第12話 波乱の予感ですか?
〜〜〜〜〜
千葉県南部の港町で産まれた僕には二人の幼馴染が居る
田舎の学校でクラス数が少なかった為か保育園以前からの付き合いになるその二人とは中学卒業までずっと一緒のクラスだった。
その内のひとりは
もう一人は
敦子も活発な子で男勝りなところが女子達にウケて人気者だった。
3人は海と山に挟まれた小さな町を所狭しと駆け回り自由奔放に育った
喘息持ちだった僕は懸命に海斗の後を追い海斗はそんな僕を励まし応援してくれる…
間で観ている敦子はそんな二人を応援し笑い合うとても仲の良い3人組だった。
でも中学校に進んでからだ…僕だけは自由奔放に駆け回るのを辞めてしまった…
中学に入ると海斗はサッカー部に入り敦子は小学校から続けているバレーボール部に入部した
その頃の僕はと言うと持病の喘息が酷くなり運動部への入部は泣く泣く諦めたのだった。
中学二年に進級するとクラス担任の方針から競い合い互いに切磋琢磨するのが目的とクラスを2つの分けたグループで学校行事や諸々の課題に取り組む事となった
偶然とは言え3人組は同じグループになり久し振りに3人揃って何かを出来る事が嬉しかった…
そして僕の予想通りグループは海斗と敦子が皆を纏めて上手く引っ張っていたし僕も力の限り二人のサポートを頑張り順調に…
とても上手くいっていたと思っていた…
春があっと言う間に通り過ぎ季節はジメジメとした梅雨に突入した頃
海斗はサッカー部の2年生で只一人夏の大会に向けたレギュラーに選ばれたのだ!
僕も自分の事の様に喜び帰宅途中に海斗の好きなビックルで乾杯したよ。
敦子の方はと言うとあまり背が高く無いと言う事もありポジションはセッターなのだが3年の先輩からはポジションを奪えなかったらしい
でも顧問やその先輩から次のセッターは敦子だから『頑張れ!』『追いついてこい!』と目をかけられているとの事で毎日必死に頑張っている。
喘息が原因で運動部に入れなかった僕はそんな二人を羨ましく妬んだことも無いとは言えない
でも今では気持ちを切り替えそんな二人を誇らしく思える様になり心底応援しようと思っていた。
ある日課題の為に放課後居残りしトイレから戻った時のことだ
教室に戻ろうとドアの前で立ち止まった時に聴いてしまったクラスメイトがする海斗と敦子への愚痴を…
その内容はリーダー役の海斗と敦子が『部活が忙しいからとグループ課題を疎かにしている』と言う愚痴だったが『それは二人だけの事では無い』と擁護する声もあったし僕も直ぐに入室し二人を擁護しつつ事情を説明した上で『お互いフォローし合って頑張ろう』とその場はなんとか収まった。
僕は二人に話すか迷った…
部活内で必死に頑張っている二人に余計な気を使わせたくないと言う気持と、気の強い二人の事だから要らぬ衝突を起こしても問題だ!
と話すのを躊躇っていたのだが今思えば其れも間違った選択のひとつだったのかも知れない…
〜〜〜〜〜
「で!聴いてんの?トキオ!」
語気を強めた彩乃さんのドアップが眼前に迫っていた!
「おかわり!」
「もぉ其の辺にしといた方が良くないですか?」
月は代わりあっと言う間にGWも過ぎ6月が目前に迫る今日此の頃
普段通りというか通常運転と言うか、今日も『鶏軍曹』で彩乃先輩が酔っ払ている(まぁ来店前から酔ってはいたけど…)
彩乃先輩は以前から銀座でのバイト帰りには鶏軍曹に寄って店長特製のスープを食して帰る
ホステスという仕事は何かと身体を壊しやすい職業なので予防の為に心配する店長が面倒くさがる先輩を説得したらしい…
でも僕は其れを大義に鶏軍曹に立ち寄っては呑み足りなかった分のお酒を補填しに来ているようにしか見えない…
だから先輩が注文しようとしても聴こえないふりをして呑ませないように密かに抵抗したりしている!
「てんちょ!トキオが意地悪する!」
「彩乃ちゃん呑み過ぎは体に毒だよぉ」
常連の松下さんも先輩の身体を気遣って援護してくれる。
「トキオ!今日はもう良いからソイツを頼む!」
「…………」
此処最近では鶏軍曹での追い酒に歯止めの効かなくなった先輩をバイト終わりに自宅へと送る役目が増えました
店長は元から知っていたが僕と先輩が同じアパートに住んでいることが他の常連さん達にバレたのだ!
そんな事が発覚すればお決まりのパターンだ!常連さん達から『夜道を若い娘一人で帰らすな』とか『変質者に襲われたらどうする』等と言う話が持ち上がり店長も折れて僕が早上がりしてでも送り届ける流れとなった…
皆さんの仰ることは間違い無いです…
ただ、先輩は僕なんかよりメッチャ強いんですけどね…
ーーーーー
「トキオ…最近楽しいか?」
「はい…大学でもバイト先でも周りが皆良い人達なので…」
「…そっか!それはなにより!」
帰り道の中間地点に少し広めの児童公園がある
先輩は『ちょっと休憩』と言って其処のベンチに座って『お疲れ〜』と言って缶ジュースをご馳走してくれる
そして何気ない話をしたり聞いたりしてくる…
先輩は学業・生活・雑学等色々な事を学ばせてくれるからありがたい
でもそれ以上にありがたいのは僕が何を思ったか、何を感じたか、どの様にしたいのかを上手く聞き出してくれるのだ。
先輩は僕の事を放っておけ無い弟位に思ってくれているらしい
僕も実際に姉が居て小さな頃からお姉ちゃん子だったのでその扱われ方は特別嫌ではなかった。
只…困ってる事があるんだ…
先輩は時折ただのウザ絡みしてくる酔っ払いのオッサンに化ける…
それともうひとつ…
(…今日はピンクなんだ…)先輩は酔い方が酷い時は部屋に帰らず僕のベッドを占領して寝てしまう…
『階段を上がる気力がない』のと『どうせ朝食を食べに降りてくるんだから』だそうだ。
『せめてパジャマ着て下さい!』と、お願いするのだが先輩は『これがパジャマ!自分の部屋なら上も外す!』と聞いてくれない…
健康的な男子が隣りにいると言うのに…
そんな事を考えながら僕は朝食の用意を始めた『今朝はハムエッグとコンソメで良いや…』と思いつつコンロの火を点ける。
フライパンでハムを両面焼いてから卵を落とした時、「ブーーー!」不意におんぼろアパートの古くさい来客ブザーが鳴った。
時刻は午前9時をまわったから『宅配でもきたのかな?』と玄関のドア越しに応答した。
「朝早くにゴメンね!私だよ!敦子!」
(…敦子がなんで!?)まだ半分寝ていた僕の頭はイッキにフル回転を始める!
…前門の
部屋には焦げたハムエッグの臭いが充満していた…
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