不思議な人が夢に出て来た!
崔 梨遙(再)
1話完結:900字
夢を見ました。最初の嫁さんのお父さんの夢です。要するに義父だった人の夢です。元義父の夢なんか見ますか? もう二十年以上も会ってないんですよ。夢に出て来られると、なんか気になるんですよね。
浮気と借金で別れた2番目の嫁の元義父ではありません。最初の、毎日ヒステリーを起こしていた方の最初の嫁の父親です。
夢の内容は、こんな感じです。
僕達は誰も乗っていないバスに乗っていました。行き先もわかりません。ただボーッと、元義父とバスに乗っているのです。お互いに何も話しません。ただ、バスに揺られているだけ。
ふと気が付くと、元嫁と元義母もバスに乗っていました。それでも、何も感じずにボーッとバスに揺られるのです。
また気がつくと、元嫁と元義母の姿が消えていました。また、僕は元義父と2人きりになりました。不思議な時間でした。相変わらず会話はありません。僕は、元義父の表情が曇っていることは察知していましたが、特に声をかけるようなことはしませんでした。多分、僕の表情も明るくなかったはずです。
僕は沈黙が苦手なのですが、不思議と沈黙を苦痛と感じませんでした。なので、話さないままでした。そして、いつまでバスに乗っているのかもわかりません。でも、不安も恐怖もありません。何も感じません。無です。無の心でした。
いつの間にか、元義父は運転席に座っていました。それからも長い間、バスに揺られていたと思います。
或る所で、僕はバスから降ろされました。そこがどこかもわからないのに、僕は違和感も無くそこで降りました。
降りる時、チラッと元義父の顔を見ました。ほんの一瞬、1回だけ、元義父はニコッと笑いました。僕を降ろした元義父は、そのままバスに乗って1人で真っ直ぐどこかに去っていきました。僕はバスが見えなくなるまでその場に立ち尽くしました。
元義父に何も無ければいいのですが、今年、僕は叔母も亡くしていますので、つい、“もしかして死ぬ前に挨拶に来てくれたのかな?”などと思ってしまいました。知ってる人が亡くなるのはツライので、元気でいてほしいです。
元嫁の連絡先を知らないので、確認する手段はありません。
不思議な人が夢に出て来た! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます