徳島コミュニティ到達~そして仁義なき戦い~ヤクザVS自衛隊!編
第11話 取引
研究所を脱出後、俺たちは徳島平野に戻りキャンピングカーを走らせて徳島市へと向かった。道中では会話らしい会話がなかった。先輩と市村は研究所で見たものにショックを受けていたし、新入りのコンセプシオンにもまだ馴染めていなかったからだと思う。そして何よりも俺の過去のことを二人は気にしている。ホセーファ。俺にとって因縁の女。俺は過去と決別したはずだった。だが世界が壊れて俺は過去の業に追いつかれてしまった。そのことに俺は思い悩んでいた。
「皆さまのコミュニケーション指標が最悪です。端的に言えば気まずい空気というやつですね」
俺たちの沈黙を破ってコンセプシオンが喋りだした。
「わたくしの知識によれば異性間におけるディスコミュニケーションの原因はセックスレスが大部分を占めるそうです」
「いきなりお前は何を言っているんだ?」
逆に車内の空気が凍ったよ。話題が話題過ぎて先輩なんか頬を赤く染めている。
「はしたないぞ!そのような言葉を出すなど女のすることではない!」
「ふむ。御手洗様の意見は伝統的な男女役割分担における女性規範に基づくものと理解しましたわ。ですがだからこそなのです。社会の最小単位は男女一対の夫婦を基本とします。経済活動、人口再生産。エトセトラエトセトラ。すべての社会活動の基本は男女の関係に収斂されるのですわ」
いきなり社会学だかなんだかのご高説を宣われても困る。だが市村はうんうんと頷いていた。
「ですからあなた方はセックスをしてみてはいかがでしょうか?お互いが持つ感情的葛藤も、セックスによるホルモン分泌により解消される可能性がありますわ。わたくしは即時のセックスを提案いたしますわ」
「馬鹿言ってんじゃないよ全く。二人ともそこのアホの戯言は放っておけ」
「いいえ。たしかに一理ありますね」
「ああ。一理ある」
「なにいってんのふたりともぉ?!」
二人はコンセプシオンの意見に毒されていた。
「確かに今後のことを考えてもチームワークは必須です。肉体関係があった方が意思の疎通も容易いでしょう」
「それに五百旗頭も女子だらけの環境で性的に不満を抱えては戦闘にも決断にも集中できないだろう。解消する必要がある」
「そんな理屈っぽいセックスしたくないようぅ」
女子二人がノリノリなの逆に萎える。セックスってもっとしんみりとするものではないのかな?ちがう?
「わたくしも人間のセックスが見てみたいですわ。あわよくば体験もしてみたいですわね」
「そんなノリでセックスしてたまるか」
俺はもうちょっとロマンチックな幻想を追い求めたい。仲良くなったからセックスするのであって、仲良くなるためにセックスするのはなんか違うと思う。
「ユイト先輩大丈夫です!こんなこともあろうかとコンドームはちゃんと回収してあります!」
「でかしたぞ市村!これで後顧の憂いなしだ!」
頭痛がいてぇ。
「でもできれば優しくしてくださいね。初めてなんで…」
「私も初めてだが激しくてもかまわないぞ!思う存分気持ちをぶつけてくれ!」
まえのめりぃ。思春期だなぁ。
「はいはい。戯言はおしまいね。先輩、市村、武装してね。徳島市が近づいてきたよ」
気がつけば車は徳島市に近づいていた。二人はチェストリグをセーラー服の上から着てMP5A4を構えた。俺も学ランの上からチェストリグを身に着けてMP5A4をチャーハンした。運転を市村に代わってもらい、俺と先輩はキャンピングカーの屋上に出る。そして周囲を索敵しつつ警戒を続ける。
「ゾンビが結構いるな。ネットの情報は本当なのか?」
「ガセ情報じゃなければ、徳島市には自衛隊が築いたゲーテッドコミュニティがあるはずなんだよ。まあなければスルーして淡路の方へ抜けるだけだけどね」
今の俺たちの目的はゲーテッドコミュニティとの接触である。食料や日用品には困っていないのだが、情報には飢えている。ちゃんとした街があるならばそこで情報収集したかった。
「先輩!人がいます!なんか困ってそうな感じですよ!」
運転席の市村から無線が届いた。双眼鏡で進行方向を確認すると女の子が1人ボロボロの服装で倒れていた。
「五百旗頭」
「言われなくてもわかります。でも一応止まってやりましょう」
キャンピングカーは倒れている女子の前で止まる。俺は屋上から降りて女子に近づく。
「あんた大丈夫か?」
「は、はい!私、怖い人たちに襲われて命からがら逃げて」
「ふーん。大変だね」
女の子は品を作って俺に身を寄せてくる。
「でも嬉しいです。助けてくれる人がいるなんて」
「はぁ?誰が助けるって言った?」
「え?きゃ!?」
俺は女を羽交い絞めにして、頭にグロックを突きつける。
「おい!近くにいるんだろう!出てこい!じゃなきゃこの女の頭を吹っ飛ばす!テンカウントだ。10,9,8,7,6,5」
「いや!いやああああ!みんな!出てきて!いやだ!死にたくないよぅ!!」
すると近くの建物の陰からニューナンブを持った少年少女が姿を現す。追剥ですか。
「なんでわなだってわかったの?!」
俺に絞められている女の子が叫ぶ。
「だってボロボロのくせに臭くないんだもん。それにこのご時世なのに血色もいい。怖い人に襲われてたなんて嘘だってすぐわかる。むしろお前がその怖い人たちなんだろ?」
女の子は悔しそうな顔になる。図星をつかれたか。たぶんこの手口で生存者からカツアゲを何度もやっているのだろう。秩序が崩壊すれば人は容易く獣に堕ちる。
「その銃を下ろせ!こっちの方が人数は多いぞ!」
確かにその通り。向こうは10人ほどが警官から奪ったであろうニューナンブで武装している。こっちは人数では劣る。だけど。
「おーけーおーけーわかったわかった。解放してやるよ」
俺は女の子を蹴っ飛ばして仲間たちのところへ戻す。と同時に敵に向かって駆けだす。
「なんだこいつ?!馬鹿なのかよ!」
少年の一人が発砲した。だけどその弾道は俺には
「くそぉ!」
「止せやめろ!仲間に当たる」
「そうそう。近接過ぎると銃はあぶないぞぉ」
俺はそのまま近くにいた奴の側頭部にケリを入れて気絶させてそのまま近くのやつの背中を掴んで盾代わりにする。そしてグロックで残りの連中のニューナンブをすべて撃って破壊してやった。
「うそだろ…」
「なんだよこいつ…」
「うちのボスより強いんじゃないのか…?」
戦闘力を奪われた敵の少年少女は皆呆然としていた。
「これに懲りたら略奪なんてやめろ。どっかに土地を見つけてコミュニティでも作れ。じゃああばよ」
俺は再びキャンピングカーの屋上に戻った。そして車は発進して少年たちを置き去りにした。
そしてしばらく車を走らせると大きなコンクリづくりの壁が見えた。道路に直通するゲートがあって自衛官の歩哨が立っていた。俺たちが近づくと彼らは89式を構えてこちらに大声で怒鳴ってきた。
「そこの車止まれ!すぐに全員外に出てこちらの臨検を受けろ!」
さてここで問題である。俺たちは警察から奪ったサブマシンガンやハンドガンでがっつり武装している。その状態でゲーテッドコミュニティに自衛隊が入れてくれるのか?答えはノー。
「そこの屋上の二人!銃を捨てて投降しろ!緊急事態につき我々には発砲の許可が出ている。まだ子供である君たちを我々は悪いようには扱わない」
自衛官はこんな時でも国民を守るという崇高な使命を守ろうとしているようだ。だけどこのまま投降すれば衣食住は保障されても、武装は間違いなく取り上げられるだろう。それは大変困る。
「なあ自衛隊のお兄さんたち!俺たちは街に入りたい!」
「ならば武装を解除しろ!そうすれば保護する!」
「あいにくだけど武装を引き渡すつもりはない!代わりにこれを渡す!取引しよう!」
俺は車の中から段ボールの箱を一つ取り出して彼らの近くにゆっくりと近づいていく。そして彼らの近くにその箱を置いて、中身を出して道路の上に並べる。それは缶詰やジュース、それとたばこや酒などなどこの世界では基調となった代物ばかりだ。
「それをあんたらに譲る。その代わりにこの街のトップと話し合いたい!取引を受けてくれないか!」
歩哨たちは顔を見合わせていた。そして互いに頷き合って、道路に並べられた品物を回収していった。
「そこで待ってろ!いま逢沢二等陸佐を呼んでくる!」
取引は成立した。階級から考えてもおそらくやってくるのはこの街のトップだろう。
「やあ君たちだね。私を呼んだのは」
暫くしてゲートの向こうから迷彩服を着た自衛官が出てきた。丸坊主で鋭い目つきをした男だった。だが直感的に戦闘能力も指揮能力も高いことがわかった。只者ではない。
「ああ。俺たちは街に入りたい。その許可が欲しい。もちろん武装する権利を持ったままでだ」
「ふむ。なるほど。これこれはなかなかやんちゃな若者が出てきてくれて中年のおじさんとしては嬉しい限りだよ」
逢沢二佐はニヤリと笑った。俺たちの交渉がここから始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます