魔闘士 幻翠

とろり。

第1話 幻翠《げんすい》という男



 辺境の村にひっそりと暮らす中年の男がいた。彼の名は 幻翠げんすい と言う。

 幻翠は若いときに武道を嗜み、また初級魔術を修得していた。その努力の甲斐あって実力者パーティーに入団するも、人間関係に疲れ自らパーティーの脱退をリーダーに伝えた。

 幻翠の実力は異常で、単独で大型モンスターを討伐してしまう。単なる武術と初級魔術を修得した男だが、その実力はトップクラス。


 村には防衛兵士などいない。時折やってくるモンスターは全て彼が倒す。それは村の存続のためであり、また自らの居場所を守るためでもあった。


 だが、王国より大型モンスターの討伐依頼の手紙が届く。

 それは幻翠げんすいの運命を変えてしまったのである。





 王国は依頼は大鰐アリゲーターの討伐だった。大型モンスターの中でも下位ランクのモンスター。しかしそれが貿易に必要な河川を支配しているという。


 幻翠は王様の依頼つまりは命令に背くことはできなかった。


 王国の軍隊が苦戦しているのは重装備による河川での移動速度の低下が理由。その点、幻翠は身軽であった。それも含めての依頼だろう。政策中枢にいる老人たちは幻翠の実力を報告書から見出したようだった。


 大鰐アリゲーターの行動速度は比較的遅いが、尻尾を使った攻撃は範囲が広い。ひるんだ隙に追撃されては恐らく生きて帰っては来れないだろう。


 唯一、瀕死の状態で帰還した兵士は後衛での援護。後衛にさえ届く攻撃範囲はなかなかである。


 依頼書の報酬額はエリート軍人の十倍の額。10000メルクだとしたら100000メルクだ。幻翠に抜かりはない。


 金は村に寄付しよう、そう内心思う幻翠。


 そして幻翠は王国の貿易拠点に足を運ぶのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る