とある国の 第一章 カイガの街へ
第三話 カイガの街と2人の芸術
とある国の現状について理解した彼は、王という陳腐な夢の実現に向けて計画をたてたのえ。5つの島からなるこの国の南側の王、すなわちサイショ王を味方につけようと考えたのえ。北の王であるクロテノージ王は、国民に対しひどい仕打ちをしているためにその王を除かなければならないという結論え。
孤独な彼はそれらの計画を自分一人で行えると意気込んでいる。「まずはここから南、カイガの街へ向かおう。」と、とある人物はぽつりと言い歩き始めます。この国では様々な文化、芸術、技術といったモノたちが入り乱れており、閉鎖的な国ならではの発展を遂げてきました。彼が最初に向かったカイガの街では、有名な絵の専門家が活動をしています。彼の計画では、文化に関心を寄せるツヨシモ王を味方につけるために、各分野の専門家を仲間にするというものでした。
彼の長い旅の始まりは、暗い青が明るくなる前、温かさもなく静かな時でした。舗装されたきれいな道は、彼の自信を表しているようです。太陽を3つ数えたころ、道のそばに小さな露店が見えてきました。その佇まいはたいそうひどく、大概の人間は近づくこともままならないほどにボロボロでした。彼はその露店に興味を持ち、立ち寄ってみることにしました。
「旅のお方とは珍しい。なにかかって言ってはいかがかな?」と露店の店主が問いかけてきます。「わたしは、この先にあるカイガの街を目指しているモノです。そこに住む絵の専門家について、何かご存じではないでしょうか。」と彼が問うと、「買い物もせず質問か。いいだろう、奴の名はペイン。十八そこらの女さ。」と答えます。ばつが悪そうに「ありがとうございます。では、この店舗で一番歴史の古い品をいただけますでしょうか。」と彼は言いました。
露店の奥から、そのみずぼらしく汚い佇まいからは想像できないほどの光沢をもった一枚の金貨が出てきました。その金貨の作りは、一般の人々が使うような合金製ではなく、表面の彫刻も精巧なモノでした。「それは最後の一枚だ。物々交換といこう。」と露店の店主は言います。しかし、彼は何も持っていません。彼が持っているのは一冊の本です。この本の題名は「文化の根」というものであり、彼が長く愛読している大切な本でした。露店の店主はその本と交換しようと交渉してきた。
「この金貨はそれほど特別なものなのでしょう。私の大切なこの本と交換いたしましょう。」
彼は、長い旅の数少ない持ち物に選んだその本を一枚の金貨と交換しました。
金貨を手にしてから太陽を4つ数えたころ、道の先には一つの街が見えてきました。その町の名は「カイガ」といいます。彼は長い旅の一部を終わらせるため、この町へ入っていった。カイガの街は、絵や色彩に長ける街です。
「この国のどこかに、ペインという絵の専門家がいるはずです。捜索を開始いたしましょう。」と彼は言い、街中を歩き始める。彼が街に入って最初の曲がり角を右に曲がった時、正面に人の塊があることに気が付きました。
「やっぱりペインさんの絵は人の心を惹きつける魅力があるよな。」と街の人たちが話しているものですから、彼はその中心に彼女がいると確信しました。人をかき分けその中心へ向かってみると、大きな紙に向かって色のついた水をつけていく一人の女性がいました。真っ白な世界は、彼女の手によって瞬く間に彩を持ちます。
作り出された絵に魅了されているうちに、彼女はどこかへ去ってしまいました。慌てた彼は、街の人たちにペインの居場所を聞きます。街の人々は口をそろえてこう言います。「あのお方はこの街一番のお金持ちさ。」
彼は困惑しましたが、それはすぐに解消されました。なぜならば、この街で一番豪華な建物が目についたからです。その建物は、三角の瓦屋根に煙突が一つついた大きなものであり、周りの家と比べて2つほど大きな作りとなっています。建物の扉の前に立つと、地面が色鮮やかであり、彼女の家であると言っていた。彼は3回ほど扉をたたいた。「ペインさん、ペインさん。あなたに会いに来ました。」
地面にいたアリが塀の上にまで登ってきたころ、ようやく扉が開きました。「名乗りもせずいきなりどなた?」と至極まっとうなことを言われ、彼は困った表情を浮かべる。「わ、私はとある場所から来たモノです。南の王、サイショ王を味方につけ、北のクロノテージ王を除くため、あなたの類まれなる絵の才能が必要なのです。」と彼は、おそろしく丁寧なあいさつを交わした。
彼女は驚いた。なぜならば、彼女も同じような策を建てていたためである。しかし、見ず知らずのいきなり出てきたモノについていくということは彼女には癪なことでした。「おどろいた。私も同じこと考えてたのよ。でもさあ、私が付いていく必要は?あなたが付いてくればいいじゃない。」とペインは疑問を投げかけた。彼はペインのもつ絵の才能が、芸術に興味を持つ南の王に効果的であるだろうという考えを話した。すると彼女は「じゃあ私についてくればいいのよ。わるいけど私はこのまま王の元へ向かうわ。」といった。
彼の計画では、ペインだけでなく他の才能を持つ者たちを味方につける必要があると考えていたため、その提案に賛成はできなかった。「私はあなたの意見に賛同はできません。しかしながら過程が同じであるため、ともに旅することが良いと考えます。」と彼は言い放った。
その言葉に怒りを覚えたペインは、とある条件を提示した。「あなたの持つその金貨と、私の才能を賭けて、勝負しましょう。」彼は、その条件をすぐに吞んだ。勝負の内容は、両者が一枚ずつ絵を描き、街の人々にどちらの絵が良いかを選んでもらうというものであった。彼は、絵の才能があるペインに勝てるはずがないと思った。それは彼女も同じであった。
勝負が始まった。誰もが想像するように、ペインは軽快な動きで絵を作り上げていく。一方で彼は、何を書こうかを悩んでいた。その後もペインは彼女の絵の理論に元図いて絵を作り上げていく。彼は、ふと過去に読んだ本の内容を思い出した。
「絵というものは理論だけではない。絵というものは、その人物の感情を映し出す鏡である。」という文章は、「文化の根」の絵画の章に書かれていた分である。彼はこの言葉の意味について実際のところ深く理解していませんでした。しかし、今この瞬間は違います。
「絵というものは、その人物の感情を映し出すもの。鏡。」彼は彼なりに、絵に対する理解を持ちました。そうして完成した絵には、この街の景色とペインの姿が描かれたものになりました。
彼とペインは同時に絵を完成させました。勝負前と変わらず、ペインや街の人々は彼女の勝利を確信していました。実際のところ、彼女の完成させた絵は完璧といえるものでした。質の良さだけでなく、視界の誘導といった理論についても正しい物であったといえます。
街の人々は投票をします。ペインは、この街の全体が変化するのを感じました。「なんでよ。」と彼女は落胆した。彼女の前には票が一つしか入っていないのです。街の人々は彼の絵をたいそう気に入りました。「絵は感情を映し出す鏡なんだと気づかされたんだ。」と彼が言う。続けて彼は絵に何かを書き足した。
「私は絵の才能が優れているわけではありませんでした。それは今もそうです。ですが、絵というものの良さを理解することができました。この勝負では私が勝ちましたが、あなたの才能を奪うものではないということです。」と彼は言います。ペインは質問をしました。「最後に書き足したのは?」すると彼はペインの前を指さします。「私が見たこの街をきれいに写し出しただけです。」と言いました。ペインの前には、古くから彼女の絵を気に入っていた少年が立っていました。
ペインとの勝負は彼が勝利する形で幕を閉じた。ペインもまた、自分の才能を誇示するために絵を描いていたと気づかされ、彼についていくことに決めました。
互いに身支度を済ませ、また長い旅を進めるためにカイガの街をあとにしました。次に向かう先は、ここから西の都、「コクチョウ」です。
カイガの街を出て最初の夜。ペインと彼は軽く会話を交わします。
「まさか私が負けちゃうなんてね。」とペインが言うと、続けて「そういえばさ、あなたの名前はなんていうの?」と聞きました。
彼は答えました。「私の名前はアルトと申します。とある国の住民です。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます