第41話 日々の成長①
それからジュストは、本当に多忙になった。
平日は学園で学業に勤しみ、休日は王宮に泊り込み。
夏と冬の長期休暇には家に戻ってくるが、それも側近(仮)となった最初の年だけだった。
王太子殿下はジュストより二つ上のため、学園を卒業後、今度は外国へ留学に出ることになり、ジュスト達も一年休学して付いて行くことになった。
留学だから向こうでの出席日数や受けた試験も、王立学園での成績として考慮してくれるため、予定通りの年数で卒業できるらしい。
その間もジュストとギャレットは手紙のやり取りはしていたが、王都内とは違い、外国にいるジュストとの手紙の送り合いはなかなかうまくいかず、半月に一回程度の頻度になった。
もちろんレーヌとは何の進展もなく、ギャレットの死亡フラグどころか、レーヌとの恋愛フラグも折れてしまったようだった。
そして予定より留学期間が半年延びた後、ジュストが帰国した。
一年半ぶりに見たジュストは、最後に見た時より格段に背が伸びて、肩幅もがっしりしていた。
体質的に太りにくいのかも知れないが、日々鍛えているので、よく引き締まっていて、すっかり少年から青年に成長していた。
「どうした、ギャレット。俺の顔忘れたか」
あまりの成長ぶりに、言葉を失ってジュストを見上げていると、楽しそうにジュストが言った。
「そ、そんなことないよ。ただ、凄く変わったから」
「お前も、ちょっとは背が伸びたみたいだな」
「ちょっとじゃない、もうすぐ十一歳だし、身長も十五センチ伸びて、百五十センチだ」
本当は十一センチしか伸びていない。少し見栄を張った。
「そうか、俺は百七十五だ。一年でニセンチしか伸びていないから、もうそろそろ伸びるのは止まるかな」
そう言って、相変わらずグリグリと頭に手を宛て髪をいじられる。
「だからもう子供じゃないって」
口を尖らせて文句を言う。
二人の身長は二十五センチ近く差がある。どんなものを食べたらこんなになるのか。
歳の差を縮めることは無理だが、身長差は何とかしたい。
両親はジュストの成長を誇らしく思っているのがわかったが、すっかり大人になったジュストにギャレットは戸惑いしかない。
きっと留学先でもモテたんだろうな。
手紙にはそんなことは書いていなかったが、それはジュストが書かなかっただけで、なかったわけではないだろう。
「ねえ、久しぶりに兄上と一緒に寝ていい?」
ジュストと一緒に寝るのは、あの高熱の後以降初めてだった。
「もう子供じゃないんだろう?」
「それとこれとは別だよ。眠るまで話をしようよ」
それがギャレットの特権なのだから。
お互いの部屋でお風呂を済ませ、自分の枕を抱えてジュストの部屋へ向かった。
「お邪魔します」
「他人行儀だな」
「だって、久しぶりなんだもん」
お風呂上がりの濡れた髪をタオルで乾かしながら、もう寝るか? とジュストが尋ねた。
頷いたギャレットは、上掛けのシーツを捲って寝台へと上がり、横たわった。
ジュストは明かりを消して反対側から寝台に上がった。
「あったかい」
「そうだな」
入ってきたジュストの方に身を寄せる。同じ石鹸を使っているので匂いは同じはずなのに、ジュストの匂いがすると思った。
温かいジュストの体温と規則出しい心臓の音が不安を掻き消す。
あれ以降熱を出すことはなかった。多分知恵熱みたいなものだったのだろう。
人の体温を感じるのは心地いい。
前世で最後に恋人がいて、セックスしたのはいつだっただろう。
夢の中でそんなことを考えていたからか、手の届くところに温かい体があったからか、異変に気づいて夜中にはっと目が覚めた。
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