落し物
天川裕司
落し物
タイトル:落し物
道を歩いてると、携帯電話が落ちていた。
「……」
なにげに拾った私。
まだ新品だ。
拾った直後、電話が鳴った。
「えっ?」と思って出てみると、
「あ、すみません、その携帯拾われた方ですか?」
「…は?あ、いや、そうです今ここで拾ったんですけど…」
「よかった、電話かけてみて」
「え?もしかして持ち主の方?」
「あ、そうです」
少し耳から携帯を離して画面を見ると、
なるほど家からの固定電話。
「ああ…」
なるほどと言う前に彼は、
「今日、帰りに落としちゃったみたいで」
「あ、そうだったんですね」
「急に電話してすみません」
「あ、いえ、あなたの携帯電話なんだし、当たり前かと。全然大丈夫ですよ」
「ほんとにすみません。…あの、厚手がましいんですけど…」
「はい?」
「その携帯、僕のアパートまで持ってきて頂ける…って事は出来ないでしょうか…」
「え?今からですか??いやそれは…」
「すみません!ちょっと今僕パニック発作が出ちゃってまして…」
「え?」
「あ、僕パニック障害持ってまして、出先でその発作に段々襲われちゃったんですね。それで帰り道もホントにしんどくて、なんとか家までほうほうのていで帰ってきた感じだったんです」
「あ、そう…」
「多分その発作に襲われかけてた時でしたから、携帯落としちゃったのかと…。で今、その発作の余韻って言いましょうか、苦しくて、家から出られない状態なんです」
パニック発作がどんなものかよく分からなかったので
変な誘い文句かな…?とやはり警戒した。
「あの、交番届けますよ?で、出れる時になったらその時に…」
「いやあの、一刻も早く携帯手元に置いときたいんで。…ほんとにすみませんが。あ、もしあれでしたらアパートのポストに入れて頂けるだけでも充分です」
「ポスト…」
「ええ。アパートの前に集合ポストみたいのありますから、そこに入れてくれれば。部屋は203です」
まぁそう言う事ならと、私はとりあえず
携帯をそのアパートのポストに入れに行こうとした。
念のために、
「あ、お名前は…」
「あ、赤木タケシと言います。あ、携帯の後ろにイニシャルあると思いますからそれ見て頂ければ…」
そう言われたので携帯の裏面を見た直後、
「あ、それです」と男は言った。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=jnWVHhp3G2w
落し物 天川裕司 @tenkawayuji
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