第13話 嵐の前のひと時、溢れる愛と誘惑

シルヴィアを仲間に迎え入れ、新たな試練の門を開いた後、アルノたちは一時の休息を取ることにした。遺跡の中で見つけた安全な場所に集まり、彼らは次の冒険に備えつつ、それぞれの思いを胸に抱きながら、アルノを取り囲むように集まっていた。


「アルノ、今日はよく頑張ったわね。私が癒してあげる。」

リューナがふわりとした笑みを浮かべながら、アルノの隣に座る。その柔らかい声が彼の耳元で囁かれるたびに、アルノは心地よい気持ちに包まれた。彼女の手が優しく彼の肩に触れ、ささやかな魔法が身体に広がり、疲れが和らいでいく。

「あなたが無事でいてくれて、本当に良かった…」

彼女の言葉は、優しいだけでなく、どこか甘美な響きがあり、彼の心をさらに揺さぶる。


その時、リリーが少し頬を膨らませながら割り込んできた。

「ちょっと、あんまりベタベタしすぎじゃない?アルノだって、私の守りがあったから無事だったんだから!」

リリーはそう言いながらも、顔が赤く染まっており、普段のツンデレな態度とは違う、照れ隠しのような表情を浮かべていた。


リリーは恥ずかしそうにしながらも、そっとアルノの腕にしがみついた。

「だ、だから、私だってちゃんと休ませてあげたいんだから…!」

彼女の小さな手がアルノの腕をしっかりと握り、そのぬくもりが彼の胸に伝わってくる。


一方、少し離れた場所にいたシルヴィアが、その様子を見て意味深な笑みを浮かべていた。彼女はゆっくりと立ち上がり、優雅な歩みでアルノの方へ近づいてきた。

「アルノ、どうやらこの子たちには、まだまだ子供っぽさが抜けないわね。あなたはもっと大人の対応ができる相手が欲しいんじゃない?」

その言葉と共に、シルヴィアはアルノの背後からそっと彼の肩に手を置き、挑発的な囁きを耳元に届けた。


「私なら、もっと…満足させてあげられるかもしれないわよ。」

彼女の指先がアルノの首筋を軽くなぞり、その艶やかな声が彼の耳を刺激した。アルノはシルヴィアのこの態度に戸惑いながらも、どこか魅了されるような感覚に陥った。


リリーがすぐに反応し、顔を真っ赤にして叫んだ。

「な、何よ、それ!シルヴィア、アンタ、アルノに変なことするんじゃないわよ!」

リリーは再びアルノにしがみつき、彼を自分のものだと言わんばかりに強く抱きしめた。


「ふふ、そんなに焦らなくてもいいじゃない。アルノが選ぶのは彼自身よ。」

シルヴィアの微笑みは、どこか挑発的でありながらも、心の奥底に潜む寂しさが感じられる。


カレンはその様子をじっと見つめていたが、彼女もまた何かを決意したように、アルノに近づいた。

「俺だって…守ってやりたいんだ、アルノ。お前がここまで来れたのは、俺がずっとそばにいたからだろ?」

カレンは少し照れたように視線を外しながらも、アルノに自分の気持ちを伝えようとしていた。彼女の不器用な言葉には、戦士としての誇りだけでなく、彼に対する深い愛情がこもっていた。


「だからさ…あんまり他の奴らに頼りすぎるなよ。俺がいるんだから…」

そう言いながらも、カレンの顔は赤くなり、アルノにそっと寄り添ってきた。その力強い腕で彼を守ろうとする彼女の気持ちが、何よりも温かく彼に伝わってきた。


エリシアも、他の乙女たちに負けじとアルノに近づき、優しく彼の額に手を当てた。

「アルノ、みんながこうしてあなたを支えたいと思っているわ。でも、私は誰よりもあなたのことを理解している。だから、あなたがどんな選択をしても、私はずっとあなたの側にいる。」

彼女の言葉には、理知的でありながらも深い献身が感じられた。エリシアはアルノの決断を尊重しながらも、彼を守り続ける覚悟を持っていた。


「私の魔法で、もっと楽にしてあげるわね…」

エリシアの手から温かな光が放たれ、アルノの身体に柔らかな癒しの魔法が広がっていく。彼女の優しい微笑みと共に、アルノの疲れは次第に溶けていくようだった。


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しかし、そんな甘いひと時も束の間、遠くから不気味な音が響き渡った。遺跡の奥から、さらなる闇の気配が感じられ、乙女たちは一斉に緊張感を取り戻す。

「どうやら、もう休んでいる暇はなさそうね。」

シルヴィアが立ち上がり、鋭い目で遺跡の奥を見つめた。新たな敵が近づいていることは間違いなかった。


「でも、アルノがいれば…私たちは無敵よ。」

リューナがそう言いながら、微笑みを浮かべた。彼女の言葉には、戦いへの覚悟と、アルノへの揺るぎない信頼が込められていた。


次回、アルノと乙女たちは、さらに強力な敵と直面する。だが、彼らの絆はますます深まり、恋と戦いが交錯する運命の冒険は続く——。

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