第123話
現実の世に恋は数多くあれど、それを経て愛に達するものはほとんどいない。
愛情とは与えるだけ、守るだけの行為だからだ。
命を懸けて我が子を守る野生動物・・・そこには打算などない。
愛情とは単純だ。
それゆえ知恵や欲望を得過ぎた人間という存在には、とても難しい。
人生の終わりが見え始めた今になって、私はユキとの出会いによって、ユキに対し、人並に優しい人間になってみたいと思った。
それはユキに振り向いて欲しい、好きになって欲しいという気持ちではなく、私がどこまでユキの心に対し、求めず、優しさを与えられるか・・・という戦いだ。
非常にカッコつけた言い方になるが、そのくらいの覚悟が無ければ、ユキの美貌に男の欲が湧き、結局は男女の色恋の気持ちでユキを見てしまうからだ。
そもそも、私は優しさというものを、人にどうやって与えるのか、知らない。
そんな男が、こんなことを書いている自体が滑稽なのだろう。
以前の私なら、考えられない。
だが、死ぬまでに、一度くらい、こういう無謀な試みに挑戦するのも、悪くない。
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