友達を作りたい僕に、甘えん坊美少女が友達以上を隠して寄ってくる。

蓬 白亜

ぼっちの僕と如月 雫との出会い

 「お前みたいな根暗は一生、ぼっちなんだよ!!」


  僕が小学生のとき、一番仲がいいと思ってた男の子にそう言われた。突然の発言に驚きを隠せない。僕は彼になにかしてしまったのだろうか。どんなに、考えてもその答えは浮かびあがることはなかった。


  僕は、いつもその子の後ろを歩いていた。


 気弱な性格の僕は、中々人に話しかけに行くことが出来なかった……そんなとき、彼が話しかけてくれた。


 最初は戸惑っていた僕を彼は優しくしてくれた。


 周りの人は、友達が何人もいる事のなんて当たり前なのだろう。でも、その時僕の周りには友達なんてものは、いなかった。だからこそ、僕は嬉しかった。彼が、自分にとって初めての友達だっと……そう、思っていたから。


 授業のグループ活動や放課後に遊びに行く時も。彼の後ろをいつもついて行った。


 僕にとっては、彼が特別な存在であり、必要不可欠な人であった。


 でも……ある日突然、彼は僕にこう言った……話しかけてくるなと。


 自分が何かをしてしまったのだろうか?そのような事をした記憶がない僕には「話しかけてくるな」の理由を理解することが出来なかった。


 「なんで……」っと呟いた僕に彼が言ってきた言葉に僕は耳を疑う。


 「お前は俺を目立たせるための、道具でしかなかったんだよね……これっぽっちも、友達なんて思ったことないし。だから、もう関わるのを辞める。分かったならもう俺に話しかけてくるな」


 人というのは、誰にでも優しい人にたいして良い印象を抱くものだろう。周りから見て、いつも一人でいた僕に話している彼は、皆からは紳士にでも見えていたのだろうか。


 いつも僕に向けていた笑顔は本物ではなかった。


 遊んでくれてたのも全ては彼が自分という存在を周りに見て欲しくてやっていた、演技なのだ。


 何故だろうか。彼から告げられても心の中ではそれを信じたくなかった自分がいる。


 それでも、彼にとって僕は物と同類であった。使い終わったら捨てる……それと同じように周りからの評価を上げた今、もう僕はもういらなくなったのだろう。


 最初から友達なんて思っていたのは僕だけだった……。


 僕はその日から何もかもが変わってしまった。クラスの人達の目に僕はどのように映っているのか……そう思った瞬間、他人の目が怖くなる。


 中学になっても、その思い出が僕のトラウマとなり、上手く周りになじめずにずっと一人でいた。


 陰で馬鹿にせれる声も聞こえてくる。


 群れで行動してしまうと、どんな人間も一人でいる人になんだかの感情は抱くのは当然だろう。


 しかし、全員が馬鹿にするような事を思っているとは言えない。中には、純粋に優しい感情をもった人もいたのかもしれない。でも……僕にとってはそれが何よりも怖いことだった。


 また、あの時のような……過去に、起こってしまったことに恐怖を感じるのはよくある事だ。


 どんなに、聞きたくなくても聞こえてしまうこんな辛い日々を僕は過ごしてきた。


 下校後の家では、暗い顔で帰ってくる僕に両親は心配した様子。


 自分が学校で嫌な思いをしながら過ごしているなんて言ってしまったら問題になる……それを、恐れていた。


 受験生になったとき僕は両親に相談し、県外で一人暮らしをさせてもらえないかと頼んだ。


 両親は、「貴方がそれでいいのなら、そうしなさい」と、反対はしなかった。


 流石に驚いてしまう。理由など深く聞かれるもんだと思っていたから。父さんも母さんの承諾に文句を言わず「楽しくやるんだよ」っと一言。


 そして、僕……成瀬東は東京で一人暮らしするために引っ越した。高校では変わるという目標を胸に抱きながら……。


 「ふぁぁ〜〜……昔の夢か」


 僕は頭の上にある目覚ましを止めて、ベットの中で体を伸ばす。少ししてから立ち上がりカーテンを開け暖かい太陽の光を浴びる。ポカポカと照らしてくる太陽が気持ちよすぎる。そんなことを思いながら僕は再びベットにダイブした。


 さすがに学校があるので、そろそろ起きないといけない。二度寝をしてしまったらお終いだ。洗面所に行き鏡を覗く。目の周りがうっすら赤くなっていることに気付いた。


 夢を見て泣いてしまったらしい……高校生にもなってなんて情けない。


 「今となっては、過去の事なのに……」


 そんな事を小声で呟きつつ、学校に行く準備をして僕はマンションを後にした。


 外の空気は気持ちいい。心が浄化されていくようだ……決して、呪われているわけではないけどね。周りに誰もいない中、一人ツッコミして僕は歩き始めた。


 学校に近づくにつれ朝練をする部活の部員達の声が響いてくる。彼らにとっての青春とは部活動を指すのだろうか。僕は、青春なんて言葉が当てはまらない人生を現在進行形で歩んでいる。だからこそ彼らには憧れてしまう。


 僕も部活にはいっていればという思いが、いつも頭をよぎる。


 まずは、「今日こそ誰かに話しかけてみよう!!」と、入学日からずっと自分に掲げている目標を達成しなければならない。とは言っても、入学してから今日まで自分から話しかけたことなんて一度もない。


 話そうとする行動すら起こしていない自分に対して内心、呆れてしまっているのは事実だ。


 ……正直、まだ幼い頃の記憶が邪魔をしてくる。


 周りの目が怖い。


 慣れて、克服していかないといけないのは承知の上だが、分かっていても、どうしても体が話しかけようとするのを拒んでしまう。


 これでは、引つ越して来た意味がなくなってしまうと自分でも分かっている。だが、どんなに自分に言い聞かせても、心のどこかでは幼いときのトラウマとして、朝の夢でも見たことを思い出す。


 果たして。いつになれば、僕に友達ができるのだろうか……。


 いろいろ考えながら歩いていると気づけば教室の前に着いた。


 ドアを開けると、いつも通りの誰もいない、静かな空間が広がっている。決してぼっちの今が、好きな訳ではないが、教室に一人というのは嫌いじゃない。


 僕が教室に入ってから次に入ってくる人までの時間は30分ぐらいは空いている。仮に僕より早く来ている人がいたとしても、朝練を目的とする人達だ。すぐに、教室を出ていってしまう。


 教室の中での現在の状況を僕以外の人に置き換えて考えてみる。普通なら「早く友達が来ないかな〜〜」なんて思い浮かばせながら一人の時間を過ごすのだろうか?……だが、僕にそんな思いはない。


 だっていないし、友達。


 自分の席の方へと僕は向かう。僕の席は窓側の一番後ろだ。物語だど主人公ポジと言えば良いのだろうか。席について僕はいつものように窓を開ける。


 鞄を横にかけ椅子にゆっくり腰を下ろし座り机の上に上半身をだらしなく寝そべらせゆっくりと外の方を眺める。


 「ここから見る景色、いいよな〜〜……」


 「私も同じようなことを、いつも感じております。」


 僕の独り言に続くように後ろから声がした。


 「東くん、おはようございます」


 顔をあげて後ろを向くとらそこにいたのは美少女だった。お世辞抜きで、女神のような存在が自分の後ろに立っている。


 「お、おはよう……ございます」


 僕は驚いた……クラスメイトであり、学校一の美少女と言われている如月雫さんが挨拶してきたことに。てか、来るの早すぎませんか?!


 いつもは、廊下に見えないレッドカーペットが敷かれてあるのだろうか。生徒が皆、道の端に避けてその真ん中を歩きながら登校してくる如月さんがこんな、朝早い時間からいるところなど見たことがない。


 いくら友達がいない僕でも彼女の存在の事は知っている。生徒だけでなく教師たちからの信頼も暑いと噂に聞く。誰もが認める完璧美少女……いや、女神と呼べば良いのだろうか。


 そんな、彼女の席は僕の隣である……が、話したのは入学初日ぐらいで如月さんの方から「宜しくね」と言われた以降は話などしたことがない。そんな如月さんが朝から僕になんの用だと言うのだろうか。


 如月さんは僕を見て笑っている。いくら、係わったことがない人とはいえ、近くでの如月さんのような、容姿端麗な女性を直視しているとだんだんと自分の顔が赤くなってかてしまう。


 それに、気付かれたくない一心で、冷静さを保ちつつ顔を背けた。 しかし如月さんは、顔を背けた僕に優しい笑みを浮かべながら話しかけてくる。


 「東くんは、人と話すのが苦手なんですか?」

 

 学校一の美少女って、超能力も使えるの?

 女神なら、……ありえるのか?

 それって怖過ぎない?!


 図星を突かれた僕の体がビクっと動いたのを見て如月さんはまた静かに笑った。


 そして、彼女は僕に言ってきた。


 「東くん……良かったら私と友達に

なりませんか?」


 


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