第47話 友達以上恋人未満の関係①

 卒業とともに寮も退寮となるため、式の日ジュストは夕方にモヒナート家に帰ってきた。


「卒業してすぐ出仕とは、少しも休む暇がないな」


 ジュストは明日にはもう王宮に通い出す。


「それに帰ってすぐにパーティーとは、慌ただしいな」


 卒業式の翌日は学園主催のパーティーが開かれる。

 ご令嬢たちの支度に時間がかかるため、式の後すぐではなく翌日なのだ。


「はい。ですが、次の日は初日ですし、早めに帰ってきます。それからオハイエ伯爵家に迎えに行きます」


 卒業生たちと学園の教師たちが参加するパーティーには、男女ペアで参加する。

 ジュストのパートナーはレーヌだった。

 パートナーが必要なことも、相手がレーヌだということも、ギャレットがそれを知ったのは卒業式が終わってからだった。


「パートナーは誰でも良かった。彼女は同じクラスだったから、他の令嬢よりも話しやすかった。それだけだ」


 彼女がパートナーになった理由について、ジュストはそう言った。

 まさか、彼女がジュストの恋人に?と思ったけど、違ったようだ。

 でも彼女がジュストにとって誰よりも親しい女性だと言うことは間違いない。


「それは友達以上恋人未満の恋人よりってこと?」

「そんなんじゃない」

「え、じゃあ、どういうこと?」

「彼女は……同級生だ」


 少し間があってからジュストが答えた。

 そこに「同級生」以上の関係があるような気がした。


「彼女と俺が恋愛関係になることはない」


 極めつけがその言葉だった。


「え、どうして? 彼女がそう言ったの?」

「どうして俺と彼女が『恋人』になるかならないかが気になる?」

「え、それは、だって、ぼ、僕の義姉上になる人かも…」

「ジュストは彼女に姉になってほしいの?」

「え、べ、別にそういうわけでは…」


 一年半留学して王立学園を休学していたのに、いつの間に親しくなっていたの?

 ギャレットとずっと手紙のやり取りをしていたのに、そんなこと、ひと言も書かれていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る