第二傷重症、重症からの新たな絆 第23話
二限の休み時間になっても、きいろの掴まれた方は熱を帯び、痛みが続いていた。
――
将来DV男確定っ。
そう毒吐きながら肩をさすっていると、見かねた沙々が声をかけてきた。
「きいろ、痛むなら保健室行ってきなよ」
珍しく沙々がきいろを心配している。
その心配を素直に受け取り、きいろは保健室へ行くことにした。
自分の事で保健室に行くのは、何気に初めてな気がする。
ソワソワと落ち着かない自分がいた。
保健室に辿り着いたはいいものの、ドアに巡回中と書かれた看板が出ていた。
だが、明らかに室内からギシギシと軋むような怪しげな音が聞こえる。
――おばけぇ……? 学校の七不思議の人体模型のやつ……⁉
そういうの苦手なんだよなあ。
でも授業始まっちゃうし、気配消して湿布だけ貰お。
トイレで貼ればいいだけだし。
見つからなきゃいい話。
恐る恐る窃盗に入る強盗の如く静かに、きいろは保健室へ入った。
すぐに逃げられるように、ドアは開けっ放し。
そろり、そろち、と歩いていると、暗がりの中、カーテンにクマのように盛り上がっている影が目に入る。
そのカーテンに近づけば近づくほど、ギシギシと軋む音が大きくなる。
――まさか、本物⁉
好奇心旺盛なきいろは一目見ようと、カーテンを下から覗いた。
きいろは目を剝いた。
同時にとてつもない悪寒が背中を走る。
そのままゆっくり顔を上げ、一枚湿布を取り、保健室を後にした。
カーテンの中にいたモノには気付かれずに、きいろはミッションを遂げた。
きいろは廊下を走って、女子トイレに駆け込む。
ようやっと一人の安寧の地(個室トイレ)についたきいろは両手で顔を覆った。
息が弾み、カーテンの下から見た映像が何度も脳内でリピートされる。
それはまるでGIFのように。
きいろがカーテンの下から見たのは――
乱れた制服で四つん這いになる零と、ズボンを脱いだ戒田先生が、零の腰に手を当てて、後ろから零を突いている様子だった。
こちら側に向かって零が四つん這いになっていたので、零と一瞬目があった。
その凍ったビー玉のような瞳からは精気が感じられず、まるで事務的に事に及んでいるようだった。
戒田先生の方は何か呪文のようなモノを唱えているのに夢中だった。
「お前のせいで」が唯一聞き取れた言葉だった。
――こういうのって淫行ってやつ⁉
誰に言う?
でも、本人の了承もなしに言うのはおかしいし……
アレ、生徒虐待のひとつだよね⁉
でも、あんなこと吹っ掛けたわたしが手をさしのべるだなんて、できない……。
ここは黙って墓まで持っていこう、そうしよう。
「ってよし、じゃな―――――――い‼」
トイレ中にきいろの声がこだまする。
――あ、つい出ちゃった……
でも、
彼女がそんな教師とチョメチョメしてていいの?
沙々は知った上で交際してるのかな。
きっと沙々は駄目だよ……勉強以外はポンコツだもん。
なら、太刀川さんと沙々を別れさせれば、事態は丸く済むのでは?
それだ‼ それしかない‼
二人を別れさせなきゃ‼
そうなったら、沙々はわたしのもとに戻ってくるし、メリットだらけ‼
よし、まずは太刀川さんと学校外で接触を試みよう‼
きいろはトイレで一人、炎を燃やしていた。
保健室のカーテンの内側。
一通り事が終わったので、戒田先生はズボンを履いている最中だった。
ズボンを履き、ベルトを締める。
このカチャカチャとした金属音が零は嫌いだ。
事が終わる合図だからだ。
「太刀川ー、服のシワとっておけよ。一様学校の生徒なんだから」
そう言って零の頭を汚い手でくしゃっと撫で、カーテンの外へ出た。
「あれ、こんな隙間開いてたっけ?」
戒田先生は、きいろが閉め忘れたドアを閉める。
「誰にも聞こえてないといいんだがな」
次に目をやったのは、絆創膏などが並ぶ机。
「あれ、湿布のケースが開いてる」
静かに湿布の入ったケースを閉じた。
「太刀川ー、準備いい? 看板戻したいんだけど」
零はカーテンから顔だけ出して、こくりと頷いた。
――
どうアクションを起こすんだろう。
零は密かに胸を踊らせていた。
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