第42話 日々の成長②
邸中がシンと寝静まった深夜の時間。
(え、なんだこれ? まさか…)
下腹部。夜着のズボンとパンツが濡れている。
昼間、もう十一歳だと言い切ったところなのに、まさか、オネ…え、いや、この年でまさか、そんなわけない。
認めたくなくて、浮かんだ言葉を頭の中で打ち消す。
もぞもぞとシーツの中を覗き込む。どうやらシーツは濡れていない。何とかちょい漏れで済んだのか?
「ギャレット、どうした?」
どうやらジュストを起こしてしまったらしい。声をかけられドキッとする。
「あ、あの…その…えっと…」
暗くて顔はわからなくとも、動揺は隠せない。
「どうした? 気分でも悪くなったのか?」
ガバリと起き上がって、ジュストが額に手を当て熱があるか確認する。
どうやら以前熱を出して一週間寝込んだことで、余計に心配されているらしい。
「その、違くて…えっと…ご、ごめんなさい~」
もう謝るしかないと、ギャレットはその場で正座のまま土下座した。
人の寝台でオネ…ゴニョゴニョだなんて。恥ずかしい。今世最大の屈辱。黒歴史だ。
「ギャレット?」
膝を折ったまま、ジリジリと後ろへ後退していく。
不審がられても、暗くてわからないだろうけど、ズボンの前が濡れたのを隠すためにはこれしかない。
「どうしたんだ? 何か怖い夢でも見たのか? ごめんなさいとは?」
腕を掴まれ、しつこく問い詰められ、とうとう白状してしまった。
「オネ…ショ?」
「そ、そんなつもりは、昔からオネショなんて僕したことない。兄上だって知っているでしょ?」
なのに、十歳を過ぎてからやらかすなんて。
「ギャレット、多分それはオネショじゃない」
「え?」
「お前がオネショなんてしたことないのは俺も知っている」
「え、オネ…ショじゃないの? じゃあ、何? 何か病気?」
「違う」
暗くても、ジュストが頭を振ったのがわかる。
「俺もそうだったから、わかる」
「兄上も?」
「ギャレット、それは多分、精通だ」
「へ? せ…?」
聞いたことあるぞ。ギャレットの記憶と前世の記憶からその言葉についての情報を引っ張り出す。
「え、それって…つまりは…」
「そう。思春期の男なら殆どの者が経験する。精通だ」
ジワリと湿ったズボンを見下ろす。
女なら初潮。男なら精通。思春期に起こる体の変化のことだ。
「えっと…じゃあ…」
立ちションはもう慣れたものだったが、これはまた別格だった。
精通があるということは、体がそんな風に準備をしているということで、ムラムラして自分のを掴んで扱いたりとか、するようになるのかな。
そう尋ねると、「そ、そうだな」と困ったような声で返された。
「兄上も、そうだったの? その、自分で…」
「ご、ゴホン、ま、まあ…俺も…男だし…」
言いにくそうにジュストが答えた。
「それより、そのままでは気持ち悪いだろう。浴室で洗った方がいい。用意してあげるから、おいで」
「うん」
ジュストに手を引かれて、浴室へと向かった。
「ほら脱いで」
「う、うん」
昔は一緒にお風呂にも入っていたけど、体も成長して手狭なこともあり、もう三年ほどはジュストの前で裸になったことはない。
(でも、男同士だし、昔は一緒に入ったし)
少し躊躇ったが、取り敢えず濡れたズボンとパンツを脱いだ。
浴室の灯りは、少し他の部屋より暗めに設定されている。でも、完全な暗闇ではないから、しっかり見えるわけで。
顕になった下半身にジュストの目が行く。
「な、何か変?」
「あ、いや、ジュストも成長…しているんだなと」
「兄上だって…ねぇ、僕の見たなら兄上のも見せてよ」
男同士見比べ合うとかすることもあると聞いたことがある。トイレなどで隣の人のをチラ見したり?
ギャレットのはまだまだ発展途上?的な感じだけど、体格もしっかり大きくなったジュストのは、きっと記憶にある頃より立派になっているはずだ。
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