握できるでしょう?」
「初対面の者にそれをするのは、マナー違反だと思ってやめた。」
「変なところで律儀ですね。まあ、彼は男ですよ。しかもあの見た目ですが、もう成人ですよ。」
「なるほど。ちなみに、親しげだったが、彼は君の弟子か?」
「いえ。私の弟弟子です。」
どうやら、彼と彼女の間にも何かあるようだ。ちなみに、彼女の年齢を聞こうと思ったが、どこか寒気を感じたので、聞くのをやめた。
そう話していると、ついに目的地に至った。
「ここですお二方。」
*この世界の成人年齢は十八歳です。
更新が遅れて申し訳ございません。これからも遅れるかもしれませんが、どうか継続して読んでもらえるとうれしいです。
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