第07話 常連客の皆さん

 日差しの中を歩いて、ようやく喫茶 めいどお店まで戻ってきた。


 いとか先輩が扉を開けて「戻りました~」と言いながら中に入っていく、


 私も「同じく戻りました」と言いながら中へ入る。



 店内は涼しい。

 賑やかな声が聞こえる。


 そして、その声はすぐに私達に反応した。


「いとかちゃんにしきちゃん!お帰り~!」

「いなくて寂しかったわ~!」


 私達にそう声をかけてくれたのは、扉に近い席に座っている常連客のお婆ちゃん2人。

 名前は連川つれかわ 京子きょうこさんと角谷すみや 順子じゅんこさん。

 よく喫茶 めいどお店に来て、お茶をしてお喋りしている。

 何でもお茶のみ友達なんだとか。


「京子さんと順子さん!今日も来てくれてどうも~」


 いとか先輩が愛想よくそう返す。

 いとか先輩は金のメッシュで怖そうに見えるけど、仲の良い人にはとても優しくしてくれる。


「今日もまた猫探ししてたんか」


 そう声をかけてきたのは新聞を読んでいるお爺ちゃん。

 名前は常松とこまつ しげるさん。

 茂さんも常連客。

 何でもうちのコーヒーが好きだとか。


 今度は私が「今日は本当に猫探しでした」と答える。


「ほんと!?どんな猫!?」

「沙良。まだ今日の分の宿題終わってないでしょ」

「いいじゃんちょっとぐらい!休憩休憩!」


 そんな会話をしているのは岳野たけの 沙良さらちゃんと生田いくた 桃音ももねちゃん。中学2年生。


 この2人は常連って程の頻度じゃないけど、たまに遊びに来る。

 今日は久しぶりの来店。


 今は…宿題してるのかな。


「茶色い子猫。可愛かったよ~!抱っこしてきたし!」


 いとか先輩が2人にそう返す。

 すると2人は「いいな~!」と声を揃えて羨ましそうに言った。


 そこに「今日は早く終わったんだね」と少し疲れたような男の人の声が飛んできた。

 厨房から喫茶 めいどお店の制服を着た男性が出てきた。


 店長だ。

 名前は永留ながとめ 幸生ゆきお


 年齢は…聞いてないけど、多分30代前後のはず。


 ちなみに、うちは女性はメイド服だけど店長は一般的なカフェの制服。

 何で私達だけがメイド服で店長は執事服じゃないのか。

 その理由は知らない。


「あ、店長!お疲れ様で~す」


 いとか先輩がそう返事をする。

 そして常連客の皆さんに「ちょっと行ってくるね」と言って厨房の方へ移動する。

 私もそれに続く。


 私は店長の前で「お疲れ様です。今日はありがとうございました」と頭を軽く下げる。


 すると「いやいや、僕が店長だから…」と返してきた。


 そこに奥から「お帰り2人とも。お疲れ様」と言いながらみな先輩も出てきた。


「みな姉もお疲れ~」

「お疲れ様です」

「帰ってきて早々で悪いけど、手伝うつもりなら着替えてきてくれる?

 店長、昼間に頑張ってくれたから休憩させてあげたいの」

「は~い」「わかりました」

「あ、でも2人も疲れてるでしょ。今空いてるから、少し休んでからでもいいわよ」


 その言葉で私は振り返って店内を見渡す。


 賑やかだけど、常連客の皆さんしかいない。

 確かに今は少し暇かも。


 でもいつ、お客さんが増えるかわからない。

 今日は休日で今は夕方。

 いきなり人が増えてもおかしくない。


 私がそう考えていると、いとか先輩が先に口を開いた。


「まぁでもいつお客さん来るかわからないし、すぐ着替えてくる」

「ですね。自分の部屋にいても暇ですし。着替えてきます」


 いとか先輩と私はそう返事して店の出入り口へ向かう。


 その背中を見た沙良ちゃんが「え、いとかさんとしきさん帰っちゃうの!?」と言った。


 沙良ちゃんと桃音ちゃんは中学生。私達は高校生。

 年齢が近いからか話しやすいらしい。

 お店に来てくれて、私達の手が空いているときはよく話しかけてくる。


 …まぁ、私達は死んだ時から年齢が止まってるんだけど。


「着替えてくるだけだからすぐ戻って来るって。あ、その間に宿題進めとけよ~?」


 いとか先輩がそう返すと、2人は「はぁ~い」と返事をした。



 そして私達は店の外に出て、居住スペースに続く階段を上がる。




 こうして、また喫茶店の店員としての仕事が始まる。

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