第12話 共に歩む道、敵か味方か

シルヴィアがアルノの剣に貫かれ、闇の力を失った瞬間、彼女の身体は崩れ落ちた。だが、その瞳には未だに強い意思が残っていた。アルノは彼女を完全に打ち倒すつもりだったが、何かが心に引っかかり、剣を引いた。


「なぜ…殺さないの?」

シルヴィアがかすれた声で問いかける。彼女はまだ、すべてを失ったことに気づいていないようだったが、彼女の顔にはこれまでとは違う、どこか弱さが垣間見えた。


アルノは彼女を見下ろし、剣を静かに収めた。

「俺は…もう復讐とか力に支配されたくないんだ。シルヴィア、もしお前が変わりたいなら、俺たちと一緒に来るんだ。」

彼の言葉には、真剣な思いが込められていた。彼女もまた、孤独の中で力を求め、間違った道を進んできたことを感じていたのかもしれない。


乙女たちは驚いた表情を見せたが、すぐにそれぞれの思いを胸に秘め、アルノの決断に同意した。

「アルノ、彼女を信じるなら…私たちも信じるわ。」

エリシアが優しく微笑み、リューナも静かに頷いた。


リリーは不満げに眉をひそめながらも、やがてため息をついて言った。

「しょうがないわね、アルノがそう言うなら…でも、絶対に油断しないから!」

カレンは無言でアルノに同意し、剣を収めた。


シルヴィアはその場に崩れ、力を失った自分に絶望しかけたが、アルノの手が彼女に差し伸べられた瞬間、彼女の心に何かが灯った。長い年月を闇の中で過ごし、誰にも頼ることなく力を追い求めた彼女が、初めて他者の温かさに触れた瞬間だった。


「あなたたちと…共に歩む道があるというの?」

彼女の声は震えていたが、そこにはかすかに希望が感じられた。彼女はゆっくりとアルノの手を取る。


「もう力に溺れる必要はない。お前が変わりたいと思うなら、俺たちが支える。」

アルノの言葉に、シルヴィアは静かに頷いた。彼女の瞳には、かつての冷酷さや野心はもうなかった。ただ、これから新たな道を歩む覚悟が見て取れた。


シルヴィアを仲間に加えたアルノたちは、遺跡の闇が晴れた後、しばらくの静かな時間を過ごしていた。だが、その穏やかな空気を切り裂くように、遠くの地平線に再び不穏な影が立ちこめる。遺跡の奥に眠っていた秘宝が、まだ完全に封印されていないのだ。アルノたちはさらなる試練が待ち受けていることを感じ取る。


シルヴィアは静かに立ち上がり、何かを決心したようにアルノの方へ歩み寄った。

「私には、まだ話していないことがあるわ…。」

その言葉に、アルノたちは彼女を見つめ、彼女が語り始めるのを待った。


「私はかつて、この秘宝を巡る戦いに敗れ、闇に堕ちた。そして、その力を利用しようとした。でも、本当は私自身がその力に支配されていたの。」

シルヴィアの声はどこか弱々しく、彼女がこれまで隠してきた深い傷を語るようだった。


「この秘宝には、もう一つの側面がある。封印されている力が完全に解き放たれた時、それを制御できる者は、ただ一人。アルノ、あなたの持つデスグリモワールの力が必要なのよ。」

その言葉に、アルノは一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに頷いた。


「シルヴィア…お前はその力を本当に取り戻したいのか?今はもう、俺たちがいるんだ。みんなで封印し、二度とその力を使わないという選択肢もある。」


シルヴィアは一瞬ためらったが、静かに答えた。

「私の過去がある限り、完全に清算することはできない。でも、今の私は、その力を利用するのではなく、封印するために戦う覚悟があるわ。」

彼女の決意は揺るぎなく、アルノたちもそれを受け入れた。


リューナは優しく微笑み、シルヴィアの手を取った。

「あなたも、今は私たちの仲間よ。過去のことを悔やむ必要はないわ。これからは共に未来に向かって歩んでいきましょう。」


カレンも強く頷き、剣を握りしめながらシルヴィアに声をかけた。

「俺たちは一つのチームだ。過去を振り返るな、ただ前に進め。俺たちがいる限り、どんな敵でも倒せる。」


リリーは少し気まずそうに視線をそらしながらも、シルヴィアに歩み寄った。

「まあ…あんたが信用できるかどうかは、まだ分からないけどさ。でも、もしまた何かしでかしたら、すぐに私が止めてやるからね。」

彼女の言葉はぶっきらぼうだったが、その中にはアルノたちへの深い愛と仲間意識が感じられた。


その時、遺跡の奥から低い轟音が響き渡り、巨大な石の門がゆっくりと開いていった。中からは冷たい風が吹きつけ、異様な気配が漂ってくる。

「ここが…秘宝の最後の封印場所だ。」

エリシアが呟きながら、奥へと目を向けた。


「この先には、さらに強力な力が待っているわ。でも、私たちなら乗り越えられる。」

シルヴィアが静かに言い、アルノたちは一斉にその門の向こうへと足を踏み出した。


シルヴィアを仲間に加えたアルノたちだが、試練はまだ終わっていない。遺跡の最奥には、さらなる強敵と、秘宝に秘められた最強の力が待ち受けている。アルノたちはその力を封印し、世界を再び平和に導くことができるのか?そして、シルヴィアは自らの過去と完全に決別できるのか?


次回、試練の門を開いたアルノたちが直面するのは、古代からの強敵。そして、秘宝の真の力が明かされる——。

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