第3話 クルミさんと

 「まさかこんなところで憧れの人と会えるなんて! 嬉しすぎです!」


 あ、俺憧れの人になってたんだ。

 嬉しいな。


 「あ、お腹空いてます?」

 「まぁ……、ちょっとは……」


 なんか出してくれるのかな?

 それなら嬉しいんだけど。


 「私もお腹空いてます! 同じですね!」


 ……なんか食べさせてくれるわけではないんだ。

 それより、クルミさんのおかげでだいぶ落ち着きが取り戻せてきた。


 まずこの世界がどういうことなのか把握しよう。


 「あの、クルミさん? ちょっと質問いいですか?」

 「はい!」

 「あの……、この世界ってどういう感じですか?」

 「あー……、一言で表現するなら『ゲーム』ですね。私のヘルプ機能がそう言ってました」


 ヘルプ機能?

 なのそのゲームみたいなやつ。


 「どうやら私たちはゲームの世界に転生したらしいです。モンスターもうじゃうじゃいるし、近くに村とかあります。モンスターを倒すと経験値とかもらえて、それがたまるとレベルアップ――って、カナタさんにこの説明は不要ですね」

 「いや、必要だと思うけど……」

 「簡単に言うとRPGゲームですよ。伝わりますよね?」

 「まぁ……」


 普通にモンスターがいる世界で、それを倒すとレベルが上がって強くなっていくっていうことだな。

 でもさっきの言葉が気になるな……。


 ゲーム目標が『生き抜くこと』?

 どういうことだ?


 『魔王を倒す』とかだったらわかるけど。


 「で、この世界結構ハードモードなんですよ……。さっきそこにスライムみたいな敵がいたんですよね。それで倒してみよっかなって思って戦おうとしたんです。そしたらなんかそのスライム強くて! スライムに当たっただけで鈍い痛みが走るんですよ!」

 「そ、そうですか……」

 「スライムって弱いキャラじゃないですか! なのにめちゃくちゃ強かったんです!」

 「た、大変ですね……」

 「多分あれは武器ないと厳しいと思います。ヘルプ機能で調べたら村に武器屋さんがあるみたいなんですよ。行ってみます?」


 武器屋か……。

 行ってみてもいいけど、無料ではくれない気がする。


 それに色々とまだ頭がおいつけてないところもある。


 さっきクルミさん、『転生』って言った?

 ってことは俺、死んだの?

 いつ?


 それにクルミさんもこの世界にいるってことは死んだのかな?

 こんなタイミングよく二人とも死ぬか?


 「えっと……、色々とわかってるところを説明してほしいです。まず『ヘルプ機能』ってどうやって見れるんですか?」

 「あー、そっからですか。じゃあ広いところで話しましょうよ。ついてきてください」


 クルミさんはそう言って部屋から出ていく。

 俺もクルミさんのあとを追って部屋から出た。


 急展開だな……。

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