「そんな困ったような顔しないでくださいよ。別に、付き合ってほしいとか、そういうつもりはありませんから。ただ、自分の気持ちを伝えるなら今しかないって、そう思っただけです」


「そ、そうなんだ……あ、ありがとう。その気持ちは凄く嬉しいよ。でも、ごめん。私と君とじゃ……」


「言わないでください」


「え?」




 彼のその一言に、私は首を傾げる。


 言葉の真意が分からなかった。


 “言わないでください”とは、一体どういう意味なのだろうか。




「分かってます。教師と生徒じゃ、どう足掻いても俺が望む関係にはなれないって。それくらいの常識はあるし、弁えてるつもりです」


「そ、そっか……そ、そうだよね。じゃあ、これからも変わらず、生徒と教師という関係性を……」


「だから、この想いは未来に託そうと思います」




 私の問いかけに、彼は整然とした態度で答えた。


 一度、理解しかけた彼の言葉。


 けれど、すぐにまた分からなくなって、私はまた首を傾げた。


 問いかける声にすら、疑念が顔を覗かせてしまう。




「……未来に、託す?」


「はい。1年半後、俺がこの学校を卒業して、生徒という立場ではなくなった時、もう一度先生に告白しようと思います。だから……」




 すると、彼は一瞬逡巡した後に、決意の瞳を私に向けて、言った。




「だから、どうすれば先生に好きになってもらえるか、これから教えてもらえませんか?」


「えぇ……」

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