第15話 『置きっぱなしの傘』

終電ギリギリに乗り込んだ時に嫌なものを見たって話です。

走って乱れた呼吸を落ち着かせる為に深呼吸をして、

ふと向かいの席を見たら手すりに傘がぶら下がっているのを見付けました。

濡れた赤い傘でした。


平日の終電だからか車両には私1人。忘れ物かと思ったんですが…

ええ、その日はずっと晴れでした。でもその赤い傘はぐっしょり濡れていて。

いやよく見ると違う。赤い傘じゃなくて、赤い液体で濡れた、白い傘でした。


近づいて見てみたらどう見ても血でした。


「え?事件?」って思って。車掌に知らせようと通報ボタンに手を伸ばしたら


「俺は横にいたから被っただけだよ」


傘の隣にさっきまでいなかったはずの、血塗れの男がいました。


「え!?」


すると男は「君もびしょびしょじゃん」と指を指してきました。

自分の身体を見てみると、いつの間にか真っ赤に染まっていたのです。


「やっぱりさあ、普段から傘は持ってた方がいいよね。

どこで降ってくるかわからないからね」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る