第三傷 糸と、糸が事故を呼ぶ 第30話
コンビニに入店し、即座に沙々は零から手を放した。
「ご、ごめん、急に掴んで」
「いいよぉ、こちらこそ守ってくれてありがとね」
「守ってなんかないよ。ただ僕が面倒くさかっただけ」
零は沙々を小突く。
「もう素直だなー。そこはどういたしましてってスマートに受け取ればいいのに」
トマトジュースのパックを二つ受け取りレジに並ぶ。
その最中、アイスコーナーが目に入った。
「あ、これ前食べたアイスだ」
そこに陳列していたのは、アイスショップのTHEシーズンズ味のアイスカップだった。
大きなポップが添えられている。
「ホントだー。コンビニで売ってるんだね。限定コラボだって。
でもケーキ食べたからなー」
「買う」
「えぇ⁉ あれだけ甘いもの食べたのに?」
「アイスなら冷蔵庫に入れとけばいいし、僕、ご飯が好きじゃないから、アイスなら食べれる」
「偏食なのー? ご飯っていっても何が食べれないの?」
「白米、肉、魚全般無理。パンはぎり」
「そこまで偏食の人、初めて見たー」
アイスコーナーの高いアイスが並ぶところのドアを迷わず開ける。
そして、そのアイスを三つカゴに入れた。
「じゃあ人数ぶん……太刀川さんも食べる?」
「わたしはいいや。これからも沙々くんの家に行くとは限らないし、
なんども奢ってもらうのは気が進まないから」
「いいよ、一人分だけ買わない方が僕が嫌。また今度来て食べればいいよ。取っておくから」
そう言ってもう一つカゴに入れる。
「……ありがとう。でも、自分の分は自分で出すよ」
そう言って零はカバンを探る。
「あ」と声を漏らした。
「どうしたの」と聞き返すと
「お財布持ってきてなかったけ。勉強会だからてっきりいらないと思って」
そう言って申し訳なさそうに、頭を掻いた。
「……ごちになりますっ」
「いえいえ」
沙々に全額出してもらい、会計を済ました。
コンビニを出てすぐ、零が足を止めた。
「沙々くん。気づいてないっぽいから言うけど、九十九
わたしが沙々くんにしたみたいに」
「こ、告白……?」
「そうだよ。利一くんのことが好きで、沙々くんがどうしたいのかは分からないけど、利一くんが告白して、今返事をもらうためにわたしたちに席を外すように頼んだんだよ。
それに、きいろさんは沙々とわたしが付き合ってるから、告白の返事にOKを絶対出す。必ずそうする。
ねえ、沙々くんはどうしたいの?」
「僕は…………ヤダ。二人が付き合うなんてヤダ。
利一はずっと僕のモノなのに‼」
「じゃあ、早く追いかけたら? 告白の返事をする前に」
「うん、そうする」
そう言って沙々はスマホを取り出し、きいろに電話をかけながら走り出した。
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