第61話

大昔、銀河鉄道999というアニメがあった。

ヒロインのメーテルは、それはもう神秘的で美しい女性だった。

美しい女性への幻想を抱かせるに十分だった。


私はそのマンガの世界だと、大山トチローにそっくりだ。

しかも、何の才能もなく、ハーロックとの友情もない。

・・・あ、もっと毛が薄かった。


これが現実だ。


そういえばユキは、メーテルのコスプレをしたら似合うと思う。

本当に困るよな・・・。


現実に生きる人間は、きれいごとや神秘さだけでは生きて行けない。

この歳になると、それがよく分かる。

いくら、モテなくてもね。


美しい女性が、男性から美しいと言われた時、その男性がちゃんとした、イケメンのいいヤツであればあるほど、その女性は、きっと朝起きがけだとか、休日の家で無防備に過ごす日常の姿や、困りごとで苦心する姿を見られたら、その幻想は消えるよと、哀し気に思うかもしれない。


でもそりゃ、あたりまえだ。

同じ人間なのだから。


私のような非イケメンの古狸の場合、モテなくて女性経験はほぼ無いけど、一周回って、現実の女性のリアルな生活をとおして、それが美しいと思えるくらいは変態だ。


億が一、ユキと暮らしても、リアルな日常は、

多分、ダラダラしてないで、さっさと会社に行け!とか叱られるんだろうな。

・・・月曜日の朝とかは、憂鬱だろう。



いちおう言っておこう。


一度守ると言ったからには、それも覚悟のうえだ。

それが普通の幸せの形なのだと思う。

それを守るのが、普通の男だ。

私は普通以下だが、その気持ちになんとか辿り着けたから、そう書いた。




そういえば、

そのアニメの、ハーロックとかいう男のセリフを覚えている。


  男は、負けると分かっていても

  戦わなければならないときがある。


いいじゃねぇか! 上等だぜ!






仔犬のように臆病で弱い私は、そんなことを思った。

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