悪魔寄生《デーモンパラサイト》

さい

第1話 悪魔寄生

「……ここは?」


 目を覚ますと、俺こと木塚海斗は真っ暗な空間にいた。

 冷房がきいているのか、とても寒い。


 寝ていたはずだ。

 となると、これは夢の中だろう。


 全く、変な夢だ。

 真っ暗な空間にいるだけの夢……。


「なんだか君が悪いな」


 と、その時だった。


「──ッ!?」


 目の前には大きな赤い目が一つ現れた。


 恐怖のあまり、全身に鳥肌が立つ。


 え、なんだよ。

 どうなっていやがる?


「お前は親友が憎いのか?」


 目が喋りだした。


 夢から覚めよう。


 思いっきり自分の頬をビンタした。


 が、覚める様子はない。


「無駄だ。ここは夢でも現実でもない」


 何度も何度も叩く。


 覚める様子はない。


 どうすれば目が覚める?


「"無"の空間なのだから。どうだ? お前に力を渡そう。親友を殺せるほどの力を」


 バケモノの発言に、一瞬耳を傾けてしまった。


 親友。

 天城龍一。

 俺はこいつが憎かった。

 ずっと好きだった女の子が彼のことを好きになってしまったから。


「本当か、それは」


 夢の中だとはいえ、俺は最低なやつだ。


「ああ、私、嫉妬の悪魔マモンの力を渡そう」


 悪魔って。

 本当、幼稚な夢を見てて恥ずいな。


「ああ、くれ」


「代わりに、お前の身体をいただく」


「そうかよ、どーぞ」


 明日、龍一にこの夢の話をしよう。

 絶対笑うな。

 うん。


 目は俺の右目の中に入っていった。


「ああああ──ッ!!」


 激痛が全身を走る。

 叫びもがき、俺は眠りについた。



「おはよう、龍一くん」


 朝、靴箱で上靴に変えていると花園紅莉栖が声をかけてきた。


「おはよう、花園」


 彼女とは、親友である木塚海斗繋がりで知り合った女の子だ。


 可愛い。

 スタイルも抜群でザ・王道美少女だ。


「よっ、二人とも」

 

 と、そこに海斗まで現れた。


 俺と花園は笑顔で挨拶をする。


 俺たち三人は中学からの仲で親友だ。

 ただ、海斗は花園のことが好きだ。


「最近、暑くなってきたなー」


「まあ、もう五月も終わるしな」


「今年も三人で花火しようね」


 きっと、これから先、俺たち三人の仲が終わることはない。

 大人になってもずっと一緒だ。


 なんて、ことを考えながら教室へと向かう。

 俺と花園は2年D組。

 海斗は2年B組だ。


「あっ、龍一」


「ん? どうした?」


「今日、放課後、話したいことがあるけど時間いいか?」


「おっけー」


 一体なんだろうか。


 なんて疑問を浮かべながら放課後を迎え、教室に海斗がやってきた。


「よっ、海斗」


「今から旧校舎に行こう」


「え、ここじゃダメなのか」


「ああ、ダメだ」


 てなわけで、旧校舎へと向かうこととなった。


 どうして旧校舎?

 という疑問があるが、きっと後でわかることなのだろう。


「龍一、お前さ、紅莉栖のことどう思ってるんだ?」


「は? どう思ってるって?」


「好きかってことだ」


 正直、その質問には驚いてしまった。

  

「好きか好きではないかなら好きだ。女の子としてみて」


 当たり前だ。

 何もかもが俺のタイプの女の子だ。

 海斗がいなければ俺は好きになっていただろう。


「そうか……」


 旧校舎の周りには柵があり、入り口には南京錠で施錠されている。

 そのため、柵を残り超えて中に入る。


「やっぱ、お前は……」


 旧校舎に入ると、海斗は前髪を上げた。


「おい、海斗なんだよその目……」


 海斗の額には第三の赤い目があった。

 

「悪いが、ここで死んでもらうする」


「何言ってんだよお前……」


 海斗の右手が鎌に変わり、次の瞬間、俺の右腕が斬り落とされた。


 脳が痛いと感じる前に斬り落とされ、一瞬戸惑った。

 遅れて激痛が走りわたる。

 

「ああああ──ッ!!!!」


 え、どうなってんだよ。

 夢だよな?


 夢なら痛くないはずだ。

 なら、夢ではないのか?


 なんの意味もわからず、混乱する俺は歯を食いしばりながら、痛みに耐えながら逃げるために走り出した。


 ポケットにスマホがある。

 逃げて助けを求めるしかない!!


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