優しい世界が見たいんだ

川崎殻覇

渡伊代は断らない

NTRとは悪である

NTRが悪とは俺の持論である。異論は許すが反論は許さない。


そもNTRというものは他人事だからこそ良き〜と思えるジャンルであり、現実で起きたら顔が真っ赤っかになる事態である。


自分の愛しい人がポッとでの男に…付き合っていた幼馴染がよく知らんチャラ男と…中学時代に告白してOKしてもらったけど、高校が別になり遠距離恋愛となって次第に…クラスのアイドルが実は…クラスの地味子の裏の顔…とか、途中からちょっと違う気がするが、とにかく数えたらキリがない。


他の人がどうかは知らないが、俺はこの手の話を聞いたり見たりするととても心が痛くなる。


心臓が鷲掴みされる…とかそういう直接的な痛みとかではないんだが、こう…キュッ…と、真綿で首を締め付けられるような圧迫感を感じるのだ。


世間のごく限りなく狭い地域では、恐ろしくも寝取らせという趣味も横行していると聞く。


自分の最愛な人がよくも知らん汚ったねぇオッサンに抱かれることに興奮を覚えるらしい。普通に精神異常者だと思う。

あくまで自分の欲求に忠実、それをお願いされる方の気持ちを一切考えていないクズ。それでいてその奥さんか彼女は『貴方がそこまでお願いするなら…』と、意味わからんくらい忠実。


何故そういう頭のおかしい奴にばかりいい女が寄っていくのだろうか、男は真面目で一途の方がいいのではなかろうか。

でも実はそうじゃないんだよなぁ、男はチャラ男でイケイケの攻めている奴じゃないとモテないんだよな。


なんならそういう男が一瞬見せる優しさに女はキュン…となるらしい。は?


真面目で一途な奴はずっと優しいんだが? ずっと守ってみせるんだが? 普段横暴な奴が時偶見せる優しさにトキメクとかDV女気質すぎる。きゅんきゅん発情するなよボケ。


世の中不条理としか思えない。それが世界の真実なんて辛すぎる。マジふざけんな。

と、これまで散々文句を言っていたが、実を言うと俺は直接的に彼女を寝取られたという実例はない。なのでここで言っていることに関しては若干の妄想が入っていることもしばしば。


だが概ねは合っているだろう。総論としてはヤリチンは死ねばいいと思う。これが世間一般の男代表の声だ。

でもそういうことを言うと、『お前童貞か?』と、意味わからんカウンターが飛んでくるのだからやっぱり怠い。




「朝の支度は終わり…じゃ、学校いくかー」


今日は入学式、親元を離れ、地元から遠い高校を選択したことによる一人暮らしを始めた俺の朝は早い。

何たって自分のことを何でも一人でやらなくてはならない。ここには家事をやってくれる親はいないのだから当たり前だ。


小学校時代から微妙に親とは仲が悪かった。だから元々自分のことはしっかりやっていたのであまり苦ではないが、それでも全部やるとなると少し大変だ。


洗濯物は天気に左右されるし買い物はめんどいし、料理も栄養バランスを考えながら作らんといけないからちょーめんどい。

偶にカップ麺で毎日済ましてぇなと思うが、それでは貯蓄は簡単に無くなる。料理は生活費を節約する大事な要素だからな、頑張っていきたい。


朝飯はパン一枚。米を炊くのがめんどいというのもあるが、俺の場合、朝は胃が死ぬほど縮こまって食欲が皆無に等しくなる。

しかし朝飯を抜くと昼までのエネルギーが足りなくなるので仕方なくパンを一枚だけ食べているというわけだ。無論牛乳を付けてな。



学校への通学路は覚えている。入学関係のアレこれで何回か通ったからな。通学路にはチラホラ俺と同じ制服を着ている奴がいっぱいいた。


俺の通っている学校は新学校と目される類のものではあるが、校則はゆるく、学校生活において生徒の自主性を重んじる学校らしい。なので朝から金髪やら茶髪やら様々な髪色の奴がいる。ちなみに俺は黒色な。


そんなクソどうでもいい日常風景を見ながら学校へと辿り着く。そのまま入学生案内と書かれた立て看板に従い広場に集まる。


校長先生の有難い話を聞き流しながら割り振られた教室へと移動する。


どうやら入学前にSNSでなんやかんやして既にグループが固められている。


『もしかして…〜〜ちゃんですか?』


『あ、もしかして〜〜ちゃん? わぁー! 同じクラスだね!』


とまぁ、こんな感じ、ちなみに俺はそんなもんやってない。俺のスマホはゲーム専用だ。


わやわやしている教室の喧騒を耳に入れ、雑多な雰囲気を楽しむ。輪に入るつもりはないがこういう雰囲気は嫌いではない。


俺が腰掛けた場所は一番左の一番後ろの席、俗に言う主人公ポジション。

席は早い者勝ちということであったので速攻取らせてもらった。わーい。


若干名の奴らになんだコイツみたいな目で見られたが問題ない。どうでもいい人間に対して躊躇する必要なんてないからな。


教師…多分担任が現れると喧騒は収まる。

その後、教師による軽い自己紹介の後、お待ちかねとばかりに生徒同士の自己紹介が始まった。


出席番号から順に一人、また一人と自分の素性を並べ立てる。


このクラスの立ち位置をはっきりさせ、この後に続く学生生活を楽しくする為に様々な工夫を凝らして言葉を並べ立てている。


おちゃらけに挨拶する者、かなーりふざけて挨拶する者、ウケ狙いで喋って冷たい目で見られる者、真面目で綺麗な言葉を使う者、クールに簡潔に述べる者…様々な者達が思い思いの言葉を並べ立てていた。


そうして順番が回ること十数回…ようやく俺の出番となる。


先程も述べたが、ここでの自己紹介は今後のクラスの立場において重要なものとなる。

先程受け目的でスベることを言った生徒などまさに絶望した顔で辺りを見渡していた。


多分彼はこの先辛い思いをするだろうな…と勝手な想像を頭に浮かべる。可哀想に。


さて、そんなわけでこの重要な局面…俺は言葉を選んで口を開かなければならない。


この先クラスの人気者になりたいのならウェーイみたいなことを言わなきゃならないし、ひっそりと暮らしたいのなら余計なことは言わない。


それで? 俺が選んだ今後の立ち位置を決める自己紹介とは…。



「出席番号23番、名取愛人。好きなものはない、嫌いなものは五月蝿い奴。以上」



こんなものだった。

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