第11話 『浸食されたマンション』

10年前くらいの話で、マンションがおかしくなったって話なんですよ。

いや私が住んでるのじゃなく、隣のがね。

夏からだったかなぁ。隣のマンションの壁に、変な汚れみたいなのが浮かびはじめたんです。


その変な汚れ、マンションの前を通るたびに気になっちゃって。

なんか汚れてる?って気づいてから、いつも汚れ方が違う気がするなって思ってたんですけど、あるときもっと強い違和感を覚えたんです。


いつもの場所のいつもの汚れのはずなんですが、汚れじゃなくなっている気がしたんです。

いえ、濃くなってるとか広がってるとかそういうのじゃなくて、

「少しだけ盛り上がってる」というか…。カサブタみたいに。


ほら・・・カサブタって無性に取りたくなってくるじゃないですか。

それが普通だと思うんですよ。

だからそれを取ろうとしたら、いきなり電話が鳴ったんです。

出てみたら大家でした。

なんだろ?と思うと、今自分がしようとしていることを知ってるように

「治りかけだから、まだ取っちゃダメだよ」って。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る