第11話「俺はキングだからな」
私立姫ヶ藤学園の学園祭。
それは、毎年11月の第二土曜日、日曜日の二日間かけて行われる。
通称「姫祭」と呼ばれるこのイベントの目玉は、姫ヶ藤の姫「Monumental Princess」のお披露目だ。
選出に学園理事会も関わっている「Monumental Princess」の選考基準は厳しく、相応しい者がいないと判断されれば該当者なしもありえる。
その辺りが普通のミスコンとは違う、独自のプレミア感を生み出しているらしい。
実際にここ数年「該当者なし」を出している中で・・・新たに「姫」が誕生したという噂は、姫祭を大いに賑わせる事になった。
プロのコンサートのような特設ステージの客席は当然のように満員。
立ち見はもちろん、ステージの見える位置にある教室はこれを売りに飲食店を出している程だ。
ステージ最前列にはメディア関係と思われる人物達がカメラを手に陣取り、主役の登場を今か今かと待ち構えていた。
「それでは登場して頂きましょう、今回映えあるMonumental Princessに選ばれた・・・一年葵さんです!」
割れんばかりの歓声と共に姿を現したのは、煌びやかなドレスを身に纏った葵ちゃん。
銀色と藤色をベースにしたそのデザインは、姫ヶ藤の制服の系譜を感じさせる。
銀糸で細かく描かれているのは藤の蔦、その上で上品に咲いているのはサファイヤの青とアメジストの紫。
背筋を伸ばし、堂々と、それでいて優雅に・・・葵ちゃんがステージの中央に立ち、裾を持って一礼して魅せる。
臆単位の金額が掛けられているという噂のMonumental Princessのドレスを、葵ちゃんは完全に着こなしていた。
「おめでとう、一年さん」
「さすが俺が見込んだ女だ」
「ついに夢を叶えたんだな」
「そのドレス、良く似合っているよ」
「き、綺麗です・・・先輩」
続いてステージ上に現れたのは男子生徒から選ばれた王子達。
・・・本来は攻略した1人なんだけど、5人出てくるという事はハーレムルートなんだろう。
音楽が流れ始め、王子達が差し出した手を一人ずつ取って・・・葵ちゃんが美しく舞う。
ゲームだと、ここで歌と共にスタッフロールが流れてくるんだけど・・・ここで終わりってわけじゃない。
ここから卒業までのイチャラブな学園生活のストーリーが始まるのだ。
シナリオ分岐もあるので、CG回収を狙うならここは重要なセーブポイントだったりする。
苦労の末に辿り着くハーレムルートではあるけれど、慣れてくると自然にこのルートになっちゃうんだよね。
悪い方の選択肢を選ぶのに結構抵抗がある私は、他のルートに行くための手加減が難しいんだよ。
特に苦労したのが全員の好感度を・・・ってゲームの事を考えていたら、いつの間にか音楽が止んでいた。
ステージ上にはイケメン達の姿はなく、葵ちゃんが一人だけ・・・客席も人がいない、あれだけいた観客がいなくなっている。
今この場にいるのは私と葵ちゃんの二人だけ・・・葵ちゃんはゆっくりとこちらへ向かって来ていた。
その視線は真っすぐ私を見据えている・・・何か、お祝いの言葉をかけなきゃ・・・うぅ、月並みな言葉しか思い付かない。
「あ、ええと・・・すごく綺麗だったよ・・・」
「どうして・・・」
「えっ・・・」
「どうして・・・私を裏切ったの?」
「・・・!」
「応援してくれるんじゃなかったの?・・・この学園に一緒に通おうって言ってくれたよね?」
「いや・・・それは・・・」
「あれは全部嘘だったの?ねぇ・・・ねぇ・・・」
「そ、そんなつもりは・・・私は・・・」
「ねぇ・・・さん・・・」
「?」
「・・・起きて・・・遅刻する」
葵ちゃんの声のトーンが、聞きなれた物に変わっていく・・・もう親の声よりも聞いている左子の声だ。
(ああ・・・夢か・・・)
全身にびっしりと嫌な汗をかいている事を認識しながら・・・私はほっとため息を漏らしていた。
もうあれから一週間になる・・・あの後、葵ちゃんとはまだ一言も話していなかった。
「右子、左子、またタイが結べないの?」
「・・・こくり」
どうやら結構寝坊してしまっていたようで・・・寝ぼけた頭で仕度しているうちに綾乃様が部屋に来た。
何か勘違いしてるみたいだけど、その方が都合が良いや・・・左子も合わせてくれてるし。
綾乃様はこなれた手付きでタイを結んでくれている・・・ううぅ、こうしてると罪悪感が・・・
「・・・ごめんなさい」
「いいのよ、気にしないで・・・いつもは私の方が手伝って貰っているのだから・・・」
「ああ、逆になっちゃってますね・・・私達が綾乃様のお世話をしないといけないのに・・・」
「たまにはこういうのも悪くないわ、でもタイはちゃんと自分で結べるようになるのよ?」
「はーい」
やっぱりこの綾乃様は優しいなぁ・・・この人にならずっと仕えても良いかも知れない。
でも、あの時の・・・葵ちゃんと相対した時の綾乃様はちょっと違った、完全にゲームの綾乃グレースの顔してた。
やっぱりこれから宿敵となる運命を感じたんだろうか・・・本能的なやつで。
あの葵ちゃんは相当な強敵だ、これからの事を考えると頭が痛くなる。
時間がだいぶ押してきているので、遅刻しない為に千場須さんに車を飛ばしてもらう事になった。
なんかたまに車が正面向いてない時があるんだけど・・・これがドリフトってやつ?
「右子・・・さっきから浮かない顔ね、何か悩みでもあるの?」
「え・・・ああ、その・・・ちょっとうちのクラスの事で・・・」
どうやら不安が顔に出てたみたいで・・・
とっさに言い訳したけど・・・これはこれで嘘じゃない。
正直クラス分けは運がなかったとしか言えない状況で・・・
「綾乃様のクラスは大丈夫ですか?」
「ええ、皆さん良くしてくれているわ」
それは何より。
友達が出来なくてぼっちになっていないかと心配してたけど、だいぶ社交性が高まったようだ。
そうでないと困るんだけどね・・・あの葵ちゃんと勝負するんだもの。
「二人とも、私は違うクラスだけど、もし何かあったら遠慮せずに頼りなさい」
「「はい」」
螺旋階段のついた巨大な円形の昇降口ホールからV字型に2本の廊下が伸びている。
やはりどこかの建築物が参考になっているんだけど、私はそこまで詳しくない。
ただ、綾乃様のクラスはV字の反対側なので、私達は校舎に入ってすぐに別れる事になる。
「綾乃様、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
通り掛かった生徒達からの挨拶の声が聞こえてくる・・・綾乃様は本当に上手くやれているらしい。
あの様子なら安心だ、私達も自分のクラスへと向かうんだけど・・・
「よぉ双子、お前らいつも一緒だな」
「・・・ごきげんよう、流也さま」
・・・悩みの種がさっそく現れた。
わざわざ私達の間を分けるように突っ切って、彼は教室に入っていく・・・そしてそのまま教室中央の席へどかりと腰掛けた。
あろうことか私と左子の席は、その両隣・・・にさせられたのだ、この男に。
彼の名前は斎京 流也(さいきょう りゅうや)、ゲームの攻略対象の1人。
誰もがその名前を知ってるくらいに幅広い分野で展開している斎京グループ会長の孫で、唯我独尊を地で行く俺様系キャラだ。
誰が呼んだか通称「キング」彼の所属するクラスは「キングダム」と呼ばれている事まではゲームで知っていたけど・・・まさか実物を体験する事になるとは思わなかった。
二階堂家を余裕で上回る斎京の権力は絶大で、この学園の教師すら彼には逆らう事が出来ない。
故にこのクラスでは彼こそがルールだ。
そんな彼の両隣の席にされた私達だけど、別に気に入られたわけじゃない。
自分こそが世界の中心と考える彼にとって、左右対称の私達双子は自分の両脇に置きたくなる存在らしい。
本当にただそれだけ・・・神社の狛犬みたいな扱いだ。
「お前ら二階堂家のメイドなんだろ?あそこ辞めてうちで働かないか?」
「申し訳ありません」
「なんでだよ?金なら今の倍は出すぞ」
「お金の問題ではありませんので・・・」
普段から私達を両脇に置きたいらしく、しきりに勧誘してくる。
さすがに断る権利はあるみたいだけど・・・何度断ってもこの有様だ。
なんかすごくムカつく・・・ゲームだとこんな奴じゃなかったぞ?
負けず嫌いな性格で、成績で葵ちゃんに負けた時に出て来るキャラなんだけど・・・
もっとこう高潔と言うか・・・人の上に立つ者としての自覚みたいなのを持ってたはず。
キングダムもこんな我儘帝国じゃなくて、クラスの皆から慕われてる感じだったのに・・・どうしてこうなった?
これがこいつの素なの?!こんな奴だって知ってたら私は攻略なんてしなかったぞ?!幻滅だよ、がっかりだよ。
「おい右、左が俺を無視してくるんだけど?」
「左子は元々口数の少ない子ですので・・・」
「なら左を勧誘するのは無駄か・・・」
「私、み・ぎ・こ・も、無駄ですからね?」
名前すら覚えようともしないのに勧誘するなよ。
本当に腹が立つけど、これ以上強く出る事は出来ない・・・下手な事をして綾乃様に被害が及んでは困る。
やっぱり葵ちゃんか?葵ちゃんとの出会いが奴を変えたのか?
奴を止めるには葵ちゃんをぶつけるしかないのか?
いやでも葵ちゃんに攻略されるのも困るわけで・・・やっぱり我慢だ、我慢するしかない。
しかし奴の勧誘は毎日続き・・・我慢もとうとう限界が訪れた。
それは放課後の事・・・
その日は特に用事もなく、私達は昇降口で綾乃様と合流して帰宅する事になっていた。
幸いな事にしつこいあの男はどこかへ行っていて姿が見えず、今のうちにさっさと帰ってしまおう・・・そう思ったその時だった。
たぶんストレスが原因だと思う・・・私のお腹が急にゴロゴロしだしたのだ。
「・・・ふぐぅ!」
「・・・姉さん?」
「ごめん左子、私ちょっとトイレ行ってくる」
「・・・それなら、私も」
「いいからいいから、左子は先に行ってて!」
「・・・でも・・・」
「ホントにすぐ済ませるから!綾乃様を一人で待たせちゃ悪いから」
そう言って私は全力でトイレに駆け込んだ。
もう無我夢中だ・・・おそらく我慢していたら屋敷までは持ち堪えられなかっただろう。
左子の同行を拒否したその判断も間違いではなく、トイレ内に盛大な音が響き渡る。
幸いな事にトイレは無人だった、誰にも聞かれてない・・・と思う。
「うぇぇ・・・気持ち悪ぃ・・・」
なんとか屋敷までは耐えられるくらいにまで回復した私がトイレから出ようとしたその時・・・
ダァン!
「ふぇ・・・ええっ?!」
何者かによって私はトイレの壁に押し付けられる形になっていた、所謂壁ドンだ。
もちろん謎の不審者なんかじゃない、よく知っている顔・・・斎京流也だ。
彼は堂々と女子トイレの中にまで入って来て、私に壁ドンしてきたのだ。
「流也さま、ここ、女子トイレですよ」
「ふん、そんなルールがこの俺に通じると思っているのか?」
や、普通に犯罪だから!訴えるよ?!・・・あ、でも金と権力で無罪にしそう・・・
そう、出来るんだよ・・・斎京流也ならね。
「い、いったい何のつもりですか?」
「左じゃ話にならないからな・・・ここらで決着を付けさせてもらう、お前ら双子揃って俺の物になれ」
「それはお断りしますって何回言えば・・・」
「本当にそれで良いのか?俺・・・知ってるんだぜ?」
「な、何を・・・」
え・・・前世の事に気付かれた?!
確かに私は色々と不自然な行動を取っているかもしれない・・・それに相手は斎京だ、本気で調べれば何か掴む事も・・・
まさか、こんな所で私の学園生活が終わってしまうの?
「お前達双子の母親、二階堂の分家の女らしいな」
「??」
え・・・前世の話じゃないの?・・・ってか、なんでお母さんの話に?!
なんかすごく嫌な予感がする。
「俺も話を聞いた時は驚いたぜ、酷い母親もいたもんだ・・・二階堂本家から大金を積まれて我が子を売り払うなんてな・・・」
「・・・!」
こ、こいつ・・・
「安心しろ、母親には話を付けておいてやる・・・うちならそれ以上の大金を用意できるからな・・・二階堂の方にも・・・」
この辺りが限界だった。
私は右腕を振り上げ・・・握り締めた拳を、あいつの顔面目がけて・・・
パーン。
「な・・・!」
「えっ?!」
私が握った拳を放つ前に・・・横合いから差し込まれた平手が、その頬を打った。
「汚い手で・・・姉さんに触るな・・・」
「左子?!」
左子だ、心配して戻ってきてくれたんだ。
先程の私の怒りがこの子にも伝わったのか、すごく怒っている・・・この子がこんなに感情を現したのは初めてだ。
「お前、左の・・・なにしやが・・・ぐ」
「・・・お前はもう喋るな・・・俗物」
不意打ちを食らった斎京が我に返って反撃に出ようとした矢先、その口目掛けて何やら灰色の毛の塊のようなものが押し込まれた・・・モップだ。
トイレの掃除道具入れの中から左子が取り出したらしい。
汚れをたっぷり吸ったモップの毛が斎京の口から溢れて、サンタの髭みたいになっている。
「んーんー!」
「ちょっと、左子?!さすがにそれは・・・」
やり過・・・いや、こいつにはこれくらいやっても良いかも・・・ああでも後が怖いような・・・
私が迷っている間にも左子は容赦なく責め立てる・・・モップを押し込んでそのまま後頭部が壁に・・・うわ痛そう。
何て言うか、今の左子は殺気っていうの?それが出てて、見てると背筋がゾクゾクするよ。
「んーんーんー」
「滅びろ・・・暴君・・・」
「ひ、左子、その辺で止めとこう?」
「でも・・・ん・・・姉さんが、良いなら・・・」
あ、すんなり止まってくれた。
このまま暴走状態が続くかと思ったよお姉ちゃん。
さすがにこれ以上やったら血が流れちゃう・・・私はR18Gは苦手なんだ。
左子からモップを受け取る・・・今度は私の手番だ。
「でも左子の言う通りよ・・・キングなんて呼ばれてるみたいだけど、今の貴方は暴君そのもの・・・私達、そんな人に仕える気はないの」
「ん・・・」
「それに比べて綾乃様はまるで名君よ・・・優しいし、いつもみんなの為に一生懸命で・・・だからこそ私達は綾乃様に仕えているの」
「・・・」
斎京が大人しくなった、なんか呆けたような顔をしてる・・・もうモップを放しても大丈夫かな。
こういうのはちゃんと元あった場所に戻して・・・っと。
「貴方も、どうせなら名君になりなさいよ、そしたら考えてあげてもいいわ・・・左子、行こう」
「・・・うん」
最後に一言アドバイスをしてあげて、私達はトイレを後にする・・・
大丈夫かなぁ・・・明日報復とかされそうな気がする・・・あるいは斎京グループの権力で・・・怖い。
でも女子トイレに入ってきた事もバレるわけで・・・向こうもあまり大事には出来ないはず・・・だよね、ね?
何事も起きない事を祈りながら、私達は翌日を迎えた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
朝の挨拶を交わしながら教室へと向かう。
・・・うぅ・・・気が重い。
恐る恐る教室を覘き込むと・・・あれ、席の配置が変わってる?
昨日まではあいつを中心に円形に近い席配置になっていたんだけれど・・・いたって普通の列配置になっていた。
教室を間違えたかな?
一応確認したけど間違ってない・・・これは新手の嫌がらせ?報復の一環か?
「あ、右子さん左子さん、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう」
「・・・・・う」
中にいたクラスメイトに見つかった・・・声を掛けられた以上はもう入るしかない。
せっかくだから何があったか聞いてみよう。
「机の位置が変わったみたいですけれど、何かご存知ですか?」
「ああ、それでしたら・・・あ」
「???・・・ぅげ」
彼女が答えようとしたその時、斎京が教室内に勢いよく飛び込んできた。
そして真っすぐに私達の所へ・・・く、ついに昨日の仕返しが来るか。
「左子、右子、済まなかった!」
「「へ?」」
ひょっとして・・・今謝った?・・・ってか、初めて名前で呼ばれた?!
彼は腰を90度曲げた前傾姿勢・・・所謂「頭を下げている」状態なのは間違いない。
その体勢のまま、彼は言葉を続けた。
「あれからよく考えたが、明らかに俺が悪い・・・許してくれ、この通りだ!」
「ええええええ?!」
本当に何があった?!どっか頭でもぶつけた?・・・そういえば昨日モップで・・・いやいやまさか。
「クラスの皆にも迷惑を掛けたと思う、済まない!だがどうか俺に挽回させてくれ、必ずどのクラスよりも良いクラスにしてみせる!」
あ、この感じ・・・堂々としてて頼りがいありそうな表情・・・ゲームで見たキングの姿だ。
「キングにそこまで言われちゃあな」
「別に今までもちょっと変だっただけで、そんなに酷くはなかったし」
「頼んだぜ、俺達のキング」
そうそう、こんな感じでクラスが一丸になってたっけ。
え・・・じゃあ何?彼が変わったのは葵ちゃんの影響じゃなくて、どっかで頭ぶつけた結果なの?
あ、女子が盛り上がり出した・・・確かに今のあいつならかっこいいかも・・・
「左子、右子、見てろよ・・・すぐにお前たちの言う名君になってやる・・・なんたって俺はキングだからな」
まぁ、この分なら彼が本当に名君になる日も遠くはないだろう・・・だけど。
「いいえ、まだまだ綾乃様の足元にも及びませんね、全然です・・・ね、左子」
「こくり」
「言ったな?なら彼女から学ばせてもらうまでだ、すぐに追いついてやる」
負けず嫌いな彼はそう言って教室を飛び出して行った。
よし・・・これで綾乃様が一歩リードするはず。
思わぬ展開だったけれど、あの葵ちゃん相手に先手を取れた形だ。
これなら案外簡単に勝てるのかも・・・
「ねぇ右子、左子・・・斎京流也さまって知ってる?二人と同じクラスらしいのだけど」
「はい、すごい人ですよ、クラスの中心人物で皆からキングって呼ばれています」
「そう・・・今日、その人が私の所に来たんだけれど・・・」
「そ、それで・・・どうでした?」
「どうって言われても・・・少しご挨拶したくらいで・・・特に」
「え・・・」
ひょっとして・・・何もなかった?
ああ・・・綾乃様、友達作るの苦手だもんな・・・
どうやら思った以上に小さな一歩だったようで、まだまだ油断は出来ないようだ。
・・・が、がんばろう私。
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