君に私はまだ早い!!~保健室の先生として働いている私なのですが、まるでラブコメの主人公の如くモテまくる男子生徒に言い寄られて困っています。私は一体どうしたらいいのでしょうか?~

村木友静

プロローグ

「先生です」


「……え?」


「だから、先生です」


「えっと……それは……どういう意味?」


「どうもこうも、そのままの意味です。俺が好きなのは、桜庭先生です」




 放課後の、寂しい雰囲気が立ち込め始めた校舎のある一室。


 部活で掌の皮を擦りむいたという生徒の治療がてら、何気ない世間話に花を咲かせていたつもりだった。


 ほんの出来心、ちょっとからかってみようかなみたいな、そんな軽い気持ちのはずだったのに……


 今、真剣な瞳でこちらを見つめる男の子は、いや、“七月剣ななつきつるぎ”君は、よくケガをして保健室に来る、いわば常連さんみたいな存在の生徒だ。


 度々話をするうちに打ち解け、“仲良し”だと、私が一方的にそう思い込んでいた。


 まるで年の離れた弟みたいだと、そんな感情を、彼に対して勝手に抱いていた。


 だから、今日だって何気ない会話でもしようと、生徒ととの触れ合いを楽しもうと、そんな軽い気持ちで、「七月君は好きな子とかいないの?」なんて聞いてしまったのが良くなかったのかもしれない。


 目の前にいる、幼いながらも爽やかで、子供でも大人でもない不思議な年代の、それでいて傷つきやすく多感な時期の男の子から発せられたその言葉に、私は何も言えなくなってしまった。


 彼が、そんな風に私の事を思っていただなんて……


 まさに、青天の霹靂だった。

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