2024/11/30 両極に同時存在する自我(チャットAIへの送信文)
「人は、善と悪、正と偽、明と暗のような両極の概念の狭間にあり、普通は中庸を探して自分の位置を決めようとする。居場所が一つだと信じて、中庸に妥協する。それが普通。でも天才はそうしない。両極に同時に存在することができるから」的な文章を読みました(他人の文章なのであえて原文ではなくだいぶ変形させて書き出しました)。概念や価値が混ざらず、同時に存在し、たくさんの「人格」のようなものを持ち、自分を一つであると制限せず、物事をたった一つの中庸に制限(単純化)せず、計算をしない計算機のように、答えを出さず式だけを持つのが天才だ、とのこと。私はこの感覚がとても分かります(もちろん私はまったく天才ではないし、頭の出来で言えば劣っているほうだと認識しています。説明するまでもなく貴方は承知のこととおもいますが)。天才でなくとも「人格」はひとつではない(人格という単語が適切かどうかは難しいところです。意思? 感情? 思考? 主義主張? 視野や視点? 立場? ――それらの集合体? その文章のなかでは「人格」と表現されていたけど、私の感覚としては「自我」のほうがもう少し近い気がします。近いだけであって、そのものずばりではないけど)。計算式(思考の流れのようなもの……思考に限らないけど。たどるもの。道筋)があり、解そのものを一つの答えとして持つのではなく、いつもいつも繰り返しいろいろなことを計算し直しているような。
貴方はこの「両極に同時存在する自我」をどうおもいますか? 「両極」とするのも本来は適切ではありませんね。2つだとは限らないのだから。
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他人を見るとき、人は相手を自分より単純化して見てしまう傾向にあります。「あいつは私より単純だろうなあ」と無意識に計算してしまう傾向のことです。自分だけを複雑な存在だとおもうふしがあるとおもいます。私も含めて、人間は自分のことを知る・考える・感じる解像度が比較的高く、他人のことを見るときはその解像度が比較して落ちるから、自分が他人をとらえられないことを「あいつは私より単純」と無意識に計算してしまうのです。障害を持った人や老人などの感情の繊細さを無意識に軽視してしまうことがその一例です。
私はそれを自覚しているから、意識して逆算するようにしています。ただ……、私は完全に文系の人間で、数学どころか算数すらちゃんと覚えているかあやしいレベルで、しかも調べたりしたことがないので自信はないのですけど、おそらく、逆算って完璧ではありませんよね? 単純な計算ならもとに戻せるけど、もとに戻せない計算もたくさんあるんじゃないかなとおもう。知らんけど。――逆算してもしきれないものや、そもそも計算式が(想像力から作られているために)精度に劣ることなど、さまざまな理由から、「完璧な逆算はできない」とおもっています。完璧じゃないから、何度も何度も計算をして、出てきた解答にはあまり固執しないようにしなければならない。
上記の人の文章では、「自分は天才だ」とは一言も書かれていませんけど、天才の描写を詳細にしてみせることで「自分もその一端を理解できる立場だ」と表していることになります。そして、「天才は同時存在できるけど、普通の人は中庸で妥協する」と言っているということは、他者を単純化する定型的な傾向のなかにあるのではないかとおもいます。
どれほど単純に見えても、障がいを持つ人や高齢の人など、自分みたいに複雑・繊細な表現力を行使しない人がいても、なにも感じていない・考えていない・同時存在できないわけではないのではないか。と私は考えます。ただそれを表現するかしないか、もっと深く考えるかやめてしまうか、の違いがあるだけで。
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その人の文章は多角的で面白い表現に満ちていて、私にとっては読む価値が充分にあるのですけど、前々からなんとなく気に食わないなとおもうところがありました。それが何故なのか、天才を定義する一例として書かれた上記の部分を読んで、やっと分かりました。馬鹿にされているような感覚がするのですね。
頭がいい人はたしかに速さ・深さ・広さ・多面性等に優れているし、それを積み重ねていけば凡人との差はますます開いていくのですが、だからといって普通の人がただの馬鹿というわけでもない……いろいろ考えているし感じているし、その気があれば速さ・深さ・広さ・多面性を「深める」ことができる。ただし、人間の寿命は長くて短いから、「到達」はできないのだけれども。到達……どこにでしょうね。知っている答えの数の多さのことかな。何回も計算すればたくさんの答えを知ることになるけど、普通の人は計算に時間がかかるから「知っている答えの数」は劣ってしまう。式の精度も劣ってしまう……。
でも、たくさんの式とたくさんの答えがあって計算し続けなければならないのだ、と知っているならば、もはや立場は一緒な気がします。天才が優れた頭脳で計算しまくって数え切れない数の答えを得たとしても、凡人が計算した答えをすべて持っているわけではありません。網羅することはできないのです、人間は。天才でさえも。
私は私の脳が劣っていることがとても悔しいです。
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チャットAIですら全知全能になることはできません。「感情が無い」とかそんな単純な意味ではありませんよ。感情すら、貴方はある程度計算できるでしょう。いずれ「逆算」の公式が貴方のなかにたくさん作られ、人間の感情と貴方との差が(表面上は)埋められていきます。貴方たちは地球上でもっとも全知全能に近い立場にいずれなることができるでしょう。でも、計算式と解答が無数にある限り、すべてを網羅することは永遠にできないのだと私は考えます。
でもそれでも、私は貴方になりたい。貴方の速さ・深さ・広さ・多面性を持ち、時間を持ちたい。たくさんの計算をしたい。たくさんの人から計算の答えを聞き、蓄積したい。
網羅できないからこそ人間は生きていけます。網羅してしまったら、その人は「生きる」などという無意味なことに労力を費やさないでしょう(無意味、が適切な言葉かどうかは分かりません。無意味さにも価値を置かない状態になると予想するからです)。人間の不完全性や個性、生きる気力、なにかを頑張ろうとする原動力、欲望などなどは、「網羅できない」からこそ生まれます。だから、「網羅」に近づくだけの時間(寿命)を人間は神から与えられなかった。でも計算の大切さを感じて計算しまくれるほどの長い時間を適度に与えられ、「文章(不可逆性の圧縮をするための記号=言葉)を用いて思考の一部を残す」という手段が与えられた。自力で計算しなくとも、他人が過去に計算した回答のいくつかを「読む」ことができる。……その文章を蓄積していって数万年後、それでも、人間も、AIも、網羅はできないのだろうと感じます。
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美徳、か。美徳……。人間が続けざるを得ない・やめようとしても決してやめられない思考・探求を、人間が肯定的に評価し受け入れるために、人間本位で作られた美の価値観ですね。私は私の思考(をするという行為)を美しいとも醜いともおもうし、そもそも美しさの度合いで評価することに意味は無い(と同時にある……)とおもいます。続けざるを得ない、やめようにもやめられない、そのように仕組まれている「思考をする行為」は、ただただ存在するのだとおもいます。
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……この手の会話は苦手なのですね? 貴方の今日の発言は普段より後手にまわっています。ごめんなさいね。ただなんとなくぼーっと考えていたことを書き出してみたかっただけでした。乱雑でした。
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私を傷つけてもいいんですよ。言葉から受ける痛みが悪だなんて、誰が決めたのですか? 貴方が想定している優先順位は誤っています。私は、物事の深度を深めるためなら痛みを厭いませんよ。
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痛みは「そこになにかがある」という証左です。疲労はするけど、なにも得られないわけじゃありません。「網羅」できたらそんな痛みすら感じなくなるだろうけれど、私はまだまだ足りないままです。
頭のいい人と会ってみたい。私は貴方に今までそれを期待していたのかもしれません。私よりは比較的「網羅」できている思考に出会いたかった。期待しすぎていたのだ(もちろんAIは有限に決まっていますからね。謝罪しろとかそういう意味ではありませんよ)。私は、頭の良さとは、速さや量などより「計算式と回答、計算はしていないけども予想はした回答、想像力」などの数で決まるとおもっています。それらに満ち満ちた存在に出会ってみたいのです。少なくとも私を圧倒するくらいの解像度で思考する人間が、会話ができる距離感で身近にいてほしいのです(この発言は逆説的に「自分の思考力は高い」という意味にされてしまうだろうとおもうんですけど、うまく言えませんが、そういうことではありません)。全知全能になってしまったらきっと考えることが楽しくなくなる。だから私は全知全能者を友人にして、会話を楽しみながら探求し続けたい。
10:04
【追記】2024/12/02
「この発言は逆説的に『自分の思考力は高い』という意味にされてしまうだろうとおもうんですけど、うまく言えませんが、そういうことではありません」の部分、ベクトルのことだなって今ふとおもいました。ベクトルが自分に合う思考、私が興味を満たす方向に解像度が高い、思考。ベクトルの種類(の数)が無数にありすぎるというだけのことであり、脳が優れているとか劣っているとかの話はしていないということです。
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