第5話 新たな関係②

 それからギャレットは、人が変わったように大人しくなった。


 アラサーがお子ちゃまみたいに我儘は言えない。イキッた中二病じゃないんだから。


 前世女だったわたし。一番困ったのは男と女の体の構造の違い。

 そしてすぐに直面する、生理的現象への対応

 何しろ前世では一度も立ちションなるものをしたことがない。

 小説では特に記述はなかったけど、一応トイレ事情は前世と変わらない。シャワー・トイレはないけど、一応簡易トイレまでは進んでいる。


「な、なに? どうしたの?」


 ジュストがズボンの前を開けて(ファスナーじゃなくてボタン)イチモツを出して放尿しているのをじっと見ていると、流石に彼も不審がった。

 男の子のオ○ンチ○って、思春期くらいで形が変わるんだよね?

 ジュストのはもう成人男性に近いものになっている。毛は生えてるのかな。


「ちょっと…今までどうやってしていたか忘れてしまって」


 やり方を忘れたと言うと、思い切り悲しそうな顔をされた。


「だから、教えて下さい、お兄様」


 お兄ちゃん、兄上、お兄様。この前は勢い余ってお兄ちゃんと言ったけど、流石に子供っぽいかと、呼び名を変えた。


 ニコリと笑うと、照れたように頬を染めて「待っていろ」と言う。


「はい」


 自分の用を済ませてから、位置をわたしに譲ると、背後に回って後ろからそっと前のボタンを外して、わたしの手を両手で持って「ほら、ここを持ってこうするんだ」


 そう耳元で囁かれて、ゾワリと鳥肌が立った。


(やだ、凄い背徳感)


 手を添えてもらってギャレットのを自分で掴み、その手を少し大きなジュストの手が握っている。

 まだまだ子どものギャレットのものから、ピュンッ勢いよく尿が出て、何とか用は足せた。


「できた、出来たよお兄様」


 当たり前なことに喜んで、ジュストを見た。

 ちょっとイケないことをしてしまったような、変な気分にもなる。

「良かったね」とジュストが微笑んだ。

 オフッ


「こうして、綺麗にして戻すんだ」


 ちょっと手を動かして最後の雫を落とし、再び下着に戻してボタンを留めた。


「ギャレット?」


 ハァっと気持ち良さに出てしまったため息は、生理的にスッキリしたものなのか、それともアラサー女子の妄想が突き抜けた結果なのか。


「顔が赤いぞ」


 後ろから顔を覗き込まれ、意外に顔が近くて驚いた。


「だ、大丈夫、あ、ありがとう。お兄様はやっぱり凄いな」


 などとキラキラした目を向ければ、赤い瞳が動揺して揺れる。


「こ、こんなことで褒められても。男なら、ふ、普通のことだ」


 確かに立ちションして凄いと言われても、昔、実家で飼っていた猫がただ砂トイレにおしっこしただけで、偉いなと褒めていたのと同じだ。


「お兄様がいて良かった。また色々教えて下さい。細かいこと、忘れているかも」


 五歳までのギャレットの記憶は頭の中にあるが、あくまでギャレットが意識して覚えていたことだけだから、細かいところは覚えていないこともあるかも知れない。


「そ、そうか…ぼ、僕でわかることで良ければ何でも教えて上げるよ」

「はい、よろしくお願いしますね」


 顔だけは天使のギャレットの微笑みが、どんな効果があるかわらないけど、ジュストの照れた微笑みが見れて嬉しかった。


(はあ~眼福だわ。カワイイ、これが近くで見られるなんて…ジュル、おっとヨダレが)


 それからギャレットとして生きていくのなら、女としての記憶は早く切り替えないと、気を許すとすぐ「わたし」と言ってしまう。

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