転生したので魔王5体ほど倒します

炎木神奈

蒸発死→転生

 日本の首都東京に核が落とされた。


 記録:2018年3月3日13時

 

 何の変哲もない公園。無邪気に遊ぶ子どもたち。ベンチでイチャイチャするカップル。犬の散歩で池の周りを歩いている人。鳩に餌を与えているご老人。

 部活でランニングを行っている中高生。カァーカァーと鳴いては飛び立っていくカラス。ブロロとエンジン音を鳴らして走る車やバイク。

 何の変哲もない日常。静かで平穏。だけどそれが良い。

 容姿淡麗でもなく、頭脳明晰でもない平凡な男。僕、明輝薫 (16) 高校生。

 

 「はぁ……日本は豊かで平和だなぁ」


 ニュースをつければ他国との揉め事、犯罪、強盗、平穏とは言えないものばかり。

 だけど実際に外へ出てみると、案外そんな野蛮なものはない。

 こんなことを言うとよく『裏社会では――』とかなんとか言ってるけど、

 僕が見ているのは裏ではなく表の方だ。裏ではどんなに殺伐としていても、

 表では平和であればそれで良い。

 無責任? そんなの国民みんなに言えることじゃないか。今更個人に言ってもね。

 

 不意にブワァと風が吹き、草木が揺れて葉っぱが宙に舞った。

 すると公園に設置してある防災スピーカーからJアラートが鳴り響いた。

 公園にいる人達は突然のことで唖然としている。


 「これは……」

 

 僕は嫌な予感がして、ポケットからスマホを取り出した。

 すぐさまネットニュースを開いて状況を確認する。

 よく『スマホを見る前に逃げろ』とか言うが、人間は状況がわからないと行動できないのだ。だからそんなことを言われても……ということだ。

 

 ネットニュースを見ると、隣国から核兵器が発射されたらしい。

 軌道的には日本のEEZに墜ちるみたいだけど……

 万が一があるもんね。

 

 周りを見渡すと、みんなスマホを見て不満や不安を口にしている。

 人間は確か、集団でなければ自信を持てずに行動ができないんだっけ。

 

 「みなさん! 早く近くの地下シェルターへ行きましょう!」

 

 僕は仕方なく、公園にいる人全員に向けて大声で叫んだ。

 みんな一度は僕の方に顔を向けたが、聞こえてくるのは『そんな大げさなw』などの状況を理解していない発言が多数。

 

 「知らないからな……!」


 全員を説得している時間はないと判断し、僕は一人で地下シェルターのある

 方向へ駆け出した。

 核兵器は最低でも半径600kmに影響を及ぼす! だけどそれがわかったところで無駄だ! 半径600kmなんて今から移動しても間に合わない!

 なら地下シェルターまで一直線だ! 

 地下シェルターに行ったとしても生き残る可能性はない!

 けど、行かないよりかはマシだ!

 

 駆け出してから約28分。

 ようやく地下シェルターへの道を案内している人のところまでやってきた。

 どうやらJアラートを信じてここまで来た人は少ないようだ。

 

 「おい! あれ!」

 

 集まっていた人の一人が、空を指さして叫んだ。

 周囲の人もそれにつられて空を見た。僕も立ち止まって空を見てしまった。

 薄っすらと豆粒のような黒いものが飛んできている。

 これは間違いない……核だ。

 

 「あっ――」


 僕が声を出そうとした瞬間、その黒いものは爆裂した。

 

 その光景を見た直後、僕は暗い闇の中へ誘われていった。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る